ドラマ『宮本から君へ』最終回、まるで打ち切りのようなすっきりしない終わり方が新井作品らしすぎて二期を熱望。珍しく女の子に優しいオットの反応。

宮本から君へ [完全版] 4
新井 英樹
CoMax
2015-11-12



さあ7月の幕開けから暑苦しいお話でございます。いやー、終わりましたね!
まさかあれで!?あそこで終わり!?
エンディングの歌の後に何かあるかと思ったらなし!普通に次週からの新番組の宣伝。
あらまー。
まあでも、この釈然としない、すっきりしない感じが、いっそリアルな若者の日常っぽくて良かったです。フィクションぽくまとめる気がない感じ。このサービス精神の欠如。これぞ新井作品ともいえなくもない。
真利子監督にはぜひ二期で『蝕』まで突っ走って頂きたいです。

ただね、ちょっとね、見ててええっと思った原作との違い。
甲田美沙子ちゃん再登場のとこです。以下、原作ネタバレ。

確かに甲田美沙子ちゃん、原作でも再登場するのですが、『蝕』とか色々あっててんやわんやなのがすっかり落ち着いた、本当に最終回近くの話でして。
靖子とあれやこれやあってまとまって、宮本すっかり幸せで落ち着いた頃に、ああやって偶然出会ってね。
そこで美沙子ちゃんが全然変わらず、同じ彼氏にまた捨てられちゃったんだもの〜って泣きついてきて、それを宮本がああやって突っぱねるんです。罵詈雑言の暴言吐いて。で、美沙子ちゃんに「大っ嫌いよ!見損なったわ!」って言わせてあげる。

そこがね、原作では、すっかり幸せな宮本からの餞になってるんですよ。傷ついた彼女を優しく慰めちゃうんじゃなくて、厳しく突っぱねることで、エールを送ってる感じ。もうすっかり強い最強宮本だから。元カノによろめいたりしないし、半端に優しくしてかえって傷つけたりもしない。か、漢!って感じの名場面なんですけども。

でもあの、ドラマのあの感じだと、ただ宮本が八つ当たりしただけにしか見えないですやん!
それじゃちっちゃい男ですやん!まあそうだけど!今の宮本はまだちっちゃい男だけど!
好意的に解釈すれば、ドラマ1話2話3話の恋愛編のあたりでは、仕事がうまくいかないからって女に逃げた、と宮本が自分で言ってたことを、今回は仕事がどん底なのに都合よく現れた女には逃げずに踏みとどまった、とも言えるけど。
でも美沙子ちゃんの言う通り、自分のことばっかりで私には優しくしてくれないの?とも言えますよね。余裕のなさが変わってないし、身勝手さも変わってないっていう。

原作では、身勝手や余裕のなさから突っぱねるんじゃなく、優しさからやってる、というのがわかるし、さらにその後靖子にもその美沙子ちゃんの話をわざわざしない、というところで、靖子を不安にさせた以前の過ちの話をちゃんと回収してるんですよね(原作で、靖子と付き合い始めの微妙な時期に他の女の子の話をついしちゃって靖子を泣かせる、というエピソードがあったのです)。

そういう、いろんな宮本の成長を如実に感じさせる、凝縮された良いシーンだったのですが、ドラマのあの流れで美沙子ちゃんのあれを使っちゃうんだ〜、と、ちょっともったいなく思いました。
原作の、あそこの宮本の突っぱねる厳しい優しさ、ちょっと好きだったんだけどな。実際やられたら嫌ですけどね。実際美沙子ちゃんの立場で、傷ついてる時あんな酷いこと言われたら再起不能になるけど。熱いエールのつもりだったんであろう宮本の気持ちはともかく、実際やられたらこっぴどく傷つく。

あそこね、原作ではもっと酷くて(えっ原作では良いシーンなんじゃなかったの)(その二面性が新井作品ですから)、例の新井作品的な「群衆」がね。通りすがりの人たち。ドラマでも宮本を止めに入ってましたけど、原作では泣き出した美沙子ちゃんに向かって「かわいいよな〜」「お嬢さんおけがは」とかいって、傷心の美沙子ちゃんハイエナにたかられちゃってるふうにも見えて。

それを読んで、分厚い完全版が出て読み返してる頃だったかな、オットが「あれはちょっとかわいそうだ」と言ってたことがあって。

OT「甲田さんは、ただ幸せになりたくて、彼女なりに必死にもがいてるだけなのに、あんなふうに小馬鹿にするような扱いは気の毒だよね」

何オット優しい!!可愛いものとかか弱いものとかなでことかにぴくりともしない鋼鉄の朴念仁オットくんだのに!!優しいな!!
2ちゃんねらー的な人たちが毛嫌いしそうなああいういわゆる清楚系ビッチキャラね、自分のものにならないなら罵倒してしまおうホトトギス的に、女性へのコンプレックスを投げ込むゴミ箱みたいに扱われがちなああいう女性キャラ。
に対して、オット優しいな!
とびっくりした覚えがあります。オットは覚えてなさそうだけど。たぶん15年くらい前の話なので。

あっでものちのちわかったんですが、新井様は決して嫌いじゃないんですよねああいう女性。巻末の解説や、インタビューなどでも言ってた。『宮本』の甲田美沙子さんといい、『アイリーン』の愛子さんといい、美人でふらふらぐらぐらしてる女性大好き、たまらん、みたいな。好きだからこそ酷い目に遭わせる新井様の愛…イヤです…(涙)

ドラマに話を戻しますと。
ドラマでは、ボクサー(じゃないけど)と宮本の殴り合いのシーンがこれまた原作より前倒しに登場していました。こちらは原作よりも印象的に挿入されていたと思う。どうにもならない宮本の憤りをうまく掬い上げていたというかますます叩き潰してたというか。監督なりの愛なのね…。
(あと前回11話も、原作で土下座のお尻を嗅ぎにくる犬とかわざわざ再現してくれたのと同様に、今回の12話でも「ソリが一番大事〜」とかいう小ネタもきっちり、しかもちょっと膨らまして拾ってくれててスバらしい!!)

ボクサー役の宮田佳典さん、調べてみたらおお!特技ボクシング!
正直素人目からするとそんなにボクサーっぽい動きに見えなかったけど…わかる人が見たらわかったのかな?

所属事務所のサイト。
宮田佳典 | KAKUTO ENTERTAINMENT

ご本人のドラマ関連ツイート。


原作でもそうだった、物静かな佇まいのキャラクターのイメージそのまんまで嬉しかったです!

このボクサーとの殴り合いの後に美沙子ちゃんだったので、まあ、宮本にとってはダブルパンチですよね。通りすがりの喧嘩にも負け、通りすがりの元カノにも都合よく頼られ、踏んだり蹴ったり。泣きっ面に蜂。

今回の最終回、オープニング直前の、仕事を取れなかったことが判明した瞬間、宮本が泣きながら叫びますよね。そこからのいつものあのオープニングの泣き顔に、なんだか、こっちまで泣きそうになってしまいました。
これで最終回、という感慨もあり、ドラマ化されて、それもこんなにも原作を大切に作ってもらえて、だけど結局宮本が大きな仕事を取り損ねて周囲に迷惑ばかりかけてしまった、ということと、新井作品の、一部の読者からは熱狂的な支持がありながら商業的にはものにならず常に打ち切りばかりで(打ち切りにならなかったのは『SCATTER』だけだとご本人が書いておられました)、涙目で、怒りや憤りを抱え込んで、爆発したようにがむしゃらに誰と戦ってるのかわからない拳を振り回して。
そんな宮本の、池松くんが熱演する宮本そのままの姿が、原作者新井様にも重なってしまって。

で、こんなところで涙ぐんでる私なんてまさしく甲田美沙子ポジションで。安っぽい涙も同情もくそっくらえだよ!と罵倒されてしまいそう。同情じゃなくて、悔しさなんですけどね。どうしてこんなに必死に全力で、良いものを作ろうともがいている人の作品が日の目を見ないのかと。
そんな感傷もきっと新井さんにとっては嬉しくもなんともないと思うけど。
思えば『キーチVS』の最後の方もそうだった。新井作品によくある「無力な群衆」が、いや、それとは少し違う、「何かを変えたいと思いつつ他力本願な群衆」が、キーチを散々もてはやして、キーチは暴走し、結果的にその群衆たちに対する責任を無理やり背負う形で、望まれる悪役をやりきって命を投げ出して。
キーチの「生」を、「命」を、あんな形にしかできなかったのか、と作中で嘆く老人の姿は(いやあんたも大概無責任だったろと思ったけど。キーチが一番無力だった時に放置どころか加担してたじゃないかと)、キーチのような魅力的な人物を生み出して、こいつにならなんとかできるかもしれないと物語を編み続けて、それでもあんな結末にしか辿り着かせることができなかった作者の絶望のように思えて。
現実の社会の一端を担う大人の一人として、責任を感じてしまったものですが。

でも、このドラマはだから、本当に嬉しかったです。一人でコツコツと描き続けてきた新井さんのその仕事ぶりを、こんなにも支持して、こんなにもたくさんの人がスタッフとして動いて、原作『宮本から君へ』の世界を力技で立体におこしてくれて。
新井さん、おめでとうございます。真利子監督、ありがとうございます!池松壮亮さんをはじめ素晴らしいキャストの皆さんも本当におつかれさまでした!
ドラマ二期、ぜひとも作ってほしいです!!期待しています!!

二期をやってくれないとね、わざわざ靖子に蒼井優ちゃんを起用した意味がなくなっちゃいますから。ああいう、女の価値は生命力の強さとその輝きだ!みたいな。どん底の目に遭わされても(いや、遭わされないに越したことないんですが…)なお美しくあろうとする姿をね、演じ切ってくれそうな。
…いや、でもやっぱり見たくないかも…漫画でも十分つらかったのに、これが実写になるとまた見ているしんどさの位相が変わるっていうか…嫌だな…うん、二期とか蝕とかないならないで…よかった、あんな目に遭わされる靖子はこの世界線にはいなかったんだ…っていう方がいっそ良いのかも…

で……検索してたら、ファッッ!!!????

映画『愛しのアイリーン』公式サイト

あ、あとで別記事にまとめます!!!

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2013-10-10 新井英樹がCDのジャケットを描き下ろし、Dモーニングの宮本リア充すぎ

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amazonビデオ。


エレカシの主題歌ほんと素敵だった!

Wake Up(初回限定盤)(DVD付)
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2018-06-06


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Universal Music =music=
2018



エレカシ、このジャケットが好きです。

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こちらの「定本」は新装版。
作者による全話解説にくわえ、その後の宮本についての描き下ろし『はんぶんぐらい』収録!!

定本 宮本から君へ 1
新井 英樹
太田出版
2009-01-17


Kindleでは今のところこのバージョン。

宮本から君へ [完全版] 1
新井 英樹
CoMax
2015-11-12





おお!?Kindle「完全版」の方の最終巻にも『はんぶんぐらい』載ってる!しかも連載時のカラーページも再現!
ただ、全話解説が載ってるかどうかが明記されていない。どうなんだろう??

宮本から君へ [完全版] 12
新井 英樹
CoMax
2015-11-12


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“ドラマ『宮本から君へ』最終回、まるで打ち切りのようなすっきりしない終わり方が新井作品らしすぎて二期を熱望。珍しく女の子に優しいオットの反応。” への2件の返信

  1. ブログ、感動しました。
    原作未読ですが、、もともと池松壮亮さんが好きで、彼の覚悟みたいな姿勢が好きで、そんな方のバイブルでもあった漫画原作のドラマ、見てみたいって遅まきながら鑑賞して… 胸が掻き毟られたり、未熟な宮本にイライラしながら、彼のハッピーとは言いがたい日常も周りの人たちには恵まれていて、けどそれは、彼自身が惹きつけているものであると、まだ気付いてない宮本に夢中になりました。

    こちらのブログを拝読し、原作をとても大切にしながら作られたドラマだったのだと、嬉しくなりました。名作なのに中々日の目を見ない作品がこうして、本物の役者さんや監督の手によって世代を超え私たちに届いたことが、ドラマでは見られなかった、泥んこの人たちの報いのように感じたりもしました。

  2. kikimoras.さん
    うわああ!嬉しいコメントをありがとうございます…!こちらこそ感激に打ち震えてしまいました。あんなニッチな漫画の(いや大好きですし名作ですけど)、あんなひっそりしたドラマ化の、こんな長文記事にたどり着いてくださって、私が伝えたかった原作の魅力や、ドラマの熱量の高さを受け取って頂けたようで、すごくすごく光栄です。

    池松壮亮さん、良い役者さんですよねえ!私が最初に出会ったのは三谷幸喜の人形劇『三銃士』でした。ベテランの声優さんたちに囲まれて、ちょっとたどたどしいところもありつつ、それがそのままキャラクターの若々しさを表現する強みにもなっていて、いいなあこの人、なんて思っていたものですが、まさかの宮本くんに抜擢とは!しかも本当に全力で、これ以上ないくらいやりきってくれて、原作ファンとしては大興奮の大感謝です。

    それにしても本当に嬉しい…kikimoras.さんのコメント、宮本の人となりや作品について、実に端的に正確に表現してらして。
    おっしゃる通り、kikimoras.さんのように(推察するに)お若い方にも、ドラマのおかげで原作が持つ魅力や、当時まだ若かった原作者新井さんが叩きつけたのであろう熱意のすべてがあますところなく届いているという事実に、いちファンの私まで報われた思いです。ありがとうございます!

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