(機能不全家族や毒親、毒母関連が苦手な方は、具体的なやりとりを細かく書いているのでご注意ください)
実母から従妹をかばった20歳の頃の話(改)前編の続きです。30年前、事件直後に書いた小説を元にお送りしています。書いてるうちに稲川淳二さん風語り口調になってきたので怖いです…。
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■実母から従妹をかばった20歳の頃の話(改)後編
翌朝。
口論の声で目が覚めまして。
ひい!もう始まってる!?と慌てて部屋を出たら、きっちりコートまで着込んでスーツケースを脇に置いたいとこちゃんが、台所のハハと対峙しており。「あっちゃんも止めてよ、帰るって言うのよこの子、バカなことを」「帰ります…!」ひー。
ハハ「帰るって言ったってこの天気よ、どうするのよ」
え、と反射的に窓を振り返ると、なんと吹雪!!
東京では数年に一度しかないような横殴りの雪が斜めに降りしきっているではないですか。劇的すぎるが事実です。効果さんやめて降らせすぎよ!
「ね、悪いこと言わないからやめときなさいな」幼い子供をあやすような口調で言うハハ。それでも毅然と帰ります、と返すいとこちゃん。
すると…
ハハの表情がみるみる険しくなって。
これまでの笑顔もなく、ちょっとした嫌味程度の(いやそんなレベルでは全然なかったが)オブラートも完全に取り払って、さも憎々しげに、「そうなの!こんなに世話を焼いてやったのに帰るって言い張るのね!おばさんの家にいるのがそんなに嫌なのね!」「それはね、あなたのお母さんに、受験が終わるまであなたを泊らせて面倒見ると言った私の、大人同士の約束を台無しにするってことなのよ!」「あなたのあれ食べたくないとかこれが嫌とかいう子供のわがままで、途中で帰るってことは私のメンツを潰すことになるのよ!?それでもいいって言い張るならどうぞおかえりなさいな!」
と。実際はこの3倍くらいのボリュームで言い募りまして。
それでもいとこちゃんは、「帰ります、お世話になりました」と、長い髪が床に擦るくらい深く腰を折って頭を下げ、スーツケースを持って出ていきまして。
私は、一瞬呆然としてしまって。
ハハの言い分の酷さにももちろんなんだけれど、いとこちゃんの凛とした立ち居振る舞いに。あんなことをされて、こんなことを言われてなお、お世話になりましたと頭を下げるとは…!なんて強いんだろう、と。慌てて玄関まで追いかけて見送ると、いとこちゃんは最後に少しだけ振り返って小さな声であっちゃんありがとう、と言って、出ていきまして。彼女と会ったのはこれが最後だった。このあと顔を合わせることはありませんでした。後で手紙をもらいましたが(後述)。
で、ですよ…。
居間に戻るとブチ上がっているママン。たすけて。
ま〜あの子はとんでもない子よ!信じられないわ!と罵詈雑言の嵐。文字起こししたら3000字超えるレベル。そのハハが放出する邪悪な空気と、この数日の間目の前でそれに晒され傷つけられるいとこの様子と、否が応でも振り返らざるを得なかった自分の幼少の頃からのハハの攻撃の数々がぐるぐると。ぐるぐると自分を取り巻いていき、じりじりと輪を狭めていって。もう無理、壊れる、これを、これを止めないと、と思った矢先に。
ハハ「もーほんとにあの子は、あれだけ世話焼いてやったのに!」
これだ。
そうよお母さん、世話を焼きすぎだったのよ。
ぴたりと黙るハハ。
釣り上がったまなじりはそのまま、ゆっくりと私の顔に目を向ける。
ハハが黙ったことにより生じた唐突な沈黙の中に、私は思いついた言葉を瞬時に選別しながら次々投げ入れる。最近はお兄ちゃんも私も外でご飯食べることが多かったから三食しっかり作るなんて久しぶりで大変だったろうし、いとこちゃんのために色々やってあげなきゃってお母さんも張り切りすぎちゃったんじゃない?あそこまでする必要なかったんだよ、それに自分で言い出したとはいえやっぱりお客さんって気を遣うしましてや受験生だし、疲れるのも無理もないよ。やりすぎだったんだよ。
降りる沈黙。
ハハ「………………………
そうね、やりすぎだったのよね!あっちゃんの言う通りよ!」
ふおおおおおおお!!
正解だったあああああ!!!
ハハ「あっちゃんも板挟みで疲れちゃったでしょ、部屋もずっと貸してて」
いやいやいやいやもうもうもうもうもう!そんなそんな全然ですぞ!?そこじゃないですぞ!?とはもちろん言わなかったですけども。
と、そこに電話が鳴りまして。ジリリリーン!!と(いや平成当時すでにジリリーンではなかったな)
豹変するハハの気。ひい!!もしやいとこちゃん母!?ハハも同じ相手だと思ったのか刺々しく「もしもし!?」と電話に出たと思ったら途端に柔和な調子になり、「あっちゃん、お友達よ」と。私の高校の友人が電話かけてきてくれて、こんな雪だけどみんなでスケート行かない?と。行く行く。私をここから連れ出してくれ。
ハハも普段ならこんな雪の日によしなさいとか言うんですけどこの時ばかりはニコニコで、あっちゃんも疲れたでしょ、羽伸ばしてらっしゃいと送り出してくれて。慌てて支度を整えて私が家を出る頃にはハハはまた妹に電話をかけて、「もしもし?もうね、すごいのよあの子!帰ったのよ!今よ今!でてったわよ!そうよこの天気の中よ!?おばさんの料理がマズイから帰りますうー!って啖呵切ってぷりぷり怒って出てったわよ!まー大したタマだわあの子!母親そっくりね!」というハハの刺々しくも楽しそうな声に追いかけられながら、逃げるように家を出た20歳の私でありました。
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数年後に卒論として書いた小説ではこのあと、友人と待ち合わせた主人公が連れ立って喫茶店に入り、事の顛末を聞いてもらう場面があります。エピローグですね。その喫茶店も、母のいる家も、いとこを運ぶ新幹線の上にも、等しく白く雪が降り積もってゆく、という風景描写で物語は静かに幕を閉じるのですがいや〜〜〜〜〜も〜〜〜〜〜!!大変だったでしょこれ!?タイっっヘンでしょこれもーーーマジで!!余韻もへったくれもないあひるちゃん49歳。22歳のあひるちゃんの方が侘び寂びを知っとるやんけ。すいませんだってこれもーほんと!!
あひるちゃんがんばったああー!!
いや〜〜もうほんっと大変で!!!
ほらこういうことっていえそんな、当然のことをしたまでですと涼しい顔で大したことじゃなさそうに語る人が多いいのにあひるちゃん。大ッッッ変だったわああマジで!!!(うるさ)
いやもうほんとに。止まらないからやめよう。
ここからは後日談です。
大学で小説に書きおこして卒論として提出したら教授に面白かったって言って頂きました。もしかして事実?と聞かれ、ハイ!一言一句事実です!とハキハキ答えたらoh…って顔されたのを覚えています。割と若い、ジェントルな男性教授だった。
もうひとつ。受験が終わってからだったかな、いとこちゃんの父から電話がかかってきて。口下手な叔父が、あっちゃんごめんねありがと…ほんとにありがとね…としきりと繰り返していたのを覚えています。一応あれなんですよ、受験無事に終わりました、この度は本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした、とね、ハハ宛の叔父からの謝罪と報告の電話という体だったんですよ。それで叔父がハハに、あっちゃんにも部屋を貸してもらったり迷惑かけたから直接話したい、と言ったらしく、電話を代わられたんです。つまり隣でハハが聞いてるの。ヤメテ。さっきまでエピローグのしっとりした雰囲気だったのにカメラ回り込んだらハハがぴったり後ろにいるのヤメテ。当時はほら家電(いえでん)しかないから。まだ携帯電話そこまで普及してなかったから。だから隣にハハがいるの(ヤメテって!)。それでこの訥々とした会話。口下手なせいだけじゃなかった。検閲か盗聴を恐れている空気。私の立場を慮ってああいうふうにしてくれたんだろうな、と当時は思ったものですが、そういう態度がハハを増長させたんだろうな、とも思ってしまいますね49歳の今は。まともな大人が出てこん。私しかおらんやんけ!!20歳は、20歳は大人か!?辛かったが!?必死だったが!?
もうひとつ。いとこちゃんから手紙をもらいました。さすがにハハに検閲されたりはしなかったなそういえば(高校生の一時期は検閲されてたんですけど)(さらっと怖いこと言う)。あっちゃんがいなかったら乗り切れなかった、本当にありがとう、と、可愛らしい文字で何枚もの便箋に書かれていました。「あんなふうに人から悪意をぶつけられたのが人生で初めての経験で、どうしたらいいかわからなかった」と書かれているのを見て、私は人生ずっとこうだったよ、と思ったものです。降り注ぐハハの悪意を避けるために必死に傘を広げる毎日だった。
思えば大学で心理学や女性学を習って、私は不当な扱いを受けてきたのかと気づき、自分の家庭を客観的に見る視点が備わりつつあるまさに過渡期に起きた出来事だったから、アクティブバイスタンダーとして奮闘することができたのかもしれない、と今回書いていて思いました。母は変わっていない。私が変わったのだ。なす術もなく翻弄される謂れはない、これは抵抗すべき案件なのだと。そこから家を出るまでの3年間が本当にしんどかったですが。
これが20歳のころ。それから30歳ごろにも、今度は実兄の不機嫌モラハラから義理の姉とめいっこおいっこたちをかばうために奮闘した事件もありまして。それで40歳頃にはその兄の元からとうとう義姉たちが夜逃げしたのをきっかけに私自身が不安に襲われてカウンセリングに通うことにしたのですが、その時カウンセラーの先生に言われたのが「あなたは今回、お子さんと旦那さんを守るためにここにいらしたのですね」と。泣くしかなかった(これについてもそのうち書きたい)。
で、色々あって50歳目前の今、満を辞して夫の16年不倫を知り秒で叩き出すに至ったわけでして。それも不倫相手の女性と子供のために激昂、という。
あひるちゃん、一貫してますね。なんでだろう、それはダメだろ!!という光景を目の前にすると、咄嗟に立ち塞がらずにはいられないんですかね。ちょうど今楽しみに見ているドラマ『東京サラダボウル』でも奈緒ちゃんがやってた。刃物を持った通り魔と、ベビーカーの赤ちゃんとママさんとの間に咄嗟に出てしまう奈緒ちゃん。ベビーカー!ベビーカーをさすまたのように使うんだ!振りかざせ!相手はそれで怯む!絶対に!と思いながら見てました。ヒールを脱いで武器に…いやリーチが短いな…じゃあ上着を脱いで腕にぐるぐる巻きにして、警察犬の訓練みたいにするんだ!
それはともかく。夫ですよ。
昔から一貫している私のこういう話を、当時からリアルタイムに間近で聞いていたはずなのに、30年間聞き続けていたはずなのにこの体たらく。これだから、私の話などなんにも聞いちゃいなかったし、私のことなどなんにも見ちゃいなかったんだな、とあの土曜日に私が思い切るに至ったシナプスの迸りの、解像度が上がるんじゃないかしら、と。そう思ってここに書いておくことにしたんですね。夫の16年不倫という行動の、グロテスクさの解像度(上げないで!?)。
しかしちょっと、いくらなんでも長すぎたか露悪的すぎたか、ハハの口調を完全再現したのが病的に見えたかな、など考えて一度取り下げて寝かせまして。夫不倫の詳細公開を一旦やめたフラストレーションもあったのかも。その熱量をつい、過去のことに入魂してしまったというか。
そうしたら、読み逃したので再掲待ってますとか、面白かったという表現が正しいのかはともかく面白かったよという嬉しいご感想にも励まされ、このほど再掲載することにしたのでした。
結果的に4500字+5000字だから増えてるやんけ!!
こんなど長文の家庭内サイコホラーを読んでくださって、お付き合いくださってほんとにありがとうございます!
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こんなハハだから妊娠も出産もひた隠しにしたのでした。
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はー、相変わらず怖かったです。
脳内でサイコのBGM鳴りっぱなし。
でもやっぱりかっこいいよ、あひるさん!
今回は後日譚もあって、あひるさん以外の大人のダメさ加減と、いとこさんの健気さも分かって読みごたえがありましたよ。
教授にこれ実話?と聞かれちゃうのは、なんだかDXの領地経営学のレポートみたいですね。
どうしよう回し読みされてたら(笑)
k.satさん
ありがとうございます!結局さらに長くなって帰ってきました!
でぃ、DXの領地経営学のレポート!!ぶっはははは光栄です!ありがとうございますー!回し読みされてたら嬉しいな!