米津玄師『さよーならまたいつか!』、有史以来こんなにも女性に寄り添ってくれた男性アーティストがいただろうか [まじめに][フェミニズム]

さあ皆さん。みんな大好き米津米津のお時間がついにやって参りました(米津米津?)(あとでご説明します)。6000字くらいかけて米津玄師さんの解釈がいかに米津米津かって驚嘆賞賛してるだけの記事です。

米津といえば解釈の悪魔ですよね?
ヒロアカとかウルトラマンとかいろんな古参ファンを調伏してきた米津米津。

そんな米津の解釈砲が…
解釈の悪魔米津が…
フェミニズムに、女性が受けてきた抑圧の歴史に発動された時…

「空に唾を吐く
(そォ゛オ゛オ゛らにツバを吐゛くゥ゛ウ)」
「したり顔で触らないで 背中を殴りつける的外れ」
「100年先もあなたに会いたい 消え失せるなよ」

お…おおおおおん!!(群衆の声を一人で)
こんな歌が!出来上がったなんて!
こんな歌を!作ってくれたなんて!

これほど心強いエールがあるだろうか…!!

第1回のオープニングで3回くらい泣きました。だってほらまず歌の前に、主人公とら子が日本国憲法を読むじゃないですか。ナレーションの尾野真千子さんがゆっくりと、力強く、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と。この時点で泣く。

そしたら!この米津米津曲が!
色使いも華やかなイラストレーションとともに流れ出して!

「いつのまにか花が落ちた」
「誰かが私に嘘をついた」
「土砂降りでも構わず飛んでく その力が欲しかった」

あああああ!!
泣く!!!!!

私ね、どこが好きってもうどこも好きなんですけど「心配しないで」でもう泣けるんですけど。だって米津が!米津が言ってくれたらそれはもう真実になるじゃないですか!米津の解釈は常に誰よりも深く優しく、核心を突いてくるんだもの!米津がいえば本当になるのでは!?米津未来予知能力者列伝!だから米津が心配しないでって言ってくれるのならもう私たち大丈夫なんじゃない!?100年先も存在できているんじゃない!?
さようであるならば!

と感涙にむせびすぎてわけがわからくなり、全編フルで聴きたくて速攻でダウンロード購入しまして。YouTubeのMV解禁までの数日が待てなかった。
歌詞の一番最後のね、

「生まれた日から私でいたんだ 知らなかっただろ」

が、もう、好きで好きで…。
なんて言ったらいいんだろう、「知らなかっただろ」のこの…フフン感?さも当然感?
とLINEで話していたら友人C美が、

C美「お前が知っていようがいまいが感」

お前が知っていようがいまいが感!!
それだ!!

あと、C美「誰かに影響されてとかじゃなくて、もともと持ってたんだよ、お前が理解していようといまいと、て感じ」そうね!そうね!むしろお前の前ではそれを出してねえんだよ、わかるか?感すら!

もう本当に大好きC美も米津も。

でね。数日後のMVも見たらまあ…まあ…(ラジャマハラージャか)


ふいの横ピース!!!
かわよ!!!
かわいいかよ!!!

思わず巻き戻すし。毎回聴くたびに巻き戻すし。
それはいいのいや良くないイイ。ラピュタか。じゃなくて。このMVすごい…どうなってんの…複雑すぎる。ネットを見ててもいろんな解釈があって。「何度でもやり直せる」とか、「寅子たちのような人々の過去の努力があったからこそ、冒頭のような無法地帯にならずに済んでいる、ということではないか」とか。私もう冒頭の暴徒で涙出るんよ。つら。やめて。まさしくヒャッハー。Welcome to this Crazy Timeじゃないですか。またしても急なTOM☆CAT。

男たちが荒くれている隙間を縫うように涼しい顔でそっと抜け出す米津…深紅のスーツに三つ編みで。
男たちの車に乗ってやってきたけれどすっと降りて「したり顔で触らないで 背中を殴りつける的外れ」。
「生まれた日から私でいたんだ 知らなかっただろ」

ああああ!!
ああああああ!!
もう!励まされる!励まされる!励まされる!!!

と勝手にぶるるいぶるるいぶるわあああんってなってたら(なんの表現?)
公式米津が。三代目米津玄師が!(カとかファとかについても書きたいです)インタビューで語ってくれている内容が!曲から感じ取れる以上に…女性について、女性たちが舐めてきた辛酸について、本っ当に深く掘り下げて考えてくれていて!!

米津玄師「さよーならまたいつか!」インタビュー|“キレ”のエネルギー宿した「虎に翼」主題歌 – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

「この曲を作るにあたっては“キレ”が必要だと思っていたんです。キレというのは「ブチギレる」とか「怒る」という、強いエネルギーを表す意味でのキレ」と!!

キレというのは「ブチギレる」とか「怒る」という、強いエネルギーを表す意味でのキレ!

もうあの、インタビュー素晴らしいので全部読んでいただきたいんですけどあまりに素晴らしいので抜粋させてください。「ブチギレる」とか「怒る」という意味でのキレ、の続きです。

──というと?

「虎に翼」はフェミニズム的なトーンが全体にある物語で、女性がどういうふうに社会と関わってきたかという視点は避けて通れない。だから、まずどうやって自分がここに関わるべきなのかを考えざるを得ない。そもそもなぜ男性である自分に話が来たのかも疑問だったので、制作統括の方に打ち合わせで尋ねたんですよ。女性の地位向上の物語の主題歌を歌うのが男性の自分であるのはなぜなんですか?という話をしたら「米津さんなりに、俯瞰した目線で、広がっていく世界を描いてほしい」ということを言われた。この物語の女性たちからは一歩離れたところで、俯瞰の視点で普遍的な曲を作ってほしい、そのためには米津玄師がいいのではないかという話になったらしくて。「なるほど」と思ったものの、実際に自分がこの物語に曲を当てはめるためにどうしたらいいかを考えていくと、およそ客観的に曲を作るのが不可能だと思ったんです。客観的にやるとどういう形になるかを考えると「がんばる君へエールを」みたいな曲になると思う。「あなたはがんばってる、あなたは素晴らしい、私は応援してるよ」という言い方にならざるを得ない感じがした。これはすごく無責任じゃないかなと思って。

すべてを太字強調したい。すべてを太字強調したいけどより大事なとこだけにしたのにやっぱりほぼ全部太字になった。

「虎に翼」はフェミニズム的なトーンが全体にある物語で、女性がどういうふうに社会と関わってきたかという視点は避けて通れないと!
この物語の女性たちからは一歩離れたところで、俯瞰の視点で普遍的な曲を作ってほしいと依頼されたが!
だが実際に考えていくと、およそ客観的に曲を作るのが不可能だと!
「がんばる君へエールを」みたいな曲、「あなたはがんばってる、あなたは素晴らしい、私は応援してるよ」これはすごく無責任じゃないかなと!

米津うううう!!!!

さすが…さすが東京オリンピックの曲頼まれて『パプリカ』みたいな不穏で寂しぃい曲とMV作るだけのことはある米津。ロックすぎんか。


それから!さらには!

「がんばる君へエールを」という方法だと、逆に女性を神聖視するような形になるんじゃないかと思った。(略)でもそれは、結局“裏返し”でしかない。神聖視するのも卑下するのも根っこは一緒な気がする。なので、少なくとも自分にとって客観的になるのはおよそ不可能で。あくまで私事として、主観的に曲を作らざるを得ないと思ったんですよね。違う属性のものと自分を同一視するのも、それはそれで暴力的だとは思うんですけど、どちらかを選ぶと言われたら主観的なほうを選ぶしかない。そこは腹をくくってやるしかないなと思ってこういう曲になりました。

神聖視するのも卑下するのも根っこは一緒!
自分にとって客観的になるのはおよそ不可能で!!
違う属性のものと自分を同一視するのも、それはそれで暴力的だとは思う!!
だがどちらかを選ぶと言われたら主観的なほうを選ぶしかない!
そこは腹をくくってやるしかないなと!

米津うううう!!!!
さっきからインタビュー繰り返してるだけで小学校の卒業式みたいな感じになってる。

強さとは何ぞやと考えたとき、そこはキレなきゃいけないよなって。どうあがいてもキレる必要がありますよねということを、この曲に宿すべきだと思ったんですよ。初の女性弁護士として、獣道をかき分けながら、先頭に立っていろんな道を整備してきた人たちの生き様を振り返ると、そこには並々ならぬエネルギーがあったんだろうと思うんです。お行儀よく、誰の気分も害さないような、優等生的に機会を待って様子を見ながら生きてきた人では決してないと思う。むしろ「知るか!」と言って、「私はこうありたいんだ」ということを人に示す力がある人たちが、そうやって道を切り拓いてきたような気がするんです。その大きなエネルギーの1つが“キレ”だという。そのエネルギーはこの曲に宿すべきだと思ったんですよね。

強さとは何ぞやと考えたとき…そこはキレなきゃいけないよなって!
どうあがいてもキレる必要がありますよねということを!この曲に宿すべきだと!

どうあがいてもキレる必要がありますよねと!!(2回)

「知るか!」と!「私はこうありたいんだ」と!

ここが本当に…。
あのね。友人C美にね、とらつば股間を蹴り上げる記事書いたんよーってお知らせしたんですよ。そしたらね、
「『怒っていい』てなんや!」と。
「そんなことも我々は許されていないのか!という気持ち」と。
「米津の言う『キレ』はどこに」と。
そっ…そうね!!

確かに…そう言われて米津のインタビューを読み返すと、「怒っていい」とは書かれていないんですよね。キレなきゃいけないとか、どうあがいてもキレる必要があるとかで。

うわ!!「もっと怒っていい」ってあれだ!「結婚しても働いていいよ」だ!!ぎゃあ!謎の上から許可制!謎でもなんでもない家父長制ですけど。
それに対して米津は…キレなきゃいけないと(焦燥)
どうあがいてもキレる必要があると(マスト)

おおお…すごい。

それからC美、私が文末に載せていた脚本家の吉田恵里香さんのツイートの「みんな弱音吐いていこう!性別、立場関係なく!!」というのも、それは「フェミニズムはみんなのもの」というのと一緒だなと思う、と。
女性が女性として差別に対して声を上げると、男性だって差別されているとか、トランスジェンダーを排除しているとか攻撃される、だから言い訳のように「みんなにとっていいものですよ!私たちは自分のことばかり考えてませんよ!」と言わないといけない、それ自体がおかしい。BLMに対するALMと一緒で、構造的差別を見えなくしてしまう。女性は女性のみのことを訴えていい、と。

うおお…ほんとだ…ほんとだね…
(これに関しては前々から気にかかっている話題なので、別途改めて書きたいです)

米津米津の話に戻りますと。
「ミュージシャンのことを神様みたいに言う風潮があるじゃないですか。あれがすごい嫌で」と仰る米津。いいやあなたこそ神だ!と言いたくなってしまうが…米津さんはそういう扱い嫌なのね…謙虚な…。

その謙虚で控えめな米津さんが!あの横ピース!チャミーン!後でめっちゃ照れてたんじゃないかと想像すると萌えますが、いやもう本当に…

本当に素晴らしい…
ありがとう…ありがとうございます…
こんなにも私たち女性に寄り添ってくれた男性アーティストがいただろうか…。なんの忖度もなく、値引きもなく、フラットな思考力と、真摯な洞察力と、鋭敏な感性で…米津さんから見たら世界の中での女性の位置付けがこうということは…やっぱりこうなんじゃん!!と。やっぱり!!

およそ客観的に曲を作るのは不可能と…
女性たちがやられてきたことは、したり顔で背中を殴りつける的外れだと…

お…おおおうおうおう…大気が労りと友愛に満ちておる…その者赤き衣をまといてこのイカれた時代に降り立つべし…!!
古き言い伝えはまことであった…!!
もう。本当に。米津の解釈ビームをまともに喰らい、浄化されました。ババの目も開く勢い。『鎌倉殿』の政子の演説聴いた大江殿のように。遅ればせながら『STRAY SHEEP』を買った。次のアルバムも楽しみすぎる!

すいません、まとまりないけどアップ。だってこんな…ね…

そうだ!あと、「空に唾を吐く」「天に唾吐く」って、結果的に自分に降りかかる愚かな行い、みたいな意味しかないと思っていたのですが、最近は「手の届かない大きな存在に果敢に立ち向かう」みたいな解釈もあるんですってね。誤訳だったのが広まってきたと。知らなかった。
で、Twitterで見かけたのですが「この『空に唾を吐く』、天に向かって喧嘩を売るのと同時に、吐いた唾が自分にもかかること、自分が傷つくことも厭わないという強い決意にも聞こえる」なんて解釈してらっしゃる方もいてうおおん。

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関連リンク。

米津米津の元ネタです。いつも抱腹絶倒kansouさんの感想!
米津玄師の朝ドラ主題歌『さよーならまたいつか!』これ米津米津曲だろ… – kansou
「そォ゛オ゛オ゛らにツバを吐゛くゥ゛ウ……!??!?」って私も思いました。

米津玄師『さよーならまたいつか!』爽やか朝ドラ曲の皮かぶった恐怖!米津米津曲の皮かぶったファイトソングでした – kansou
ウゥウヒャヒャァアアッ????って私も思いました思いました。


これ!もしかしてあのカット、いろんな女性デザイナーさんたちが描いたのかしら!

ふおお、シシヤマザキさん、インスタの方にすごく詳細に説明を書いておられます!

伊藤沙莉ちゃんかわよ!!

こちらのツイートが好きで好きで。

何言ってもお手つきみたいになる!

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関連あひる

力ほしかった。
2024-04-28 『虎に翼』とうちの子と力(power)

2024-04-24 NHK朝ドラ『虎に翼』股間を蹴り上げる [まじめに]

↑この記事のタイトルにね、[フェミニズム]タグをつけなかったのは、「股間を蹴り上げる」と「フェミニズム」を並べると、なんだか攻撃性が前に出すぎるかな…と気になったからなんですよね。でも、やっぱり怒って当然なんだよな、と改めて思ったりも。

2024-04-21 NHK朝ドラ『虎に翼』素晴らしすぎる!週まとめだとカットされまくってるからぜひ毎朝のノーカット版見て![フェミニズム][まじめに]

ーー
2024-04-18 クドカンドラマ『不適切にもほどがある』批判的レビュー、茶化さないでほしかった [まじめに][フェミニズム]

2024-01-19 [まじめに] テレ東ドラマ『SHUT UP』が、女子大生の貧困と性被害について真正面から描く重厚社会派ドラマでびっくりした

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映画『カラオケ行こ!』公式ビジュアルブック/amazon

ジャケットがまた美しい…これをこの人が描いてるんだからもう多彩すぎて卒倒…なぜそこを虹色にしようと思うのです…?センスの悪魔なの…?


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“米津玄師『さよーならまたいつか!』、有史以来こんなにも女性に寄り添ってくれた男性アーティストがいただろうか [まじめに][フェミニズム]” への2件の返信

  1. 解釈の悪魔、たしかに。
    お前なんかには見せてなかっただけだよ、つか見ようともしてなかっただろう?って感じ。
    ほんとに泣かされますね。
    昔から、男性目線ラブソングにありがちな「~してあげる」が大嫌いで。
    なんだその上から目線?
    それ、相手が喜んでると思ってんのか?みたいな。
    歌でまで独りよがりなマスターベーションで盛り上がって、自分に酔われてもねえ(笑)
    歌詞ってほんと、深層心理というか、その人のスタンスが出ますよね。
    理由や意図はさておき、米津を起用したスタッフに拍手。

    追伸:クレイドルに到達しました!
    ビバ連休。
    20年近く遡った事になるのですね。

  2. k.satさん
    わー!クレイドル到達ゥ!ありがとうございますううう!そうですね、そういえば今年の12月でちょうど20年です!このブログを始めて。
    そんな年にこんな…全部読んでくださる方に来て頂けるなんて本当に嬉しいです。ありがとうございます!!

    > お前なんかには見せてなかっただけだよ、つか見ようともしてなかっただろう?って感じ。
    それですね!!
    男性目線の上からラブソング、守ってあげるとかそういうやつですね!歌詞じゃないけど壁ドンはモラハラだし頭ぽんぽんも見下してるしほんとろくでもねえですね。
    ほんと、米津が米津で良かったようなものの…

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