虐待の世代間連鎖は本当にあるのか [まじめに][機能不全家族]

さて。妊婦健診で、実母と疎遠にしていると言った時の助産師さんたちの反応に傷ついた話の、続きというか、調査です。調査、といっても、気になる文献を列挙してみただけといえばだけなのですが。

でも、世間では当たり前の常識のように言われている、「虐待されていた子供は、親になると我が子を虐待するようになる」という、呪い、のようなもの。
私の頭の中に、そして私と同じように、この言葉に苦しんでいる人にも、窓を作りたいな、と。
本当にそうだろうか?と疑いたい。
窓を開け、風を入れ、景色に目をこらしたら、違うものが見えてくるんじゃないかと。

そして、もしもそのような傾向が顕著だったとして、全体の何割ほどがそこに陥ってしまうのかを把握しておきたい。9割落ちるなら自分もまず確実にそうなると想定しておいた方がいいだろう。

その上で、なぜそれが起こるのかを知りたい。防ぐために。

と、そんな目的で調べたことを、書いていこうと思います。5500字。

でね!
あひるちゃんうっかりしてたの。ここ最近になってようやく、話せなかったことをここに打ち明けられるようになってきました…重い話題を避けていたのに、楽しい話じゃなくて申し訳ない…とか言ってた割に2017年にもめちゃめちゃ書いてた!!

2017-06-05 NHKあさイチの特集『DV家庭の子どもたち』を見て思ったこと、「子供に虐待をする親は、自身も親から虐待されていたケースが多い」というのは本当だろうか?

書いとるやんなー!!
めっちゃ書いとるやん。すいません。いやほんとすっからかんに忘れてたの。毒親記事のリンクを貼ろうとして「あさイチ」でブログ内検索して見つけたの。

しかもね、日付を見ると、これを書いたのが2017年6月5日でしょ。その5日後の6月10日に、妊婦健診で執拗に心配されて傷ついた話をShortnoteに投稿しているのね。まだブログにそこまで詳しく親との確執のことを書いていなかった私にとって、ここに書ける精一杯の記事がこのあさイチの感想だったのでしょうね。ん〜面白い。面白がるなよ。いえ、この日付から推理できる状況や心理状態、という構図が面白いなと。だから細かく投稿日時とか初出日とかを書き込んでるんですよデータとして面白がれるから。自分が。すいませんこういうのが大好きで。メイアンディアか(急なランドリ)。

でだ。
この2017年のあさイチ記事に、コメントをくださったほしこさん。
『女医ときどき患者』というブログを書いてらして、時々やりとりさせて頂いてたのです。

児童虐待、私にできること? | 女医ときどき患者

児童虐待 私にできること 続き | 女医ときどき患者

すごく…大好き…。告白…。ほしこさんの文章が、考え方が、私すごく大好きで…大好きです…。その辺にしとけ…はい…。

実は2004年12月というブログを始めた直後からのお付き合い!当時は違うお名前で医大生ブログを書いてらした彼女が、留学したり、立派に医師として働いたり、持病がわかって、ご結婚されたりご出産されたり、医師として、患者として、親として、一人の女性としてその時々の思いを綴っているこのブログが私本当に大好きで。最近更新が途切れてしまっているので心配しています。ブログにアウトプットする余裕がないだけで、元気に、いや元気じゃなくてもいいんだ、低空飛行でもご自分にとっての精一杯の生活が営めているといいな、と願っています。

そんな彼女が書いてらした、サイエンス誌に寄稿された「虐待の世代間連鎖」に関する大規模調査について、調べてみました。文字通り!「虐待 世代間連鎖 サイエンス」で検索したら日本語の本も見つけたんですけど、専門的すぎて手を出せてない…リンクだけでも最後に貼っておきます。

まずは元のリンク。英語です。

Parents who were physically abused as kids don’t go on to abuse their kids|The Verge

Google翻訳「■子供の頃に身体的虐待を受けた親は、その後も子供を虐待しない」

その名もズバリ!その後も虐待しない!という大見出し。

サブ見出し。

‘It’s not inevitable.’

Google翻訳「それは避けられないことではない。」

避けられないことではない!

ただその後の本文には、身体的虐待に関しては連鎖の割合は少ないが、ネグレクトや性的虐待は繰り返す傾向も見られた、と書かれていました。

上記の英文をGoogle翻訳にぶち込んだところ、2500文字ほどの和訳が出来上がり、さらにそれを流行りの!ChatGPTさんにつっこんでみた。あまり短いと大事なとこがカットされてしまうなー、と色々試して、1000文字くらいの文章に刈り込んでもらった。要約しすぎでわかりづらいと感じた箇所(通報される可能性が2.5倍高かった、のあたり)にはGoogle翻訳の方を採用したり、若干手を加えたのが、こちらです!

昨日、サイエンス誌に発表された児童虐待に関する初の大規模長期研究によれば、幼少期に身体的虐待を受けた親が自分の子供に暴力を振るう可能性は高くないという。この発見は、「暴力のサイクル」理論と矛盾している。しかし、子供の頃にネグレクトや性的虐待を経験した親は、自分の子供も同じ問題を経験する可能性が高い。

ニューヨーク市立大学の心理学者キャシー・ウィダム氏は、虐待の過去を持つ親が必ずしも子供を虐待するわけではないと述べている。身体的虐待を受けた親の大多数は、自分の子供にその行為を再現しない。この研究は、1980年代後半にウィダム氏が開始し、データ収集に約30年を要したものである。ウィダム氏は、虐待とネグレクトの文書化された事例を基に、幼少期の虐待が非行、犯罪、暴力のリスク増加に繋がるかどうかを調査した。

研究は、1967年から1971年に行われた裁判を通じて集めた900人の子供と、虐待の記録がない600人の子供を比較した。その結果、幼少期に身体的虐待を受けた親が子供に暴力を振るう可能性は低いが、ネグレクトや性的虐待を経験した親は子供に同じ問題を引き継ぐ可能性が高いことが示された。

さらに、虐待報告の偏りも指摘されている。子供の頃に虐待を受けた親は、比較グループの親と比べて、子供への身体的虐待で児童保護サービスに報告される可能性が2.5倍高かった。比較グループには、子供への身体的虐待を認めた親や、その子供が身体的虐待を受けたと述べた親が含まれている。ワシントン大学セントルイス校の社会科学者パトリシア・コール氏は、「これは、システムに既に知られている家族に対して何らかのバイアスが存在することを示唆している」とサイエンス誌に語った。もちろん、子供の頃に身体的虐待を受けた親のほうが子供に対して厳しく、虐待が発見されやすいという可能性もあるが、その問題は研究の範囲を超えている。

この研究が30年に及ぶという事実は異例である。研究者らは、若者や親に1回のインタビューで虐待歴について尋ねるのではなく、30年間にわたって第1世代の研究参加者に複数回連絡を取った。
この研究の重要な点は、30年にわたるデータ収集と複数回のインタビューを通じて得られた情報である。自己申告に依存するだけでなく、親世代の明確な虐待事例にも基づいている。しかし、対象となった子供たちの多くが低所得世帯の出身であり、地理的にも中西部に偏っているため、全米を代表するものではない。また、養子縁組された子供たちは除外されている。

ウィダム氏は、虐待の世代間伝播に関与する遺伝や薬物使用、アルコール乱用、社会的孤立、精神的健康障害などの要因についても今後調査する予定だ。30年に及ぶこの研究は単なる出発点に過ぎず、さらなる研究が必要であると述べている。ウィダム氏と彼女のチームは、これからもデータの活用を続け、新たな質問に取り組む意欲を持っている。

(太字は引用者による)

引用元
Parents who were physically abused as kids don’t go on to abuse their kids|The Verge
ー「子供の頃に身体的虐待を受けた親は、その後も子供を虐待しない」ーGoogle翻訳とChatGPTによる要約

うむ。
素人ながらまず気になったのがここでした。
・身体的暴力と、ネグレクトの定義は…?
・性的虐待は、身体的暴力の最悪の形では…?

専門家の間では明確な線引きがあるのだと思うのですが、「身体的暴力は世代間連鎖しにくい一方で、ネグレクトや性的虐待は連鎖しやすい傾向にある」という結論を出されてしまうと、そこに引っかからざるを得ない。

ネグレクトの日本における定義を調べてみたところ、日本小児科学会(pdf)によると、

子どもを遺棄すること、健康状態を損なうほどの不適切な養育、あるいは子どもの危険について重 大な不注意を犯すこと、をネグレクトといいます。 栄養不良、極端な不潔、怠慢ないし拒否による病気の発生、学校に登校させないなどがあります

とのことでした。ふむふむ…。
そうか、この研究結果が示唆しているのは、ネグレクトや性的虐待の方が、単純な身体的虐待に比べると(もちろん身体的暴力を軽視するつもりはありませんが)より深刻に、被害者に影響を与える、ということかな…。つらい。悲しい。

また、ここも気になりました。

子供の頃に虐待を受けた親は、比較グループの親と比べて、子供への身体的虐待で児童保護サービスに報告される可能性が2.5倍高かった。比較グループには、子供への身体的虐待を認めた親や、その子供が身体的虐待を受けたと述べた親が含まれている。これは、システムに既に知られている家族に対して何らかのバイアスが存在することを示唆している。

これって……もしや、私が辛かったあれ、妊婦健診で実の親と疎遠なことを執拗に心配された話と同じ現象…!?
親との関係がうまくいっていなかった、虐待されていたと申告した親は、マークされてたってこと!?
あと、通報者を知りたい!誰!?
要注意家庭とみなされていたから、虐待の兆しにいち早く組織が介入できた、ということなのだとしたら…それは、良いことなのかもしれないが…やられてつらかった私としてはつらいものもあるなあ…。

というか、氷山の一角なんですよね。
よくネットで見かける数学的考え方で言うと、親には4種類あって。

a-1:虐待されていて、自分は虐待しない親
a-2:虐待されていて、自分も虐待する親
b-1:虐待されていなくて、自分も虐待しない親
b-2:虐待されていなくて、自分は虐待する親

このうち、「虐待されていた親は自分も虐待する」というバイアスによって早期発見できるのは、a-2のパターンに過ぎないのであって。
もちろんそれも大事だとは思うんだけども。とにかく第三者が介入することが望ましいので。

ただ、この研究で、「虐待されていても、自分は虐待しない親」の存在が確認されたというのは、とても励まされる事実だな、と思いました。

ここにも書かれていますが、調査対象になったのはあくまでも「子供への身体的虐待を認めた親」や、「子供からの訴えがあった場合」なので、水面下には「認めない親」や「言えない、虐待と思っていない子供」もたくさんいることを忘れてはならないな、とも。

あの、ここに書いてきたこととは逆説的になってしまうかもしれないのですが、「虐待や面前DVによって、子供の前頭葉が損傷を受ける」という話も聞いたことがあります。
ざっくり言うと、理性をつかさどる、感情を制御する前頭葉の発育が阻害されるため、キレやすい人になってしまう、という。そして配偶者や子供に有形無形の暴力を振るってしまう。

それを知った時も愕然としました。気にしすぎとか親不孝とか、親に感謝しないととか言われてきたのに、そんな精神論じゃどうにもならない、肉体を損傷させられているじゃないか!と。私もそうなのかもしれない、とも、もちろん不安になりました。

ただ、それも、もしも自分にそういう傾向があるのなら、それを自覚し、どうすれば防げるのか対策をすることは可能なのではないかと思うのです。大事なのは、目の前の子供は悪くない、という意識を、強く保つこと。とかく…子供を悪者にしがちだから。言うことを聞かないせい、いたずらをやめないせい、食べ物を残すせい、宿題にいつまでも取り掛からないせい。

「だから子供が悪い」「これはしつけである」「時には必要である」という思考は、とても危険だ、ということを、常に意識しておくこと。
それが、データに上がってこない、水面下の「自分の行為を虐待と認めない親」や、「自分が虐待されていると気づいていない子供」を作らない努力に繋がるのではないかと思います。

ーー

こんなかんじで!
とっちらかった切り貼りと感想なだけなのですが、長年!2013年の妊娠中から、そしてちらっと記事を書いた2017年から積んであった課題について、ようやく!調べてまとめることができましたー!すっきり!いや嘘すいませんすっきりはしない。内容的にね…。

すっきりはしないのですが、同じような状況にいる人にとって、励ましになると嬉しいなと思います。2013年の私に友人が「虐待する人が自分も虐待されていた割合って、3割程度しかないっていうのにね」と教えてくれた時のように。そして2017年にほしこさんが「虐待を受けなかった子供と比べてのリスクなだけで、虐待を受けた子供が必ずしも将来それを繰り返す、と言っているわけでは全くないので、論理を飛躍してしまわない注意が必要だと思います。そうじゃないと虐待を受けた子が希望を持てなくなってしまう」と書いてくれたように。希望を持てるように。

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参考文献リンク
すいませんどちらも精読はできていないのですが、参考に置いておきます。
いずれも、ともすれば虐待の世代間連鎖を証明するかのような内容とも言えるのですが、漠然としたイメージだけでなく、こんなにたくさんの専門家の方々が科学的に解明し、対策しようと試みてくれていることに、ちょっと勇気づけられました。

amazonで冒頭けっこう長く試し読みができます。
小児期の逆境的体験と保護的体験――子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス 単行本 – 2022/12/22 ジェニファー・ヘイズ=グルード (著), アマンダ・シェフィールド・モリス (著), 菅原 ますみ (監修, 翻訳),

子ども時代の情緒的虐待が、成人後のネガティブな情報に対する注意の向け方に大きな影響を与えることを発見 – 生物学的メカニズムの一端も明らかに – | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry

ーー

この後の予定
・優しい通りすがりさんの続き
・凍結受精卵を破棄した話
・もしもうちの子がこれを読むなら

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“虐待の世代間連鎖は本当にあるのか [まじめに][機能不全家族]” への2件の返信

  1. 急なメイアンディアみ!
    これも「暗い趣味」なんでしょうか。
    でも自分がどういう事を考えて、感じて、アウトプットしていたかって、私も後から面白がりたいタイプなので、すごく共感します。
    当たり前のように「虐待は連鎖する」と言われるのには、ずっと懐疑的なスタンスだったのですが、同じように疑問を持って研究する人が多いと知れてよかったです。
    やはりある種のバイアスなのですね。
    虐待を受けた人は経過観察じゃないけど、その後も注目される事になるから、データも残りやすいし、何より人は虐待の連鎖という分かりやすい公式で納得(安心?)したいのかもしれませんね。
    興味深いテーマをありがとうございます。

  2. k.satさん
    メイアンディアみ!
    ありがとうございますー!さすがランドリ強火ファン…面白いですよね!そしてあひるブログのことも面白がってくださってほんとに嬉しいです。

    同じように疑問を持って研究する人が多いと知ることができて、ね、嬉しいですよね。
    何より人は虐待の連鎖という分かりやすい公式で納得、安心したいのかも…そうかもしれませんね!自分には関係ないと遠ざけておきたいのかも。なるほど〜!

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