NHKあさイチの特集『DV家庭の子どもたち』を見て思ったこと、「子供に虐待をする親は、自身も親から虐待されていたケースが多い」というのは本当だろうか?

朝から重いと評判のあさイチ、今日も重かったです。
あひるちゃんも今回は超真面目に。

DV家庭の子どもたち|NHKあさイチ

DVを直接受けたわけではなく、両親間の加害と被害を見ていただけでも子供の心に深く傷を残す、という内容で、10歳くらいの子供たちへのインタビューや、20歳の青年の話、もっとずっと大人になっても両親のDVを見ていた影響が残ってしまって苦しんできたという40代50代の男女など、様々な年代の人の声を集めていました。

一般的なDVのイメージである「殴る蹴るなどの身体的な暴力」だけでなく、暴言、怒鳴る、経済的束縛なども子供に(もちろん被害を受けている配偶者にも)多大な負の影響を及ぼす、ということを、NHKで明言してくれたことに意義を感じました。
自分がやっていることがDV、されていることがDVだと認識しないまま、不自然で不安定な状態で生活している人もまだまだ多いと思うので、これを機に誰かの気づきに繋がってくれることを願いたいです。

ただ、子供の頃どんなふうにつらかったか、大人になりそういう家庭を離れても、どういう影響がその人に残ったのか、など、具体的な例がたくさん出てきたので、問題の深刻さを痛感すると同時に、そういうつらさを世間にわかってもらおうとする、理解してもらえるのは良いことなのですが、「やっぱりDV家庭で育った子は特殊なんだ、普通じゃないんだ」と、ますます偏見の目で見られてしまわないだろうかと不安にもなりました。

でも番組の最後に、この特集を取材したディレクターさんが「DV家庭の子供というものを、特別視しないでほしい、偏見を持たないでほしい」と言ってくれたので、少し安心しました。
偏見が助長される危険性もあることを認識して、それでは本末転倒である、苦しみを理解してほしいというのが番組の主旨である、ときちんと伝えようとしてくれたのだな、と思いました。

本人たちが、誰よりも不安なのです。自分はこんなんで、まともな家庭を築けるのだろうか、子供や配偶者に親と同じことを繰り返してしまうのではないか、だから結婚も子どもを持つことも、自分は諦めなければいけないんじゃないか。
そんなふうに、子供の頃からずっと苦しんでくるのです。
世間でも、「子供に虐待をする親は、自身も親から虐待されていたケースが多いらしい」と当たり前のように言われており、番組の冒頭でもゲストの人たちがさらっとそんな話をして、みんなその発言を流していましたし、私も長年そう思い込んでいましたが、ここ数年では、本当にそうなのか疑問に思うようにもなりました。


ある時、「自身も親から虐待されていた人は3割にすぎない」という話を聞いて、意外に思ったことがあります。3割というのは、決して多いとは言えない数字ではないかと感じました。
本当のところはどうなのか、気になって折に触れて調べてみようとするのですが、どちらの場合も確たる資料を見つけることができないままです。

(ちょっと追記)
ただ、この3割という数字に信憑性があるとしたら、残りの7割は特に親から虐待を受けたわけではない(自覚がないだけ、という人も含まれると思いますが)、その上で自分の子供を虐待してしまうわけで、虐待の加害者になるというのは誰にでも起こりうることだとも考えられます。
私は虐待というのは、いわゆるワンオペ育児が引き起こす「状況による病」、という側面も大きいのではないかと思っています。決して特殊なことでも、他人事でもない。
それから、「自身が虐待されていたけれど、子供には虐待行為をしていない」人。統計には現れづらい、そういう人の方が圧倒的に多いのではないかと。
親から酷い扱いを受けて傷ついてきたけれど、それを子供には繰り返すまいと決意し、努力し、実行に移せている人。そういう表に出てこない、普通のことを普通にこなしている人、だけどその人にとっては、とてつもない痛みと苦しみの果てにその「普通」に辿り着いている人。
そんな人が、きっと一番多いはずではないかと。そんなふうに思います。
(追記、以上)

虐待されていた子供たち、虐待していた親たちに聞いても、その時点でそもそもバイアスがかかっているので、正確なデータというものを取るのは難しいのかもしれません。
大事なのは、正しいデータがどれなのか、ではなく、ひとつひとつのケース、一人一人の苦しんでいる人に向けて、どう接するか、その苦しみをどう取り扱うか、ということなのだろうな、と思います。

「虐待する親は、子供の頃に虐待を受けていた」という話があまり疑われることなく世間に浸透していて、虐待されていた人たち自身も、それに縛られて自分に自信を持てないでいる。

今回のあさイチの番組では、その偏見をますます助長してしまうんじゃないかと見ていて心配になってしまったので、番組の最後にディレクターさんが「DV家庭の子供を特別視しないでほしい、偏見を持たないでほしい」と訴えてくださったのは、とても嬉しかったです。
まだちょっとまとまりないままなのですが、とりあえずここで公開します。もう少し続きを書きたいなと思っています。

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関連書籍を検索していて有名な『毒になる親』を見かけ、思わずレビューを熟読。
特に星1(低評価)のこちらの2件を、コメント欄も含めてついつい読んでしまいました。
この本を読んで救われた、楽になった、という人もいて、逆につらくなった、という人もいるようです。そんなレビューのひとつひとつにもまた様々なコメントがついていて。

色々な意見を読んでいて思ったのは、楽になるやり方は人それぞれで、「こうすれば楽になるのだからその通りにしろ」と強要するとか、「そんなことで楽になったのならあなたの苦しみは本物ではなかった」なんて否定する権利は誰にもないのでは、ということでした。だからちょっと、この手の話を公に書くのは怖いんですよね。そういう批判がきたりしそうで。
でもそれぞれが楽になれればそれでいいんだと思います。人のことより自分のこと。色々なことを認め合うこと。

参考になったレビュー。私もこの方に賛同したいな。

★☆☆☆☆ この分析で気持ちが楽になる人はたくさんいるだろう。だが、心理学の統計調査では否定されている考えである。


私は心理学徒の一人であるが、本書に書いてあることにはまったく与しない。
書いてあることは
「人は育てられたようにしか育てられない」
「人は自分の育てられ方を繰り返す」
ということである。
(中略)
こんな絶望的なことがあってなるものか。
(中略)
こうした子は、「親を自然な気持ちでやさしくしてやろうと思える時期まで待てばいい」だけである。
時間切れになることももちろんある。だが、
時間が解決することを忘れてはならない。

こちらは苦しみの最中にいる人に対し、温かな言葉が多数寄せられています。

★☆☆☆☆ すべては手遅れ・・・

毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫)
スーザン・フォワード
講談社
2001-10-18



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“NHKあさイチの特集『DV家庭の子どもたち』を見て思ったこと、「子供に虐待をする親は、自身も親から虐待されていたケースが多い」というのは本当だろうか?” への2件の返信

  1. そうそうそう、そうなんです。
    私のブログのコメント欄に書いたのですが、研究結果で、「性的虐待やネグレクトを受けた子供はそうでなかった子供と比べて将来それを繰り返しやすい傾向にある」とあったのですが、それは、虐待を受けなかった子供と比べてのリスクなだけで、虐待を受けた子供が必ずしも将来それを繰り返す、と言っているわけでは全くないので、論理を飛躍してしまわない注意が必要だと思います。
    そうじゃないと虐待を受けた子が希望を持てなくなってしまう。
    最近、ヒルビリーエレジーというアメリカの白人労働階級層の人達のことを書いた本を読んだのですが、そこに「幼少期に(貧しかったり虐待を受けたりといった)ひどい経験をしたからといって、それを一生の免罪符にすることはできない」とあって、そうそう!と思いました。
    虐待を受けた子供たちであっても温かい家庭を築くことは十分可能だし、それに対して前向きになっていってほしい、と思います。。

  2. ほしこさん
    ありがとうございます!!
    ほしこさんのブログのコメント欄も読ませて頂いてました。身勝手なコメントに温かく有用なお返事を本当にありがとうございました…!
    本文にも足らなかった部分を少し追記したのですが、別途もう少し詳しく書きたいので、その時はほしこさんのブログと、教えてくださったリンク先も紹介させて頂きたいなと思っています。
    一生の免罪符にはできない、そうなんですよね。傷つくのは当たり前なのですが、いつまでもそこにいても良いことはないよ、と。マイナスからのスタートは苦しいし、理不尽ですが、それでも前向きになってもらいたいですね。
    虐待に限らずどんなことも、与えられた選択肢の中でやっていくしかないので、選択肢を見つめて嘆いていてもなんにもならない。
    ただ、それは当事者が静かに受け入れて納得して進むことであって、周囲の人や部外者がレッテルを貼って阻害したり、励ましのつもりで傷を広げたり、そういうことも減っていってほしいな、と思います。

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