タイトルのまんまです。タイトルのまんま。
あのね、今週、11週のとら子は、(以下ネタバレです)
ええっと、今週とら子は、ヒャンちゃんと思わぬ再会をし。でもすごく硬い表情のヒャンちゃんとろくに会話もできず。朝鮮人(当時の呼び名)であることを隠し、日本人として新たな名前で暮らしているからそっとしておいてほしい、と。
そんな、何か私にできることはないのか、と。
これに対してツイッターのコメントが、「とらは育ちが良くて恵まれてるだけに傲慢」とか、「余計なお世話、お節介」と。そういう感想がすごくたくさん挙がっていて。ええ!?とびっくりしたんですが。
次に、花岡夫人に対して。
花岡さんの死はね…わりと登場直後から史実を知る人たちのざわめきを見ていたので、ぐおお、ついに…!と大ダメージを受けはしたのですが、花岡夫人にとらが「ごめんなさい!」と謝ったことに対して。「とら、そういうとこやぞ!」と皆さん呆れ果てていて。
「妻を差し置いて、自分だったらどうにかできたかもしれないのにと元カノマウント」、と。ええ!?
花岡夫人がとらに対して「家族が言っても変えられなかったんですもの、他の人が言って聞き入れてたら私、妬いちゃうわ」と柔らかな調子でかけた言葉に対しても「とらの無礼を秒で叩き落とす花岡妻見事!圧勝!」みたいな。
ええ!?
そ…そんなに!?
しかもね!なんかね、それを、皆さん別に、けなしてないっていうか…むしろ「とらちゃんの暴走をちゃんと戒めてくれる人がいて素敵な関係」とか、「ヒロインの欠点をしっかり描く今回の朝ドラほんと素晴らしい」みたいに…。
果ては、「人を勝手に不幸と決めつけて、穂高先生と同じことをしている」とまで!
ええ!?全然違わないですか!?
いや…どんな感想を持ってももちろん自由なんですけども…。これが解釈違いというやつか…?
でも最近のよくある傾向として、ニュースサイトまでもが「寅子の驕りとも言える言動に視聴者も呆れ気味」みたいにまとめているのを目にして、すごくいじやけてしまいました。
あの…
なんで?(´;ω;`)
なんでみんなそんな、いつのまにとらちゃんに対して上から目線なん…?
とらちゃんそんなできない子、空気読めない子、傲慢で失礼で恵まれてるがゆえの無神経で、でしゃばりで…?
え、そんな扱いの子でしたっけ…?
とらちゃん頭の回転早くて、正義感にも溢れ、誰もが思っていても言い出せない、思うことすらできなかった因習に「はて?」とまっすぐ切り込むことができる、スペシャルで素敵な女の子じゃなかったでしたっけ…?
あのう。
ヒャンちゃんに対して、彼女が幸せそうならまだしも…素性を隠して暮らさざるを得ない友人のために、「何か自分にできることはないのか」と思うことって、そんなにいけないことなの?
「彼女を取り巻く偏見を今すぐなくすことができないなら黙ってろ」とちょび髭滝藤さんにも言われてしまったけれど、そんなの、一度も嘘をついたことがない者だけが石を投げる権利がある、のと同じで、今すぐできないから私個人に権利はない…と黙って何もしなければ、誰も手出しができないままじゃないか。差別も偏見もいつまで経ってもなくせないじゃないですか。
いや、わかるんですけど。今は目の前の仕事に集中しなさい、と諭してくれたちょび髭滝藤さんの目元がふいに和らいですごいほんのわずかな表情の変化だけで優しさを滲ませた大人の見識だっていうのもわかるんですけど。
あの一連の場面の、寅子の憤りや、悲しみや、無力感を、私は否定なんてできない、と思ったのです。
花岡夫人に対しても。
仮に、とら子が言った「ごめんなさい」を、桂場さんが言っていたら。「止められなかった、申し訳ない」と。それを妻へのマウントと取る発想は出てこないのでは。
轟は?轟が言っても、妻へのマウントと解釈する人はあまり出てこない気がする。つまり恋愛感情の有無は関係なさそう。
なのに、女が言うと途端に恋愛としてマウント取った、みたいにみなされるのひどくない?
みんなそういうの嫌いなんじゃなかったの?
家族が言っても止められなかった。家族だからこそ止められないこともあったかもしれない。
誰かがあんな形で亡くなった時、身近にいた人は誰しもが、気づけなかった、何か一言声をかけていれば、防げたかもしれないのに、と後悔したり、思い悩んだり、するのはそんなにいけないことなのか…
家族ってむしろ朝晩しか顔を合わせない間柄じゃないですか成人の場合。仕事仲間の方がよほど長時間一緒でしょ。家族に対して申し訳ない!とつい謝ってしまう、って、そんなに非難されるような、非常識な行動だとは、私には思えなかったんです。
だからすごくモヤモヤしてしまった一週間でした。いじやけた。いじやけたんですよ。
あの、私の鬼門なだけなのかもしれないんですけどね、この手の構図が。
古い話をしますとね、渡辺多恵子さんの傑作アメリカ家族漫画『ファミリー!』のね、愛蔵版だか文庫版だかの解説を庵野秀明さんが描いてたんですけど、「フィーが大嫌いだった」と。正義感気取りで明るくてまっすぐで大嫌いだったと。だからジャニスに痛めつけられる回ではスカッとしたと。ええええええええ。ひど…ひどい。あれ確か作者の渡辺先生もフィー嫌いって言ってたんだっけなあ…
まんま一緒では。家族に恵まれて、よってたかって助け起こしてくれる手のなんて多いこと、あなたみたいな人私大嫌いよ、一人くらいあなたを愛せない人間がいたっていいでしょう、それすら許さないっていうの、どこまで傲慢なの、と…ジャニスにこてんぱんに攻撃されて、フィー呆然ですよ…どうして…?て。
スカッとするか!?これ!!
明るくピュアな主人公が疎まれたり攻撃されたりする展開…私はすごく苦手なんです…すごいつらい気持ちになる…
じゃあなんでみんな悟空大好きなんだよ!ルフィーだってそうじゃん!男ならいいわけ!?女だとダメなの!?とか言うぞ!?男なら人望厚いぜお前がリーダーだぜついていく気にさせるぜ!ってなるのに女だと傲慢だ出しゃばりだマウントだいけすかないってなるわけ!?これってそういうこと!?
桂場さんだって花岡妻さんの絵買い上げてたじゃないですか。個人じゃなく裁判所としての行為でしたが。あれをもしもとらが言い出してたら、やれ上から目線だほどこしだ失礼だと攻撃されてしまうのではないか?
うーん。
私の読解力が足りていないのかもしれないけれど…私が感じたのは、今週は、確かに未熟かもしれない、経験値が足りていないことは間違いない寅子が、少しずつ社会復帰をしていく準備の週だったんじゃないのかなと。妊娠を機に仕事から離れざるを得ず、そのことでまだ自分を責めていて、自信を失っていて。それがようやく少しずつ、自信を取り戻していく途中、なんじゃないかと。
だから、懸命に悩んで考えて行動している人を嘲笑する、冷笑するような今週のネット上の風潮が、つらかったです。
というご意見も数日経ってようやくちらほら見かけるようになって、だよね!?ですよね!?と救われた気持ちになったので、私も書いておこうと。迷ったんですけど…。
あの、これまではおんなじような感じ方をしてると思っていた、むしろ私よりずっと深く細かく洞察してらしてすごい!感想読むの楽しみ!と思ってた方々が一斉にええ!?と思うようなことを書いてらっしゃるのが…戸惑ったというか、悲しかった…あまりに多いし、ニュースメディアにまとめられちゃったりもしていたので、これは私の拒絶感の方が間違ってるのか…?とすら…。
単なる解釈違い(?)で、そういうふうに感じる人が多かったみたいですね〜と思っていればそれでいいのかもしれませんが。さみしくなっちゃった(´・ω・`)。
もちろん今週つらいだけじゃなく、桂場さんの「正論は大事だが見栄や詭弁が混じっていてはだめだ。純度の高い正論ほど威力が大きい」もけだし明言でしたし、滝藤多岐川さんの「法律というものは人が幸せになるためにある」というセリフも良かった。「幸せになることをあきらめた時点で矛盾が生じる。彼(花岡)がどんなに立派だろうが、法を司る我々は、彼の死を非難して、怒り続けねばならん。その戒めに、この絵を飾るんだ」という。花岡さんの死を安易な美談にせず、大馬鹿者だ!と罵った上でのこの落とし所はすごかった。
モデルとなった山口判事の息子さんは「とうとう一個の法律と一方的に心中してしまった自己陶酔型の利己主義者」と語っているらしいですし…確かにそうだよな…家族としては本当にたまったものではない…美談にされても泣けない。いやあ本当に、家族としてはつらすぎますよね…餓死って…長い期間苦しんでいるのを、横で見ているしかないって…
■1年間汁ばかりをすすり33歳で死亡…朝ドラで花岡のモデルになった山口良忠判事の壮絶な栄養失調死 | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン)
それからあのチョコレートの絵、素敵だったけれど…あの絵の中の大人の手が子供たちに分け与えているチョコレートの包み紙に英文字が書かれているのも、アメリカから与えられたものなんだよな…と思ってしまいました。よねさんが言っていた、私たちの手で掴みたかった、という言葉の重さ。
そんなことをあれこれと考えてしまう週でした。
来週も楽しみ。よねさんとはどうかな…歩み寄れるのだろうか…ハラハラ…
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(ちょっと追記)
ちょ、シナリオ集だと全然ニュアンス違うらしい!なぬううう!
放送終わったら買うつもり(Blu-rayボックスも買うかもしれない…)だったけどこれ今すぐ買って読んだ方がいいのか…!?でも脚本だけじゃなくドラマ全体としての仕上がりから感じ取りたいものもある…!
こちらのリンク先より、シナリオ集のネタバレOKならぜひお読みください…!
第11週シナリオ集感想。香淑をめぐる多岐川と寅子のやりとりがかなり違って思うところも。あと毎度お馴染み桂場→寅子の心情描写がカットされがち問題。松ケンの演技力だとカットしても伝わるからなの?(わかるけども…!)ディレクターズカット版が切実にほしい。 #虎に翼
https://t.co/poKURDUgxo— カナ (@hatorin_hatori) June 16, 2024
もうひとつリンク追記。
ジェンダーの観点から戦前から戦後にかけての女性画家を研究する、美術史家の吉良智子さんへのインタビュー。お、面白い…!
■『虎に翼』花岡奈津子のチョコレートの絵はリアルなのか? 美術史家・吉良智子さんに当時の女性画家について聞く|Tokyo Art Beat
こちらでも触れられていますが、美術の世界も男性社会なんですってね…クラシック音楽の世界もだとか。どこもかしこも…。
(追記、以上)
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とらつば関連
■2024-06-03 『虎に翼』第9週、太平洋戦争の終わりと、河原の日本国憲法
■2024-05-15 『虎に翼』7週、よねさんという人物解釈の続き(ネタバレあり)
■2024-05-13『虎に翼』よねさんの面接の態度に思うところあり、今後の展開を妄想してみた(ネタバレあり)
■2024-05-03 日本国憲法に “両性の平等” 条項を起草した女性(『虎に翼』オットも見ている)
■2024-04-21 NHK朝ドラ『虎に翼』素晴らしすぎる!週まとめだとカットされまくってるからぜひ毎朝のノーカット版見て![フェミニズム][まじめに]
■2024-04-29 米津玄師『さよーならまたいつか!』、有史以来こんなにも女性に寄り添ってくれた男性アーティストがいただろうか [まじめに][フェミニズム]
私もSNSに花岡夫人へのセリフはたしかに傲慢だなとは思ったけど、と書いたので少し整理して転載します。
たしかに無自覚無意識に傲慢だなとは思ったけど、それは恋愛的な感情所以、女性同士のマウントというより、内側(妻・家庭目線)とは違う場所(同志・同業界)にいたのに気づけなかったことを本気で悔いてるのだと思い、それがすごくとらちゃんだった。
こういう一見失礼ギリギリなことを無自覚に言う人いるよなぁと思いつつも、私たちは先のチョコレートのくだりや常に一言多い(けど重要なこと)キャラクターを知っているから、それだけ居ても立っても居られない状態だったことも伝わったし、とらちゃんらしい言い方だったかと思っていました。
一方、夫人は、夫人の方こそが女性同士のマウント(そこまで重いものじゃなくても)を無意識に感じたのか「妬いちゃうわ」と上品にいなしていて、大変クレバーな方! この一言と花岡さんが亡くなったあとも義父の事務所でバリバリ働いてるという説明で、とらちゃんとは違うけど使命感や正義感を持った人格者というのがわかって、ある意味花岡さんの選んだだけある、よかった。結婚して正解だったんだなと思わせられました。
(またも長々とすみません!)
シベリアさん
おお〜、詳しくありがとうございます!なるほど〜!
私が気になったのは、「脚本や演出も、本当に寅子を傲慢だと描いているのか」という点だったのかもしれません。ネットではそう見做されているけれど、ほんとに!?と。そうかもしれないけど、そんなに!?と。
なんだろう…先生に叱られてる子の後ろからそうだそうだーと囃し立てるみたいに見えてしまって…。
でも、なるほど確かにシベリアさんの解釈だと、なんだかすっと納得できる気がします。女同士の感情的な何かを含ませるつもりがなければ、脚本で「妬いちゃうわ」というセリフは選ばないでしょうしね。同時に、夫人が義父の事務所でバリバリやってることもさらりと示唆、そうですね!ほんとに!
いろんな生き方をする、どんな女性も応援してくれていて…そういうところが本当に好きだなと改めて思いました。ありがとうございます〜!!
わわわー、うまく説明できないところを汲み取っていただいてありがとうございます。そう…私も「そんなに?」と書かれていることを「私、どっちかっていうとあひるさん側です!」て書きたかったはずなのに、あんなに長く…(汗
>なんだろう…先生に叱られてる子の後ろからそうだそうだーと囃し立てるみたいに見えてしまって…。
ああ、それはなんか辛いかもです。なんか、囃し立てる方々とのマウントの解釈違いといいますか「これって言葉選びは傲慢だけど、意味的には同志の気持ちからの言葉で女性男性の話ではないと思ってたんだけど…」となりました。
シベリアさん
いえいえこちらこそ!ほんと、かなりすっきりしました!
言葉選びは傲慢かもしれないけど、意味的には同志の気持ちからの言葉…!そう!そうなんですよね!お互い立場は違っても、かけがえのない人を失ってしまった事実には変わりなくて…だから裁判所の男性方だって全員が影のようにずーーーんとなっていたわけで(演劇的な演出が素晴らしかった)。
女性男性の話ではないのでは…わかる!わかります!
勝ち負けでもない。
マウントの解釈違い!そうなんですよね、微妙〜な差なんだけど、なにか決定的に違う方向を向いてる気がする…でもなんだかよくわからない〜!とモヤモヤしてたので、ほんと嬉しいです!
まさしくとらちゃんと夫人との間に交わされたもののよう…それこそ解釈は人それぞれなんですけど、私は自分やシベリアさんの解釈の方が好みだな〜と思いました。女の戦い!みたいなのじゃない世界。
しっシベリアさん!
本文にも追記したのですが、そしてもうご存知かもしれませんが…シナリオ集を読むと細かいニュアンスがかなりカットになってるらしいです!なぬううう!
シナリオ集のネタバレOKならぜひこちらのツイートをどうぞ…!私の署名欄にリンク貼りました。ディレクターズカットの映像版ほしい!!
コメントに対するお優しい返信に「なぜ、ここに♡ボタンがないのか…」と思っていたら、追記ありがとうございます!あの影ずーーーんの演出、秀逸でしたね!
なんか、そう!女の戦いにしたがる向き、男女が出逢えば、男女の話にしたがる向き、ありますよね。民法のドラマに対する感想でもそれはよく思います(本筋から外れるので割愛しますが)
ところでシナリオ集の追記ありがとうございます!読みました!香子ちゃんのひきこもりの行は入れてほしかったです。これ買いたいなあドラマと並行して読みたいなあ、お高いかな?って見たら300円程度と見て驚愕しました(笑
シベリアさん
コメント欄にハートボタン!ありがとうございます〜!!
女の戦いにしたがる向き、男女の話にしたがる向き、ありますあります!(割愛せざるを得ないほど長くなるのもわかります!)
シナリオ集、一週分が300円安いですよね!ただ、せっかく様々な演出も含めて良い作品なので、放送中に脚本を読んでしまうと「ここもカット!?ここも足りない!入れて欲しかった!」と不満が募ってしまいそうでそれも勿体無いような…完結してから読もうかなあ…でも今すぐ知りたい要素もたくさん!悩ましいですね!