奨学金の受給率、2002年(平成14年)と2022年(令和4年)のデータ比較 [まじめに]


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ひとつ前の、学生時代にお金に困っていた記事の続きです。

2024-06-13 「大学に入ってバイトするのは馬鹿だ」[まじめに][機能不全家庭]

お金に困っていたとはいえ、およそ30年前当時は「学費を親に払ってもらう」というのはそれなりに当たり前のことだった。けれど今の世相と比べるととても贅沢なことなんですよね…。

これを機に、少し調べてみたのでメモとして載せておきます。あくまで素人調べですし、常識的なことばかりかもしれませんが…無知を晒して恥ずかしいけれど、ひとつ前の記事とセットで調べて書き残しておかないとな、と。

1975年生まれの私が大学に通っていたのは大体1995年あたり。見つけたデータで一番古かったのは2002年(平成14年)、新しいのは2022年(令和4年)でした。

大学学部(昼間部)の奨学金受給率は、
2002年が31.2%、2022年には55.0%になっていました。

逆に奨学金が「必要ない」、非受給、と答えた学生の割合は、
2002年が68.8%、2022年には39.3%

2022年度には、「申請したが通らなかった」「希望するが申請しなかった」という人が5.7%います。この潜在的な受給希望者を足すと、60.7%の学生が奨学金を希望しているとも言える…。

自分が学生時代のことを思い出しても、体感的にも納得いく気がします。奨学金利用者は3割。少ない。奨学金を使わない学生が7割弱。

それが今は、5.5割の学生が奨学金を利用している。「受給はしていないが必要としている」人は6割、とも言える。
奨学金が必要ないと答えたのは4割弱…。

子供が大学生という友人によると、今は本当に、奨学金をもらっていない子は少ない印象だとか。友人の子供たちはクラスメイトから「奨学金じゃないの?いいなあ」と言われるらしいです…。

参考リンク。
リンク先には昼間の学部だけでなく、大学院修士課程と博士課程のデータもあります。

2022年
令和4年度学生生活調査・高等専門学校生生活調査・専門学校生生活調査 | JASSO(pdf)

2002年の数字は、こちらの平成16年度調査(2004年)に載っていました。
平成16年度学生生活調査 | JASSO

回収率や有効回答数の推移も興味深い…

2004年
有効回答数31,278人、調査数51,205人 回収率61.1%

2022年
有効回答数24,583人、調査数139,366人 回収率17.6%

調査数がずいぶん多いのは、オンライン調査が可能になったからなのかな?にしても回収率はずいぶん下がっていますね。

そして…検索して真っ先にヒットした、2022年の調査結果を利用したこちらのサイトが怖い…

奨学金を受けている学生の割合はどれくらい?|ライフイベントから見る生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター

奨学金制度とはいえ、お金を借りることに少し抵抗を感じる人もいると思います。では、どの程度の人が実際に奨学金制度を利用しているのでしょうか


そして提示される55.0%の数字…まるで「ほら、こんなにいるので安心ですよ?」とでも言わんばかり…お金を借りることに抵抗を感じるのが正しい感覚でしょうに…

それからすっごく初歩的な疑問なのですが、昔は「奨学金」って、給付型が一般的だった気がしませんか!?私が世間知らずなだけだろうか…奨学金は借金と知った時は衝撃を受けました。えっ奨学してないじゃん!!借金じゃん!

そうか、調べてみたら昔は「無利子」だったのですね。2004年を境に変わったらしい。

奨学金が地獄と化しているのは昔の奨学金とは違うから|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

2004年に日本育英会から日本学生支援機構に引き継がれた時点で奨学金制度は大きく変わり、いまや実質的に「金融事業」と化しているからである。だから、「返したいのに、学校へ行く時間を割いて働いても一向に返せない」という矛盾、そして悪循環が生まれてしまっている。決して、浪費癖があるとか、お金にだらしがないなどの理由で返せないわけではないのだ。

奨学金を借りると、借金を背負って社会に出ることになる。それは職業選択を制限することにもなるし、経済的な余裕のなさから結婚や出産をあきらめざるを得ないということにもなっていくだろう。

なお多くの学生が奨学金に頼らざるを得ない理由は、大きく分けてふたつあるそうだ。「家計の悪化」と「学費の高騰」がそれで、特に学費の高騰にはすさまじいものがあると著者は指摘している。


いや本当に。私、自分が金金金!ととにかくお金が欲しくて必死だった時期や、家賃や光熱費、水道代の引き落とし日に残高が足りるかどうかびくびくしながら過ごした時期があるだけに、今の若い人たちが社会人になると同時に何百万もの借金を背負った状態でスタート、というのがもう…どれだけの負担かと思うと恐ろしくて。どうしてこんなことに。

日本の奨学金の歴史③ ~無利子から有利子へシフト~|久米忠史(くめただし)

この年度をみて明らかなのが、日本経済が右肩上がりでイケイケの時代に有利子奨学金を導入し、その後のバブル崩壊、経済の凋落、就職氷河期の時代に量的拡大に踏み込んだのです。

その歪が目に可視化されてきたのが、リーマンショック後の年越し派遣村が取り上げられてきた頃だったと思います。



日本の奨学金の歴史① ~創設の経緯~|久米忠史(くめただし)

学徒出陣は文系学生が対象で、理系学生は含まれませんでした。これは理系学生は兵器の開発も含めて国作りに重要な役割を果たすと考えられていたからでしょう


学徒出陣は文系学生!?えっ怖!!まさかのこんなところで文理差別!!文字通り命運を分けている!!

うーん…考え込んでしまう。
もうひとつ先程の記事の追記として、私の職歴がうっすらなのは、もしかして私が就職氷河期世代であることとも関係あるのかしら、とちらりと頭をかすめたりもします。最近になってようやく就職氷河期世代救済だとか(全然救済になってない)、氷河期世代は国家的失政の犠牲者だとか、平成の失われた30年だとか言われているのを聞くと。私たち、見捨てられていたのか…と。

立派に仕事してる人の方が多いからこじつけのような気もするし、だからどうこう言うつもりもないんだけれど、でも、個人の生活や、生き方、選択肢って、当たり前かもしれないけれど世相に翻弄されるよな…とも思うし、それも紛れもない事実ですよね。

また、学徒出陣の文字で思い出すのは、これも最近言われ始めた戦争体験によるPTSDの深刻な影響です。我々団塊ジュニア世代の親、団塊の世代、その親たちは、戦争を体験し、徴兵されていた世代で。そのPTSDで子供や妻に辛く当たり、辛く当たられた団塊の子供たちが親になって子供や妻への接し方がわからずに辛く当たり、辛く当たられ戸惑う我々団塊ジュニアは、子供を産まない選択をしたり、氷河期世代でもあるのでそもそも選択肢がなかったり、自分一人の生活を営むので精一杯だったり…。
もちろんこんなふうにすべてを単純化できるものではないのですが、それにしても連綿と繋がっている気がして。弱い者たちが夕暮れさらに弱い者を叩く音が響き渡ってブルースが加速してるんじゃないだろうか。

奨学金について調べてみたら、やはり教育を疎かにしている、どころか利潤追求に走っている国のムーブを改めて感じてしまいました。

夕暮れ、って、何の夕暮れ、何の終焉なんだろう。

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これも笑い事じゃないんですよね…
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柏木ピコタンのこれ!本当に面白すぎて…重いですが…。表紙の栗橋さんのような若きケースワーカーさんたちも奨学金で300万だったか500万だったか払い続けてるよ〜と話している場面があってえ!?と思ったのでした…


<健康で文化的な最低限度の生活(3)柏木ハルコ/amazon>


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