ひとつ前の短編集『セカイ、WORLD、世界』の話ついでに、インタビュー集もアップします。アクセス激減の予感♪
半年ほど前の宮本ドラマの時期に、自分が読んでへえへえと思ったものをどんどん貼ってメモしておいたものです。一部引用させていただきますが、どれも面白いのでぜひリンク先を訪れて読んでみてくださいませね。
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マンバ通信のインタビュー。
漫画家としてデビューする前後のお話から、『宮本』連載中の話など。
例の靖子事件についてはあちこちで語られていますが、わりと珍しく事件後の、宮本、靖子それぞれの家族とのエピソードについて尋ねられ、詳しく触れています。へえへえ。
ドラマ『ふぞろいの林檎たち』の話とか、「新井ヒロインは裕木奈江」とか。「振り回されるのはご褒美」とか。
それから、「欠落とか欠陥とも思える部分が魅力として面白いと思えるような世の中になったらいいのにな」という話も、『RIN』にからめて。うんうんリンくんほんと酷かったですね。ドイヒー。
2018年06月14日
■2018年の今、新井英樹に聞きたい『宮本から君へ』のこと マンバ通信
結婚するしないの流れになったときに、まあ結婚自体がある意味「家と家とのつながり」という部分もあるんだけど、たとえばサラリーマンもののマンガで、会社だけで完結するようなものが嫌だったの。恋愛って、脳が暴走して、狂った状態で二人が絡み合う状態になるわけだから、そのうっとりしている当事者に冷や水を浴びせるのって、やっぱり家族だよなと思って。
主人公に冷や水を浴びせるのが好きな新井様…。
『ドラマ宮本』が、今の若い人にはどう見えていると思うか?
「自分の自意識の暴走が嫌だ」と言いながら、自意識モンスターみたいな宮本を描いていたんだけど、もし今の若い子がドラマで宮本を見て、当時よりも受け入れやすくなってるんだとしたら、「あっ、やっぱり」って思う。
──「やっぱり」というのは?
要するに、SNSをやっていることで、自意識が暴走してるやつが増えてるんだろうなと。連載当時に嫌がってたやつは、その自意識を見たくないというのがあったと思うんだけど、もし今宮本を見て「わかる」という感覚の人が増えてるとしたら、それは世の中全体が自意識に振り回されているからだと思う。
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続いてサイゾー。こちらは9年前のものです。
2009年2月18日
■「醜悪な社会だからこそ美しいものを」 怒れる漫画家・新井英樹が見る現代|サイゾーpremium
新井 今の時代は「自分探し」といっても、何もせずに自分の中に埋蔵金みたいなものが眠っていると信じているだけですよ。たとえば、本を読むだけでステップアップできると信じて、面倒なことは何もしなかったり。そんな感じがやたらするんですよ!
(中略)
新井 とことん否定されて、自分が何者でもないところまで追い詰められたりしないでしょう。自己肯定してくれるものばかり探しているような感じがします。
宮本はいろんなところでぶつかって転んで傷ついたりしますが、それが宮本の成長物語になってしまうことは避けようと思っていました。それが僕の原体験ですね。自分が思い描いている理想は実現されないこともある、と。
あの、「必死で頑張ったからといって結果がついてくるとは限らない」というのは私も同意です。
結果が意に沿わなかったとしてもそこからどうするかを考えて、次の行動をしなければならない、と思うんですけども。
前にも書いたのですが上橋菜穂子さんの作品などはそういった人生の苛酷さと克服を容赦なく、かつ暖かく表現し尽くしてくださってとても励まされるのですが。
と、とことん否定…されないといけないのですか!?アライサマー!?
確かに新井様よくしてらっしゃいますけど!キャラを酷い目に。とことん酷い目に。遭わせてはりますけれども。
演劇的というか…洗脳的というか…こういうところが新井作品の怖いところです。個人的に。試されてる感というか。怖いもの見たさというか。
どんな残虐描写よりも、この「心を攻撃されてる」感が怖い。スパイダーマンか。本気で壊しにきてる感…怖いです…。だから「この人の漫画いやだ、読めない、読みたくない」という人の感想もわかる。だよねー、とサネトシ先生ばりに涼しく肯定しちゃう。
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で、こちらBuzzFeedもすごかった…内容が…
『ザ・ワールド・イズ・マイン』を撮るために、深作欣二さんは大館にロケハンにまで行ったとか、園子温さんが撮る話もあったとか。
『宮本』ヒロイン靖子についての当時の編集長とのやり取りや、甲田美沙子のモデル「通勤で毎朝会う子が、生涯で一番オーラが凄かった」、「殺される夢をよく見ていたのが、ある時から殺す夢になった」なんていう話まで。
2018年5月16日
■新井英樹が語る「宮本から君へ」 BuzzFeed News
久しぶりに園さんに会ったとき、「ワールド・イズ・マインは映画化になるかならないかで、結局流れるのが色気あっていいよね」と言われましたね(笑)
世の中に出すものには責任を持たないといけないし、表現する以上は必ず誰か傷つけるから、加害者の夢なのかなと。
映画でも漫画でも世の中自体も、本気じゃなく、インスタントでお気楽な被害者主体で進んでいるのが嫌でしょうがない。
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さらに。東洋経済オンライン。
こちらが一番の衝撃でした。これを載せたくて書いてる。
8ページにわたるロングインタビューなので、お時間のある時にどうぞ。
2017年09月07日
■「読む人の心が痛む」漫画を描く男の激情人生人気作は「20年間の引きこもり」から生まれた | 「非会社員」の知られざる稼ぎ方 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
(5ページ目)
25歳の時、出版社が主催する年末の交流会に参加した。漫画家が一堂に会する、規模の大きいパーティだ。パーティの翌日、40度の熱が出て3日間寝込んだ。次の年も、その次の年も、その次の年も、4年連続パーティ翌日に40度を超える熱が出た。
「熱の原因は、自己嫌悪だね。若い漫画家同士で飲んでると、つい大きい話をしちゃう。こんなすごい漫画描くんだ!!とか言っちゃって、それで後でひどく後悔する。あと、人にひどいこと言っちゃう癖がある。藤島さんの時もそうだけど。悪意はないんだが、ついギリギリのことを言って波風立たせたくなる。でも実は全然ギリじゃなくて、モロにアウトなことを言っているんだ。『寄生獣』の岩明均さんと会った時、内容は忘れてしまったのだけど、つい傷つけるようなことを言ってしまった」
次の日、激しい自己嫌悪に陥った。自分が落ち込むのもやだけど、人を傷つけるのはもっと嫌だった。
「本当に今でも岩明さんにも『すいません』って思ってる。謝りたい。その時、心の底から自分は加害者だって自覚して、もういっさい表に出るのをやめようと思ったんだ」
新井さんは、そうして29歳の時から外に出るのをやめてしまった。マンションから出るのは週に2回コンビニに行く時くらいで、後はひたすら事務所に閉じこもって漫画を描いた。
いっ岩明先生!!??
私が敬愛する、むっちゃくちゃ大好き岩明均先生が!!
なぜ!よりにもよって新井様と岩明先生とがこんな形でリンクするとはーーー!!
つながってらどーーー!!!
ヤメテ…あひるちゃんもう息も絶え絶え…心を攻撃されるの弱いのよ…?
あの、新井様、およそ20年間引きこもり生活だったんですって。
それもこの一連のインタビューと、それから短編集『セカイ、WORLD、世界』を読んで初めて知って驚いたのですが、まさかそのきっかけが、岩明均先生だったなんて!!
ある意味そこまでの衝撃を新井様に与える岩明先生の存在感もすごいんだが。
一体、一体なにを。岩明先生にどんなひどいことを新井様。
大好きなんですね…新井様は好きな相手にほどぐいぐいいっちゃうお人なんだと思うので、それほど大好きだったんですねたぶん岩明先生とその作品が。
難儀な人だなほんとに…
だだ大丈夫ですよ!今となってはあのアニメ化ほど酷い出来事はないですから!
『寄生獣』アニメほど酷いことはないから!
いやわからんし。それすら岩明先生は謙虚に喜んでらしたかもしれないし、冷静に受け止めてらっしゃるんじゃないかと思うし。
あの冷静沈着で穏やかな、科学者のような岩明先生ですから…。
た、たぶん大丈夫です…岩明先生がご機嫌斜めな時のうちの子のように「絶対に許さない」と魔太郎そっくりの目つきで煮え煮えしてたらやだし。
ど、どなたか、新井英樹先生と岩明均先生の対談とか組んでさしあげたらどうだろう…謝罪の機会を設けてあげてほしいような…
とっても素敵な二人だもの!素顔の心で応えてあげて!(ここでそれか)
いやあまさかの…こんなところで岩明先生の名前が飛び出してくるとは思ってもいなくて、ほんとびっくりしました。
そんなインタビュー集でした。
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関連あひる
こちらの記事の最後にあひる内リンク集あり。
■2018-09-20 [真面目に] 新井英樹短編集『セカイ、WORLD、世界』を読んで、子育て初期のしんどさをまざまざと思い出した
■2018-03-05 アニメ『3月のライオン』焼け野が原の回を見ていて、またアニメ『寄生獣』を嘆きつつ『BANANA FISH』のことも嘆いておく
■2015-03-05 寄生獣アニメ、19話と20話のネットの感想ちょいちょいまとめ、オットくんの受難
■2015-01-07 映画『寄生獣』観てきちゃった。いろいろ惜しかった。いや、やっぱダメだったかも?
■2009-03-08 寄生獣完全版「読者の問いかけに作者が答えた」が大変素晴らしい件
おお!?ここで意図せず岩明先生と新井様を並べている!
■2009-03-08 投稿者: AHIRU178 ヒストリエ5巻、岩明均と村上春樹
暴力性といえば新井英樹も、実は私の中ではこの二人の延長線上にいるのかもしれない、と思ったりしました。すいません混ぜるなキケンっていうか一緒にするなっていうかなんかとにかく怒られそうですが。
でもあの人もフラットなんですよね、視点が。下のほうで….いろんな意味で。人の感情の底辺のあたり(こきたない)とか、社会で抑圧されている人たち、している人たちの生々しい生活の様子とか(見苦しい)、犯罪とか(息苦しい)。いろいろ。どこかに肩入れするということがあんまりない。とても醒めています。あの醒めーたかんじはちょっとハルキと岩明氏に通じるものがある。といったら過言ですかね。ハルキ、岩明氏の場合はクールな醒め方だけど新井サマの場合はベース音に怒りがあって熱いから一見全然違うものに見えるけど、実は距離の取り方が似ているんじゃないかと。
この系統をたどると新井英樹の隣には西原理恵子がいる気がする(あくまで自分の中で)。粗野で暴力的で、視点が下の方を向いている、というか下の方から物事を見ている。でもサイバラは明確に、底辺の人たち(=普通の人たち)に優しいですよね、とてもどこまでも。そこが新井英樹と違うところかな。いや新井英樹も優しいんですよ?よく読むとその微量に発生しているやさしさ成分をてのひらに感じ取ることができるんですよ?そのためにはこの壺を買うとより一層の効果が得られてしやわせになっちゃえるよ☆?(そんなにも胡散臭いのか新井英樹の優しさ)
まあ何というか毒のある作家さんが好きなんだろうか単に。でも毒だけの人は苦手。新井英樹もサイバラもわりと毒だけの人扱いされがちですが(サイバラはそうでもないか?)、ゴミ溜めの中にぽつんと花咲いたみたいな生命力、の美しさを必ず描き込んでくれるので、そこにたまに神々しいものがある。この二人はぎゃんぎゃん騒がしくごった煮に描き込みまくるだけに、その瞬間はふと世界から音が消えたみたいに静かで、しばし心を奪われます。そういうところが好き。
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このアンソロジー素晴らしかったです。特に萩尾望都!!
そういえば買いそびれてるんだけど、『風子』は解説付きの文庫がおすすめ。
お!『ぼくんち』全部入りが、Kindleではオールカラーになってる!
名作だった毎回の編集さんのアオリとオクリも入ってるかなあ!?と期待したが「なか見検索」で見る限り入ってないみたい…あのページ両側の文句がまた素晴らしかったのにな。
「読者の質問に作者が答えた」、ハルキ版。
ああ、岩明均先生の絵で『ねじまき鳥』を想像すると捗るなあ…皮剥ぎのところとか…動物園のところとか…いやだけど…