うちの子が幼稚園を好きになったのは(うちの子の孤独について)

さくら (かがくのとも絵本) 長谷川 摂子 (著), 矢間 芳子 (イラスト)

はいなぜか突然お送りしてきた2年前の幼稚園卒園あれこれ。
最後にですね。

えーうちの子タロちゃん、すてきな先生やお友だちに囲まれて。さぞ充実した楽しい幼稚園ライフを満喫したかのように見えましょうや。

そんなタロー氏いよいよあさって卒園式、という日に、

TR「母ちゃん?ぼく、幼稚園のこと好きになってきたかも」

今!!??
よかったね間に合って!!!
あと2日あるね!!!

と母は腹の底から言いました。

それはもううちの子タロー氏当時3〜5歳、子供が苦手な子供だったため(今もな!)、幼稚園キライでしたね。

入学式でもさめざめ泣いてて、あまりに静かに泣いてるので園長先生に気づかれなくて「今年の入園児たちはすごいですね!1人も泣いてない!」いや先生泣いてますこの子さっきからさめざめと。そんな泣き顔がかわいすぎて卒アルにもめっちゃ入れましたけどね。

入園してほどなく、上の学年のちょっとぐいぐいくる子に追っかけられて、その子は小さい子をかまってあげたかったらしいんだけどかまわれたくないうちの子逃げて、追われて転んで絶望号泣、ということがあったんだそうですが、うちの子それをたぬきのように執念深く覚えていて(「たぬきは執念深い」というのは『動物のお医者さん』の影響です)、2年くらい言ってたんですよね。この辺で〇〇ちゃんに追いかけられて押されて突き飛ばされて転ばされたんだよ…とだいぶ盛って。だいぶ盛って恐ろしげに語ってくれてました。

他にも枚挙にいとまがなかったうちの子の恨み念法帳。魔太郎か。同じ「帳」でも『夏目友人帳』と真逆すぎる。友人帳どころかお友達じゃないリスト。

参考:魔太郎↓



魔太郎がくる!!(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

うん、うちの子み。すっごいうちの子みある。頭のハチが広いとこもそっくり。
あれ?あひるちゃんちの息子さんすっごい朗らかでいっつもニコニコしてるんじゃなかったっけ?それは2〜3歳頃までのお話ですね…そんな時代もございました(遠い目)。当時の写真を見ると驚きます。えっこんな笑顔で写真撮らせてくれてる!?5歳ごろからカメラを向けるとモノ投げてきます。パンチとかキックとかしてきます。そしてこんな魔太郎三白眼で睨みつけてきます。すんげーおこ。恥ずかしがり屋で引っ込み思案のわりに報復がバイオレンスかつ怨み念法。「怨み念法」って日常会話に頻出する単語じゃないですよね本来。変換できないし。うちでは頻出ですけども。

あのう、一応それなりに説明も試みたんですよ?世の中そんなに悪意で向かってくる人ばかりじゃないよ、たまたま間が悪かったとか、相手は良かれと思ってとか、そういうことの方が多いんだよ、と。もちろん相手が良かれと思っていても、それをあなたが嫌だと感じたのなら我慢する必要はない、むしろ嫌だって伝えることは大事。あなたを嫌な気持ちにさせようと思ってやってるわけじゃないんだから、それ嫌なんだって伝えたら相手もきっともうやらないようにしてくれるよ。それでもやめてくれない時は先生や父ちゃん母ちゃんに相談して。一緒に考えよう。とかなんとか。

言っても言ってもですね、嘘だ!絶対わざとだ!嫌な気持ちにさせるためにやってるんだッッ!!!ってうちの子。どんだけ。なんでそんな世界中が敵なの。

オットが分析するにですね。そもそもうちの子はあんまりお友達にわーっと。どーんと。絡んでいかないと。だからそれをやってくる子イコール嫌なことをしてくる奴になってしまう。自分がやりたくないし、人に対してもやらないことを、敢えて仕掛けてくるというのはタローにとっては二重に理解不能なわけで。うっ、そ、そうね。

だから、タローはそういうの嫌かもしれないけど、大抵の子供はおしくらまんじゅうとか追いかけっことか好きだからね、みんなタローも楽しいと思ってやってくるんだよね、と説明しようとしたら今度は、

TR「ぼく…みんなが好きなもの嫌いだし、子供が好きなこと大体嫌いだから…変なんだ…普通がよかったな…」

世を儚み始めたタロー氏。
そうか、そうだね、確かに周りと一緒の方が生きやすかったかもしれない。でも父ちゃんも母ちゃんもそんなタローが好きだよ。お店で走り回らないで、静かに座って本を読んでいられるタローが好きだよ。走り回っちゃう子も、走り回ることが悪いわけじゃないんだけどね、子供は走りたいものだから。タローだって父ちゃん母ちゃんと出かけてる時はめっちゃ走るじゃん。だから、子供が走り回っても叱らないで済む世の中が理想なんだけどねえ。とあさっての方向に話がいってしまう母。でも本気。子供が走り回っても叱りつけないで済む世の中になってほしい。

こちらの記事を読んでさらに強くそう思うようになりました。
『路上を子どもたちに返す』を読んで – おたまの日記

それはまたちょっと別の話なので置いておくとして。
みんなと違うことは事実かもしれないけど、だから変というわけじゃないよ。私が敬愛する漫画家吉野朔実の名言ですよ。「特殊であるということは何かの間違いかもしれないが悪いことではない」。哲学的な名作『ECCENTRICS(エキセントリクス)』の中の言葉です。さらにその後、「その代わり、自我を押し通すには覚悟が必要だよ」、と続くのだけどね。

目下タローが抱えているのはあれだよね、自分と他者とのズレ。コミュニティーから浮くのはつらいけど、さりとてそこに馴染むために自分を曲げる気もあなたあんまりないよね。怒ってばっかりだし。でもまあそういうとこは、おいおい折り合いをつけていくしかないんだと思うよ。大人もみんな抱えてるの。母ちゃんだってそうだ。
でももうちょっと生きやすくなるように、人はそんなに悪意でない、と思っておくのはいいかもしれないよ。だって悪気で向かってきてる!と思うより、悪気じゃないんだろうな、と思った方が気が楽じゃない。

そんな話を、煮えがちなうちの子に折に触れてしているのでした。
ちょうどつい先日も学校からの帰り道、満開の桜の下を通りかかりまして。まだ新しいマンションの植えたての細い桜が点々と並んでいて、その一本の幹の真ん中からぽっと芽吹いた花がちょうど手の届くようなところにあって。あら綺麗だねえ満開だね、と上を見上げていた私に、その幹の花を見つめてつぶやくようにタロー、

TR「ぽつんと離れてる…僕、この桜みたいな気持ちになるんだ…」

さ、さみしいのかい。
それは孤独感という宝物だよタロー。母ちゃんはこういう幹に芽吹いた花が好きだよ。見て、まだみんな細いし点々と離れてはいるけれど、隣に同じような桜が植わってるでしょう。何年かすれば、きっとそれぞれが立派な若木に育っているはずだよ。

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