スーツのお直しと肩パットとウーマンリブ


<歌でしか言えない 中島みゆき(Maybe収録)/amazon>


不妊治療中、義母から言われて嬉しかったこと [生殖医療の記録5]の続き、のようなものです。2017年に、日記サイトshortnoteに投稿したものを、せっかくなのでこちらにも。もう7年も前か!

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■スーツのお直しと肩パットとウーマンリブ

母から譲り受けたスーツの、お直しの話。
だいぶ昔のものだから流行りや体型にあわせて好きに直していいわよ、と母から言ってもらっていたので、まずは袖を出すことに。
そうしたらなんだか急に、袖が太すぎるように見えてきた。
なので袖を細くしてもらったら、今度は身頃がダボついているような気がしてきた。第一印象で一番魅力的だったしゅっとくびれた美しいウエストラインが…もたついているような。
そうしてウエストを少し絞ってもらったら…今度は肩が怒りすぎているような!?

1箇所1箇所はすごく綺麗に注文通りに仕上げてくれているのに、お直し屋さんに持って行って受け取るたびにそう思って、せっかくのものだから納得いくまでしっかり直したくてその都度相談したら、ベテランのおばさまも「そうなのよね、1箇所変わると全体のバランスが変わってね、他が気になってくるものなのよ」と快く新たなお直しを引き受けてくれた。

おかげでひと財産かかったけれど、すべて完璧に、これだ!!という形になってくれました。
肩が怒っていたのはごく薄いけれど肩パットのせいだったので、自分で裏地の縫い目を少しだけほどいてパットを外してみたら襟元から肩のラインが流れるように美しくなってうっとり!!

以前ネットで見かけた文章の中で、肩パットというのはウーマンリブの時代に(若い人は知らんのじゃないか?ウーマンリブ…)男に負けるな、追い抜き追い越せと社会に切り込んでゆこうとする女性たちから支持を受けた、男性との体格差を少しでも縮めて自分を強く大きく見せるためのファッション、というような説明をされていて、へえええ!と思ったものだが、この優美な曲線を隠して鎧のような無骨な外見にせざるを得なかったなんて、当時の女性たちの奮闘と葛藤を思うと切ない気持ちになった。

よしながふみの『大奥』で、状況的に仕方なく男装をするしかなくなった女性たちのため息と諦めを思い出したり。中島みゆきにも「なんでもないわ私は大丈夫、私は傷つかない」と消え入りそうな声で歌う曲がある(『Maybe』)。

まだまだ程遠いようにも思うけれど、一昔前に比べたら女性が女性性を捨てなくても仕事ができる世の中、あるいは過剰な女性性を持っているように振る舞わなくても生きていける世の中に、少しずつでもなってきているのかな。そうだといいな。

一人一人の人たちが、女性も男性も、それなりに幸せだったり、色々ありつつもそれなりに納得のいくような方向へ向かえているといいな、と思います。パーフェクトにハッピネスでもいいんですけどね!もちろん。

(2017年4月12日)
(初出:shortnote)

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