医療従事者の皆さんに心の底からエール、ベテラン看護師Mさん [まじめに][分娩記録2]


おたんこナース1[佐々木倫子]

スプートニクとライカ犬と私の排出された卵子 [まじめに][分娩記録1]

スプートニクと卵子の話、子供が乳幼児期の自分の追い詰められっぷりとオットへの不満と分析 [分娩記録1のつづき]

はい今回は分娩記録2つめです。感謝シリーズ、看護師さん編。
これも前回の記事もそうですが…産んだ2014年も書いた2017年も、こんな潤沢な医療を当たり前のように受けることができていたなんて隔世の感がありますね…。本当に、コロナ以降もこういうものを提供しようと必死になってくれている現場の医療従事者の方々には頭が下がります。我々にできることは、せめてそんな人たちに精一杯のエールを送ることだなと。自分と家族の健康に気を配ることが、きっとそこに繋がると信じて。

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2017年2月28日

医療従事者の皆さんに心の底からエール、ベテラン看護師Mさん

前のノート、超ど長文にもかかわらずたくさんのハートと励ましを本当にありがとうございました!
色々思い出したり、伝えたいなと思う話が出てきたので、少し派生話をさせてください。
産後わりとすぐに書き留めておいた文章を手直ししながら載せるので、重複部分やちぐはぐな部分があったらごめんなさい。

まずは何と言っても、医療従事者の皆さんの働きぶりの素晴らしさでしょう!
本当にすごかった。圧倒されました。死に瀕して改めて痛感する、医療従事者の方々の仕事の尊さと、そして彼らの日常の過酷さ。

妊婦健診の時からいろんな助産師さんたちと会話をしたり(産科病棟の看護師は全員助産師の資格も持っている、という総合病院での出産だった)、分娩後4日目までの新生児育児中にもあれこれ雑談したり和やかにコミュニケーションを取っていたのだが、4日目に処置室で大量出血が始まってからは、その全員が医師の一声でナースステーションからバタバタっと駆け込んできた。これまでは一人一人と個別でしか会ってこなかった助産師さんが一同に会したので、おお、オールスター総出演、とちょっとしたお得感を覚えてしまった。

それどころではない状況にそんなのんきなことを考えていた本人とは裏腹に、スタッフさんたちはこれまでの赤ちゃんを介したほのぼのなやりとりから一転、緊迫した声と機敏な動作でぐいぐいと事態を進めていく。
病院からの緊急連絡を受け、オットより一足先に手術室前に着いたというオット母は、看護師さんたちが手術室と資材部屋?をバタバタと往復している様に、事態が逼迫していく様子を廊下で感じていたそうだ。

術後は痛み止めで2日ほど朦朧と過ごし、その後意識がしっかり回復してからベテラン看護師さんの一人が部屋に来てくれた時、顔を見るなり「ああ良かった!意識戻ったのね〜!!」と涙目になってくれた。他の看護師さんたちも一様に、本当にほっとしたという感じだったので、きっとそのまま目を覚まさずに亡くなってしまう患者さんを多く見てきたのだろうな、と思った。

あの日常と非常事態の落差はすごい。それが、勤務中いつ来るかわからないのだ。私たち患者にとってはもちろん命を落としかねない出来事なんて一生にそう何度もは起こらない(と思いたい)非日常でも、病院に勤めるスタッフさんたちにとっては日常なのだ。大変な仕事だなあ、と改めて頭の下がる思いだった。

後日、「あんな大変な目に遭ったのに、あひるさんは終始冷静ですごかった!」と看護師さんたちからたくさん褒めてもらえたのだが、入院患者を励ますトークももちろんあっただろうけど、いやもう本当に、皆さんの必死さを見ていたら私だって可能な限り協力するしかないと。まして邪魔するとか。ていうかきっと泣いたり取り乱したら血圧上がってヤバイし。どうなるのか気になって見届けないとという気持ちも強かった。見届けたことをこうして報告できる今があって良かった。

ICUにいた一晩の間、ベテラン看護師さんのMさんがたびたび搾乳にきてくれたのも有り難かった。
Mさんは、妊娠中の健診の時から一番話しやすくて良くしてくれた、産科病棟の助産師係長さんだった。会う人すべてが瞬時に警戒心を解除されてしまうような、くしゃふにゃっとした笑顔の朗らかな、いかにも人の良いおばちゃん、といった人だ。

母乳は出さないと出なくなってしまうし、放っておくと乳が詰まって炎症を起こして高熱が出たりもするから、乳腺炎予防のためにもわざわざ絞りにきてくれているのだな、と、痛み止めで眠るようにしながらも思った。よく痛いと聞く搾乳だけどMさんは上手なのだろう、ちっとも痛くなくて、マッサージのようで気持ち良い。

後日聞いたら、Mさんは全部で夜中に三回きてくれたそうだ。
しかも、「こんなぼろぼろの状態なのにお乳まで絞るなんて、私の自己満足かしら…と申し訳ない気持ちだった」と言う。
そんなとんでもない、と改めてお礼を言ったところ、Mさんは、ひとつひとつ思い出しながらといった感じで教えてくれた。

その時にあひるさんがね、
一度目は「気持ち良いです」、
二度目は「こんな時間にすいません」、
三度目は「子供は元気ですか」って言ったの!
自分がこんな状態なのに、私の心配や子供の心配をするなんて、他人に対して気を使いすぎる!そんなに無理しないでいいのよ!

えっいやいや、私としては麻酔のおかげで痛いとか苦しいということはほとんどなかったし、搾乳も実際気持ち良かったから素直にそう言ったまでで、痛いのに無理して気を使って言ったとかじゃないのですが…。
三回目のことは確かに「ここは一応母親としては子供のことを気にするべきかな?」とかちょっと思ってあえて訊いたところもあるが、でも自分のことより子供を気遣うのは母親としては普通なのでは?と思わないでもない。

オットと母に関してもMさん激賞。
手術直後の家族への説明の場にMさんも立ち会ったのだそうで、担当医師T先生の説明に対してオットと母がいちいち非常に冷静に応対し、的を射た質問を繰り出し、果てはオットが命が助かる保証や後遺症が残る可能性などについて質問する時に「そちら側としては明確には答えにくいとは思いますが」と前置きしていて、こんな時に私たち医療スタッフ側の事情にまで気を回した言い方をとっさにするなんて、すごすぎる!!と褒めちぎっていた。

母もまた、数年前に自分もここで同じ子宮摘出の手術を受けて、その時は退院後もなかなか傷が癒えなかったり、排尿障害が起こったりずいぶん不自由な思いをしたがその辺は今回はどうなのか、退院後も必要があれば通院するなどきちんと継続したケアをしてもらえるのか、というような非常に突っ込んだ、私たち(スタッフ側)にとっては手厳しい質問をされたと。
とにかく二人とも冷静で上品で、もう素晴らしすぎると。
ありがとうございます。私もそう思います。

これも入院中の患者への励まし増量トークな部分もあったとは思うけれど、でも正直…普通のことのような気もする…。自分の友人たちを思い浮かべても、ここで取り乱したり、ドラマなんかで見聞きするような「医者に食ってかかる」みたいな言動をしそうな人って思い付かないのですが(ところが退院後しばらくしてから思い出した、あっうちの元家族!父母兄、あの人たち散々やってた!アッハいたわ近くて遠い真っ暗血縁者☆と思った。妊娠も出産も知らせていなくて本当に良かったと心の底から)、それをそんなにも褒めてくれるということは、八つ当たりされたり辛く当たられたりってそんなによくあることなのですか…?とつい聞いたところ、Mさんは地蔵のような表情でゆっくりと深く頷きながら、

「しょっちゅうです」

と言った。
お疲れ様です。本当にお疲れ様です。

入院中連日きてくれて、身を起こせない私に代わり、くにゃくにゃとたよりない新生児のおむつ替えやミルクをものともせずこなしてくれたオットとも何度かこの話をした。

感情的になることを、一概に「悪い」と言い切って責めてしまうのは良くないのかもしれない。人によってキャパシティーには差があり、耐えられない人には耐えられない、それを人にぶつけてしまうことを我慢できない人は我慢できない。それだけのことで、単純に善悪や優劣で順位をつけるのは傲慢なことのようにも思う。と、吉田秋生先生の名著『海街diary』に描かれていてそう思えるようになった。

ただ、そういう非常事態に直面した時、子供がどう考えるか。非常事態に限らなくとも日々の様々な場面の中で、どういう振る舞いを恥ずかしいことだと思うのか。相手に対しどう想像力を働かせ、どう対処するのか。そういう判断基準や価値観はきっと置かれた環境の中で身につくのだろうから、少なくとも私たちの考える良い環境、というものをこの子に用意してあげたいね、と。
「人を育てる」ことの意味や重要性が、自分たちの中で少し具体的になった出来事だった。

退院間際の頃、産科病棟の一番偉い人、助産師長さんが回診にきてくれた。50代後半くらいだろうか、小柄で一見するとあまり目立って印象に残らない静かな佇まいの女性だったが、いあわせた母と二人で、命を救ってくださって、入院中も何くれとなく良くしてくださって本当にありがとうございました、と頭を下げたら、

「当然のことをしたまでです」

と、丁寧な発音で穏やかに言ってくれてしびれた。プロフェッショナルの言葉だ。最高にかっこいい。

(2017年2月28日)
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はい、ここから2023年のあひるちゃんです。ん〜しびれる。ほんとに。この係長Mさんと、意識戻ったのね〜!と泣いてくれたもう1人の係長さんは、実は妊婦健診期間にも登場します。結構重い役割で。

そしてね、これを読み返しても私改めて思ったんですけども、Mさんの仰る「気を遣いすぎ!!」って…当たらずとも遠からずというか…いや当たってる。きっと当たってたってことですよね。私に自覚がなかっただけで。人に気を遣うことがデフォすぎて自覚がない私の危うさに、きっと気づいて心配して、労ってくれていたんだろうな。さすがベテラン看護師さん…9年越しのありがとうを送りたいです。涙が出てきた。いろんな人に支えられているなあほんと。Mさん気がつきましたよおかげさまで。ここからが長いけど、きっと大丈夫です。


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