母は私を憎んでいない(元家族の暗い話と救いの話3)[まじめに][機能不全家族]



(※機能不全家庭、母親との確執と、ちょっと非科学的な不思議系の話になっちゃうので苦手な人はご遠慮ください)

1はこちら(2018年の出来事)
2021-06-16 私の中に母がいる(元家族の暗い話と救いの話1)

2がこちら(2019年の出来事)
2021-06-17 もしも私が幼稚園児だった頃の母が

さて、ここから本編です。いよいよ登場する、ドラマ『大豆田とわ子』最終回で印象的だったセリフ。
2019年3月に、別の日記サイトに投稿した記事です。

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3、母は私を憎んでいない

幼稚園で仲良くしているママさん何人かとワイワイ話をしていた時のこと。
前の記事にも出てきた、母親との関係が悪くてしんどい思いをしてきた、というママさん、なんだけど話す内容がいつもかなり深刻なのにトークがうますぎて毎回誰もが笑い過ぎてお腹痛いし果ては帰宅してからも思い出し笑いが止まらなくなるほどの(私だけかと思ったら他の人たちも言ってた)これはもう話術の才能としか言いようがないケンちゃん(仮名)、もう1人は北海道出身の、私より干支が一回り下で、顔はフランス人形のように端正で可愛らしくて中身ヒロアカオタクでいつも的確かつ面白くあったかい受け答えをしてくれる元気印のマコ(仮名)と、最後の1人は沖縄出身で、仕事が子供関連の福祉関連だからか元々の性格か、おおらかで懐が深く、菩薩のようでもありサイバラが描く肝っ玉かあさんのようでもあり戦隊ヒーローオタクでもあるカナさん(仮名)と、すぐ泣いちゃう涙腺緩過ぎの私の4人で。

まずはケンちゃんの旦那さんとのフェスの話を聞いてたんです。フェス??
ケン「大ゲンカのこと!!」
フェス!!このセンス脱帽すぎる!!
そのフェスの話がまあひどくて。旦那さんだいぶ酷いなそこまでとは。表現がいちいち面白すぎるからみんな爆笑しつつも内容自体は全然笑い事ではない。写真とっとけとか診断書もいっとけとかハードなアドバイスが飛び交うレベル。

そんな話をあれこれしているうちに、ふんふんと相槌を打ちながら聞いていたカナさんがふいに、

カナ「なんかさあ、どうもさっきから、ケンちゃんの後ろにお母さんが見えるんだよね」

えっ。

ケン「えっ何それ!?生き霊!?」

カナ「うーん、なんていうか、お母さんの影響をすごく強く受けてるなあ、っていうのがね、伝わってくるのよ」

ケン「えええ!?私カナちゃんに話してないよね母のこと!?」

えええ!?話してないの!!??

カナ「なんかねえ、こう、お母さんがすごく、手を伸ばしてきてるのね、ケンちゃんの後ろからこう、」

わああああああ!!!
わああああああ!!!
一同わあああああ!!
ですよ。
話に聞いたことはあったけど、こういうの目の当たりにしたの初めてなので鳥肌たちまくり。

カナさんいわく、沖縄ってけっこう多いんだよと。シャーマン的な人が多い土地柄だと。確かに聞く。聞くけどすごいな。
昔はメールで占いというか、人の相談に乗ったりもしていたんだそうです。えっすごいプロじゃん!ていうかメールでわかるの!?うん、文章からね、なんとなく、その人と繋がってる人とか出来事とかが見えてくるんだよね。ええええ、すご…。
でもじゃあ、メール書くのも気をつけないとなあ。自分が愚痴ってスッキリ、じゃなくて、そういうのを感じる人にもそうでない人にも、やはり負のエネルギーとか、鬱屈したものを押し付けてしまっていることになるんだなあ。当たり前のことだけど、視える人から言われると改めて気づいた、気をつけよう。と思ったり。

カナさん、ケンちゃんにもっと見て!!と言われ、しばらくじっと見つめて、うーんそうだねえ、お母さんすごい強い人だよね、こう、支配的な感じ。そうそう!そうそう!お父さんは優しかった?うんうん!などなど、しばらくそんな話をしたり。
実は私も母親との関係きつかったんだよね、とカナさん。そうなの!?私もだよ!?(←私)みんなそうなの!?こういうの多いの!?えっわっ私あんまりそういうのなくてごめんなさい!(←マコ)いやいや謝るとこじゃないから!むしろごめんねこんな闇の深い会に呼んじゃって!(←ケン)闇の深い会!!

その後マコが私も見てください!ん〜〜マコはお父さんだね、後ろにお父さんがいる。あっハイ、父の影響強いと思います!そっかあマコはほんと健全!って感じだよね、ごめんねほんとこんな闇の会に!闇の会!などなどわあわあ盛り上がったりなどし(そしてその後マコもむちゃくちゃ重いの抱えてたことが判明したりなど。みんな色々あるよね!)お昼も食べて、朝から4時間くらい喋り倒して(2019年のコロナ以前の話です)(朝幼稚園に子供たちを送り出して、その足でケンちゃんちに集まってわあわあやってたのです)。

この日は朝からの雨が、珍しくずっと降り続いている日で。
解散前に、もし今度よかったら私のことも視てくれる?とカナさんに聞いたら、いいよー、と言ってくれていたのですが、帰り道が一緒だったので一緒に傘に入りながら(沖縄はあんまり傘ささないんだよね、朝は小雨だったし)すぐそこの私の家まで歩いていたら、
「よかったらこれから視ようか?」
えっいいの!?大丈夫疲れてない!?こういうのやったの久しぶりって言ってたし、4時間もめちゃめちゃしゃべったし!
「大丈夫大丈夫〜」

ということで、カナさんにあがってもらって、視てもらったのです。

外は雨のそぼ降る、少し薄暗い静かな午後。来客予定じゃなかったから雑然とした居間を慌てて申し訳程度に片付け、ざっとトイレの掃除をしたり、紅茶をいれたりチョコレート出したりバタバタしつつ、ようやくテーブルに向かい合って座って。

じゃあ始めるね。
初めに顔を伏せ、合掌のように合わせた両手の人差し指で鼻を挟むようにして、しばらくじっと息を整えるカナさん。儀式みたいなもんで、これやると集中しやすくなるんだよね。
それからじっと私の顔、というより、少しずれた背後を眺めて、
うーん、やっぱりお母さんだねえ。
そう。
母との折り合いが良くないことは、あまり詳細ではないけれどちらちらと話したことはあった。
うん。うーんでもなんか、そんなに嫌な感じじゃないなあ、心配してるのかな?こう、やっぱり手を伸ばしてきてるんだよね、〇〇ちゃんの方に。
前にいる誰かに触れないように、片手で抱きかかえようとする仕草をするカナさん。

確かに強いねえ。支配的な感じもするんだけど、でも、うーんなんて言うんだろう。

少し言葉を探した後、

あなたのことを憎んではいないよ。幸せになってほしいって思ってる。

と、穏やかに私を見つめながら彼女は言った。

こうして書いてみると、陳腐に聞こえるだろうか。
だけど私はその時、すごく、ほっとしたの。

私はずっと、母から嫌われている、憎まれていると思ってきたから。
私は幸せになっていいんだろうか。
いけないんじゃないかってずっと思ってきたから。
いや、彼女に言われて初めて気づいた。そう思ってきたことに。
そうだったのか。私は、幸せになるのが怖かったんだ。ますます母から恨まれるような気がして。

母は父と結婚して不幸だった、と事あるごとに私に言っていた。あんたたち子供を授かったことは後悔していないけれど、それでもあんな横暴でお金をろくに入れてくれないお父さんなんかと結婚して辛い思いをたくさんした、だからあんたは子供なんて産まないでいいから、とにかく優しい人と結婚しなさい、子供なんか産まなくても、夫婦2人で仲良くやっていければそれが一番の幸せなのよ。それから学をつけて職を持ちなさい、そうでないと女はいざという時に逃げられない、お母さんがそうだった、だからお父さんは女に学なんて必要ないって言っていたけれどお母さんがあんたの塾の費用なんかを全部出したのよ。
母はそんなことも言っていた。

そうかあ、お母さん、不器用な人だったんだね。あなたにさ、きっと自分と同じ道をたどってほしくなかったんだね。
だからって道を決めつけたり、あなたの気持ちを無視したりしていたのはやりすぎだし、間違ってる。

だけどね、大丈夫。お母さんは、あなたのことを憎んでないし、心配してる。やり方は間違ってたけど、ちゃんとあなたの幸せを願ってくれてるよ。

あなたは幸せになっていいんだよ。もしもこれから不安になることや、気持ちがざわつく時があったら、この辺、右肩のあたりだね、この辺に向かって(右肩の後ろ上方あたりに)大丈夫だよ、心配しないでいいよ、私もう幸せだから、今うまくやってるからもう大丈夫だよ、って言ってあげな。心で思うだけでも、実際声に出してもいいよ。

今カウンセリングに通ってるなら、私がこれ以上あんまり色々言わない方がいいと思うんだけど、カウンセリングではインナーチャイルドっていう言葉出てきたかな、子供の頃の自分が、心の中にずっと残ってるって。沖縄のシャーマン的な言い伝えみたいなものの中にも、他の世界各国の言葉の中にも、言い方は違うけど世界中に必ずあるんだよね。心の中のもう1人の、本当の自分、みたいなもの。お母さんというよりは、それに向かって語りかけてあげるような感じかな。安心させてあげるの。

それから、父もいる、と(2019年当時はまだ存命でした)。お父さんとお母さん、両方がね、あなたを守るみたいに手を伸ばしてる。お父さんは後ろから、お母さんは前からかな。お母さんは心配する気持ちが強すぎて、立ちはだかっちゃってたのかもね。お母さんの方が強いんだけど、お父さんはお父さんなりに、あなたを守ろうとしてくれていたんじゃないかなあ。すごく愛情を注いでくれてる感じがするよ。

そんなことを、彼女は言ってくれた。
別に、特殊な能力がなくたってこのくらいは言えるのかもしれない。
これまでにも似たようなことは言われてきた。親との不仲というものを理解しない人たちから、「子供を愛さない親なんていない」「きっとあなたの幸せを願ってくれていたはず」「そんなに心配されるなんて、愛されてたんだね」あるいはそれこそスピリチュアル的なものに即して「子供がなかなかできないのはお母さんとのわだかまりが自分の中で解けていないからじゃない?心から望めば絶対叶うはずだから、思い方が足りないんだよ」はっきりとそう言われたことすらある。それらの言葉はまったく入ってこなかった。入ってこないどころか傷をえぐるものでしかなかった。私の苦しみを無視し、否定し、責任転嫁するもので、ただただ悲しくなるばかりだった。

だけど、この時の彼女の言葉は、とてもまっすぐに、ダイレクトに響いた。
初めて言われた。「お母さんはあなたを憎んではいない」なんて。
そりゃ普通誰も言わないだろう、こんなこと敢えて。
超常的な現象にかぶせて初めて、伝えられること、伝わることもあるのだと知った。スピリチュアル的考え方が孕む傲慢さはどうしても好きになれないけれど、自分にとってこれは違った。何より、話してくれた目の前の彼女が、私を、ケンちゃんを労ろうと、これまでの辛さも含めて理解し、受け止め、その上で温めようとしてくれている言葉だとわかったから。

母は私を憎んでいない。
私は幸せになっていい。
いや、もう今幸せなんだ。
だから大丈夫。私は大丈夫なんだ。
なんの心配もいらないよ。
そうなんだ。

うちの子に、寝る前にいつも言っている言葉がある。
父ちゃんも母ちゃんも、あなたのことが大好き。
ゆっくりと、おまじないみたいに。すっかり電気を消した部屋で、しばらくお布団で絵本を読んだ後で、眠くなったうちの子がもぞもぞと私の懐に入ってきたら、身体をきゅっと腕で包んで、とん、とん、とてのひらで背中をそっとタップしながら、

父ちゃんも母ちゃんも、タローのことが大好き。
父ちゃん母ちゃんの、だいじなだいじなタロー。
父ちゃん母ちゃんの、たからもののタロー。

時々、知ってた?と訊いてみる。父ちゃん母ちゃんがタローのこと大好きだって知ってた?
腕の中で、こっくりと頷く小さな頭。
そうかあ、知ってたんだね。
あなたは知ってたんだ。
私は知らなかった。
私も、愛されていたんだって。

(2019年3月)
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最後に4編目がこちら。
2021-06-24 「母の愛」という箱(元家族の暗い話と救いの話4)

あなたがだいすき
鈴木 まもる
ポプラ社
2002-04-05


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4 Replies to “母は私を憎んでいない(元家族の暗い話と救いの話3)[まじめに][機能不全家族]”

  1. あひるさんへ
    ブログ読ませていただきました。私がブログ上で知っているあひるさんは、料理や手芸が上手で、面白い(失礼!)旦那さまと、かわいい息子くんのいる、子供のいない私からしたら素晴らしい人生だなあ。などと思っていました。すみません。

    母の呪いはどこの家庭でも何かしらある、というのは真理ですね。
    私もご多分に漏れず母のことは奥歯に物が挟まったような違和感をずっと持っています。三人姉妹の末で男の子を期待されて「お前が男だったら」と言われ続けてきたので。

    今はもう親というより「面倒をみるべき老人」として見ているので、だいぶ楽になりましたが。

    あひるさんの告白を読んで私も自分の奥の方の気持ちを再認識できて、ちょっと救われた気持ちになりました。ありがとうございます。

  2. 日月さん
    読んでくださってありがとうございます…!長年いらしてくださっている日月さんからそんなふうに言って頂けて、とてもほっとしました。すみません露悪的な内容で…でも救われた気持ちと言って頂けて、嬉しいです。

    親というより「面倒をみるべき老人」、ということは面倒を見てらっしゃるのですよね。本当に立派だと思います。私の友人にも何人かいますが、色々なわだかまりを抱えつつも、子供に屈託なく頼ってくる親の面倒を見ることにしている人たちを私は尊敬しています。日月さんのことも陰ながら応援しております。いつも興味をそそられる書評の数々、密かに楽しみにしています!

  3. あひるさん
    こんな感想でよかったのか…。書いてからうんうん反省していたのですが、受け止めて頂いてありがとうございます。

    面倒は主に姉が見ているので私は時々、話を聞くくらいです^^;母は言動を自分の都合のいいように捻じ曲げる人なので、そういうのをだいぶ受け流せるようになりました。

    有川浩さんの小説で「親を諦める」というセリフがあって、私はそれがとてもしっくりきました。上橋菜穂子さんも「あきらめることは決してマイナスではない」と書いてましたし、諦めることで新たな発見や関係性がつくれることもありますしね。

    なんだかんだありますが、こちらも元気にやっております。ブログ上ではありますが、こうしてあひるさんと長いお付き合いができてうれしいです。これからもよろしくおねがいします。

  4. 日月さん
    書いてからうんうん反省…!そんなふうに頭を悩ませてしまって恐縮ですが、でもありがとうございます。

    お姉さんが主に面倒を見てらっしゃるんですね。それはそれで日月さんの側にも気苦労があるし、その「話を聞く」のがしんどかったりもしますよね。本当にお疲れ様です。「言動を都合のいいように捻じ曲げる人」…わかる〜。わかる〜。

    「親を諦める」、その諦めるまでに、そして諦めること自体に、長い混乱や癒えない苦悩、終わらない葛藤があって、どうしても理不尽だなと思うんですよねえ。そんな私はもしかしたらまだ諦めきれていないのかもしれないです。
    本当に、こちらこそ今後もよろしくお願いします。

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