NHKドラマ10『大奥』医療編完結…嫣然サイコパス治済から鬼畜の家慶へ

<大奥 11 よしながふみ >

ふおおおおお。皆さんご覧になりましたか…NHKドラマ10大奥ご覧になりましたかあああ。
わたしく原作勢、治済の最期に震える。
いや、原作とほぼほぼ一緒なんですよ?展開は。でも…細かいところが少ぅし違うの…なんと所によっては原作よりさらにエグかったり…やっぱり原作の方がエグかったり…

せっかくなので原作との違いや、見ていて思ったことなどをこの際わーっと書いていきます。まだドラマ化されていない今後の展開に関してはできるだけ書かないでいきます。

いやいやもうこれ本当に…。由紀恵治済凄かった…凄かったですね!!
美しいのに醜悪…
ちゃんともっちりむっちりした、原作の治済感も再現されてて。

ぱっと思いつく、ひい、と思った改変は。
位牌。
ドラマオリジナルです。夥しい数の位牌…ひいいい。禍々しすぎィ。
原作では、実の姉たちや実の母を次々手にかけていく回想シーンが挟まれますが、それをあの、13日の金曜日かバイオハザードにでも出てきそうな邪気溢れる祭壇でさらりと表現してしまうドラマ班…ヤメテ…(褒めてます)

それから…武女(むめ)、サトエリちゃんが美しさを封印してひたすら雇い主に怯える手駒を演じ切った武女に(畳を汚してしまいました!を採用してくれて嬉しいいや嘘嬉しくはないですすいません)、毒入り茶を飲ませた時の由紀恵治済、めっちゃ目キラッキラ…!!ど、ドラマオリジナルです…!原作ではただいつものようにうっすら微笑んでただけなのに!明らかに興奮しきっとる由紀恵。あかん。子供を膝に抱きながらNHKでする表情じゃない。

しかもその膝の上の子供だった家斉これ、恐ろしすぎて記憶から消去してたんやん。トラウマじゃん。これもドラマオリジナルと言って良いと思います。さりげなくそういうことにして、家斉のショックの大きさと、治済の異常性を強調するドラマ班さん…。

それから…御台が事の次第に気づいて家斉にとりすがる場面は、できたら原作そのままの台詞回しでいってほしかったかな、とちょっと思いました。ドラマでは「あなた将軍なんだからできるでしょそのくらい!」とわりと現代風に食ってかかっていたのですが、「鬼畜じゃ、鬼畜の所業じゃあ!」「あの方は御子を間引いているのです!」ていう、原作の時代がかったセリフの方がよりおどろおどろしい雰囲気出たかなって。

あと、家斉のお付きの、元大奥総取締の松方。彼は最初上様に対して微妙に含みのありそうな様子だったのもドラマオリジナルですし、上様に協力して密かに人痘接種(熊痘接種)を推し進めるつもりなのだと明かされてほっとしたけどその理由が「男が増えれば今のように女たちを偉そうにのさばらせることもなくなる」という、割と私利私欲というか、「女に指図されるのが我慢ならぬ」という…現代でもあるあるな男の歪んだプライドだったのかよ…という残念な背景が、ドラマオリジナルで唸りました。そうですよね、いろんな腹づもりの人おるよね。みんながみんな世のため人のためじゃないよね。そんなリアルさをさりげなく盛り込むドラマ班さん…。

そして…いよいよ由紀恵治済を倒すラスボス戦ですが…いや〜やってくれた…!
治済、ずっと意識ある…。
ドラマオリジナルです…。

倒れた瞬間から、原作ではもう白目むいてて意識があるようには少なくとも見えない。でもドラマ版では…由紀恵治済はずっとめっちゃ御台や家斉を睨みつけてる…身体が利かなくなっただけでこの人めっちゃ意識ある…怖い…。退屈退屈、と人生に倦いて戯れに人を弑しまくっていた治済が、動かない肉体という牢獄に囚われてその後の余生を送るという…。原作では「その後16年間、77歳まで生き続けた」とあります。なんという…。ここは脚本の森下佳子さんなのか、それとも演出の方かなあ。いやあ、治済に対する「貴様には地獄すら生ぬるい」感がみなぎっていて、感服致しました。

でもね?
その、倒れた直後の…
原作でもほぼ同じ展開なんですけど。
御台とお志賀から、子供たちの仇を取るために二人で結託して治済を討ったのだとすべてを聞き、お志賀なんて目の前で血を吐いて死んだのに、それでもなお母を助けるために「まだ息がある、おさじを呼んでくれ!」と言っちゃう家斉…

これね〜〜。原作でもそりゃないぜ家斉!!!って思ったものです…
だってさあ…これで治済回復したら御台絶対処刑されるじゃない。いいの!?それで!あんた!家斉!!って思いますよね。
ここまできて手のひら返すのあんまりじゃない…?御台は気のふれたふりをしながらもずっと家斉を支えてきたのに…それでもこんな鬼畜な治済の方が大事なんか。ただ母親だからなんていう理由だけで…。あんまりじゃありませんか…?と思っていました。

治済が倒れる直前に、家斉が刀に手をかけるシーンもありました。それはドラマオリジナル。ただ私、そこで家斉もしや自害する気?って思ったんですよね。でもそうじゃなかったみたい。治済を斬ろうとしたけど思い切れず…諦めて毒入り羊羹を食べようと…したところで治済に毒が回って急展開、となるわけですが。

刀に手をかけて、治済を斬ろうやというシーンまで入れたのに、それでもまだ息がある!おさじを呼んでくれ!に収束させてしまうという…ドラマ版の方がより一層、家斉の不甲斐なさというか…弱さが際立つ演出になっていました…。言うて自分で呼べや。なんで妻に呼ばせんねん。

そこにさらに、御台のセリフが。原作では寂しそうに微笑むだけで、さっと立ち上がって「誰か(たれか)ある!おさじを!」と毅然と声を上げるのみでしたが(ドラマでは「だれか」だったけど、できれば原作のまま「たれか」にしてほしかったなー)

ドラマ版では、ふっと微笑んで「あなたはそういう人…」というセリフが添えられていまして。
そういう優しい人、情に厚い人、情にもろい人、弱い人…いろんな意味にとれるなあ…と思いました。

それからTwitterで見かけた考察なのですが、「御台は結局、最後の最後で治済を断ち切れない家斉の弱さを判っていて、だから家斉にも計画を隠し通したのだろう。そういう意味でははなから夫婦としての信頼関係は破綻していたのでは」と書いてらっしゃる人がいて…うおおうそうですね…その通りだ…。
まあ、母殺しの大罪を家斉に犯させないため、という部分もあったかもしれないけど…大半は弱さによる不信だろうなあ…しっくりくる…

それなのに、原作では後の家斉が「母は退屈しのぎに孫をあやめる人でなしであった、妻は長いことわしをたばかった、おなごは嫌いじゃ」って。家斉!!そりゃないだろ!!治済と御台を並べるな!!と思ったり。

家斉役の中村蒼さんが素晴らしかったです。最初の頃のなんにも力を持たない、ただ育ちが良いだけのボンボンな気の抜けた表情から、志を持って赤面疱瘡撲滅に向けて動くやる気に満ち溢れた様子(ほんとに踊ってたのかわよ)、その後のすっかり人間不信になってしまった冷徹な上様と、次々と変わってゆく家斉を見事に演じ切っていらした。他のキャストも皆さん本当に素晴らしかった。

(ちょっと追記)
治済の有名な(?)男が!と息子を罵倒するシーンですが、実写を見て改めて、治済があそこまで地を出したのって家斉に対してだけでは、と思いました。親子の甘えなのか、あの治済ですら。あんな形だけども。だからこそ、家斉もあんな母だけど母としてすがる気持ちを捨てきれなかったのかなと…ほんとは家斉なんにも悪くないんですよね!母を母として慕ってるだけだもの…その母の中身と所業が問題だったわけだけど…。あと治済も別に親子の情とかじゃなく単に家斉を軽んじてただけかもしれないけど(泣)物の数に入れてないだけ。
(追記終わり)

その後…。
熊痘接種の療養所を開くことになった黒木殿や伊兵衛たちが、「源内さんの予言の通りになったなあ!」と笑い合っていた場面もドラマオリジナルです…!
あの、あの源内の最期の言葉を。「わかった!当ててみせようか」を…こんな形で引き継いでくれるなんて!!あの時どれだけ思ったことでしょう、もうこのドラマ版では源内の予言通りの展開にしてよう、青沼殿も田沼様も元気でめでたしめでたしでいいよう、と泣いたものですが…そうか、あの時のあの言葉は本当に叶ったのだなあと…泣く…泣くしか…。

そして!!
その余韻をぶった斬って、家慶登場!!大奥史上、いやよしながふみ史上最悪の害悪と呼ばれる家慶を…髙嶋政伸さん!!
似てる!!(すいません)
しかも…キンモ!!キモー!!
ツイッタランドでもキモいキモいの大絶賛でした。髙嶋政伸さん大好きです最高に気持ち悪いです!(褒めてます)気持ち悪いキャラをやらせたら天下一品の政伸!(褒めてます)ましゃのぶ史上最も気持ち悪い!(褒めてます)皆さん大絶賛の嵐でした。NHKドラマ10大奥のキャスティングは本当に見事…。

次週からはましゃのぶさんの気持ち悪さと、そこに描かれる醜悪な性犯罪に目を覆いたくなる展開ですが…観ます…。

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関連リンク

Twitterで見かけて唸った、「吉宗の3人の孫が『人の気持ちにイマイチ疎い』を最悪の形で受け継いでいる」という解釈…ooh…

確かに…この3人みんな吉宗の孫かあ…
家治(田沼様に食ってかかる演技が圧巻でした…)
定信(安達祐実ちゃん本当に素晴らしかった!!)
治済(由紀恵…ちっちゃい飲むヨーグルトのCM見ると無事ハラハラするように。子供に!何か飲ませてるううう!!)

おお!気になっていた慶喜、大東駿介さんかあ!
『大奥』新キャストに平岩紙、中村アンら 大東駿介が一橋慶喜、原田泰造が西郷隆盛に|Real Sound|リアルサウンド 映画部

『大奥』蓮佛美沙子&佐津川愛美の命をかけた“反撃” 男女の立場がまたもや逆転する|Real Sound|リアルサウンド 映画部

赤面を恐れることなく動けるようになったことで、男女の立場はまたもや逆転する。男子による家督相続が広まり、才ある女たちが表に出られなくなったことは皮肉としか言いようがない。また、その中で治済から化け物の血を引いた徳川家慶(髙嶋政伸)のように、今度は立場ある男が女を食い物にする状況も生まれてくる。だが、忘れてはならない。人を絶望に陥れる者もいれば、そこから人を掬い上げる者もいるということを


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原作の来週あたりの話です…
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きの何:新連載単行本
吉田秋生『海街diary』とよしながふみ『愛すべき娘たち』


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