一つ前の記事の続きです。
■2026-01-10 伊藤詩織さんの映画『Black Box Diaries』、すごく面白かった、すごく。 [フェミニズム][まじめに]
そうそう、パンフレットがものすごく充実した内容でした!(後述)。映画をご覧になった方にはもちろん、映像は辛くて観れないかもしれない…という方にはパンフだけでも伊藤詩織さんや制作チームの思いを受け取れるのではないかと思います。
以下、関連リンク集。
世間で取り沙汰されている、いわゆる「映画の問題点」論争の中で、私が信憑性があるな、同意できるな、と思ったのはこちらの方々の文章です。どちらもすごく長文です。
2025年12月21日
■伊藤詩織さんの映画をめぐる会見について、弁護士として考えたこと 弁護士 冨増四季 note
↑こちらの弁護士冨増先生、数週間ぶりに読みに行ったらコメント欄がアンチからの揚げ足取りや重箱の隅になっていて、その一つ一つに丁寧かつ真摯にお返事してらしてメンタルが心配…しかも「過去のコメントへの『スキ』も応答の重みづけの参考にさせていただきます」とまで…真面目な方だな…。そんなの気にしないでいいのにと思いつつ、私も先生の誠実なご返答や賛同できるコメントにひそかにハート押しときました…投票…。
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↓こちら実に3万字以上!!すごいです!!でもぐいぐい読まされました。圧巻。この方一体何者…と思ったら、お肉屋さん!!カッコ良すぎる…!!
2025年5月7日
■待っている間に。 ー伊藤詩織氏の元支援者達の批判における倫理的懸念ー 井上不二子 note
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それから、本編で気になったドアマンの証言について検索して見つけた2つの記事。
いずれも2019年末のもので、民事訴訟の時期。
まだ映画は公開されていないのですが(引用元も伊藤詩織さんの著書『Black Box』の方)、時を超えて映画の内容を補完しているのが興味深い。
2019年12月25日
■【伊藤詩織さん事件】現場ホテルのドアマンが目撃した山口敬之の「連れ込み現場」デイリー新潮
デイリー新潮ではあるけども、陳述書を元にした記事のようで非常に詳細に思える(陳述書って請求すれば誰でもみられたりするのだろうか…?)。
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こちらは同じドアマンの証言についての弁護士さんによる解説。
2019年12月30日
■伊藤詩織さん、ホテル側「重要証言」知らされず・・・捜査機関の「ブラックボックス」問題 出口絢 弁護士ドットコム
2つの記事に書かれているドアマンの証言の詳細を映画には入れなかったのにも、制作側としての意図があるのでしょう。私が想像するのは、ドアマンの証言の証拠としての重要性(客観性)もさることながら、伊藤詩織さんにとってはああして申し出てくれたこと、実名で構わないと言ってくれたこと、彼女自身になんの保証も見返りも求めず協力したいと言ってくれたことが(冗談と言い訳しながら結婚して養ってくれるならと言ってくる捜査官Aとの対比…)、彼女をどれだけ救ったか(主観、彼女の視点、感じたこと)。
この映画ではそここそを描きたかったからなんだろうな、と。
一部の批判に、客観性がない、両論を並べていないからジャーナリズムとして成り立っていない、というものがありますが、この映画は、「彼女が何を感じたか、どう闘ってきたのか」を丁寧に追っている作品であり、それで十分完成していると私は思いました。
両論を並べて「あなたはどちらが正しいと思いますか?」と問うような形は、観る人にジャッジを迫る圧を帯びてしまう。そもそもそれだと性被害に遭った人やサバイバーは見ることができなくなってしまう。この描き方でも観れない人、辛い気持ちになる人、私のように尻込みする人は多いと思いますし、そこに対しても冒頭で無理しないで、と気遣うメッセージがあります。
「性被害に遭っても、笑っているし、楽しくお酒飲んでいるし、シャツの襟元のボタンは開けて着ている」
被害者として立ち向かう、闘っている部分だけでなくその合間合間の、彼女の数年間のうちの、何気ない日常の暮らしの部分も含めて映像としてただただ提示されることに、大きな意味があったのだと。
闘っている部分、笑っている部分、だけでなく、泣き、傷つき、フラッシュバックに怯え、恐怖や不安を吐露する姿もあります。それでも身支度を整えてバタバタと出掛けていく、そうやって生きてゆく。
今ふと、私がここに何でもない日々の小ネタと、16年不倫被害と長年のモラハラの衝撃や痛みを並列に書いてしまうのと似ているな、と思いました。マーブル模様に。だってそれが私の日常で、生活で、人生そのものなんだもの。切り分けることはできない。
こういう明るく穏やかな日常のさなかに、裁判や、弁護士とのやりとりや、事件を詳細に思い出さなければならない苦しみが否応なく差し挟まれる、その残酷さと理不尽さが、日常パートによってより浮き彫りになっていました。ほんの少しだけ似た体験を垣間見た者として、ここまでの記録を撮り続け、それを2時間に凝縮し、作品として世に出した労力と強い意志に、本当に頭が下がります。
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と、ここでようやくパンフレットを読み進めたらもう内容の充実っぷりがすごい。文字、情報のボリュームがすごくて読み応えがありすぎる。まだやっと半分くらい。
あれやこれやの疑問が解けました。例えば先ほどの記事に書いたような、エンドロールで「編集」の項目には山崎エマさん一人だったけれど、実際は何人かが担当したこととその理由、結局最終的にほとんど山崎さんによるものが採用された流れ、など。
事物を写したカットの演出についてや、伊藤さんがカメラを見ながら話しているカットはご本人は最初は入れないほうが良いと思っていた、とか、すっごく詳しく!興味深い!
パンフレットの最後には、日本で取り沙汰されている防犯カメラ映像の使用について、元支援者であった弁護士との軋轢についても、伊藤さんの言葉で綴られています。「映画をご覧になった方を前提に、必要最小限の範囲で経緯を共有します」という前置きとともに、これまで支えてくれたことへの感謝も随所に書かれていて、ご自身と映画に対する批判を無視せず懸命に向き合おうとする誠実さと、悲しみを感じました。
さらに巻末には、性暴力、性被害に関する相談窓口の案内ページもあり、そこにも伊藤さん自身が言葉を寄せていることに驚いてしまいます。仕事量…!
すぐには望む支援につながらないこともあります、伊藤もそうでした、それはあなたのせいではありません、こんなことでかけていいのかなと思わなくて大丈夫、など、柔らかな言葉遣いで書かれていて、本当に優しい人だなと…。
映画の中で、(正確には思い出せないのですが)性被害について考えるシンポジウムのような場に集まった女性たちの前で挨拶をする際、「皆さんからブランケットをかけてもらったような気持ち」と、伊藤さんが顔をくしゃくしゃにして言葉が途切れるほど泣いてしまう場面がありました。一人の撮影や友人とのやりとりでは泣いているカットはたくさんありましたが、大勢の人の前でそんな状態になっているのは他になかったんじゃないかな。彼女は自分もみんなにブランケットをかけたいのだな、と、パンフレットを見て伝わってきました。
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映画公式サイト
■映画『Black Box Diaries』公式サイト | ブラックボックスダイアリーズ
伊藤詩織さん個人のサイト
■Shiori Ito Official Site
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野木亜紀子さんによる第6話の解説に「レイプドラッグ話は今やる意義がある」とさらりと一言書かれていたことが(2018年のドラマで、伊藤詩織さんの記者会見が2017年)、私がこの事件をしっかり調べてみようと思ったきっかけでした。
映画を観て、6話だけでなく法廷劇だった3話の中にも、この事件や伊藤詩織さんの服装へのバッシングなど、符号点がいくつもあることに気付かされました(主人公ミコトがシャツのボタンを上まで閉じるよう注意されるのです)。野木さんも怒ってるんだな。

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前の記事でマッチポンプみたいになっちゃった私としては、野木さんのスマートな怒りかたが眩しいです(笑)
こういう事へ安易に批判をぶつけるだけの人間にはなりたくないけど、さりとて見て見ぬ振りは自分が辛すぎる…。
せめて同調圧力からの掌がえしだけはしたくないかな。
毎度脳直で書きこんでる私が言えた義理ではありませんが、調べて、熟考して、自分の中を覗きこむ作業って必要ですね。
反省しながら、いろいろ考えてみます…って書いてたらデカい地震きたー!
馬鹿の考え休むに似たりって啓示?
↑神はそれほど暇ではないと思う。
k.satさん
えっ地震!?わ、ほんとだ大丈夫ですか!
休むに似たりなんてそんなことないよ!私にはすごく嬉しいし、力になってますよ!
マッチポンプも違いますよ、私が傷つけられることにストレートに怒ってくださっただけじゃないですか。嬉しいですよ…(涙出てきた)
野木さんのスマートで端的な怒りかた、眩しいですよね!凝縮されてる。さすが脚本家です…
熟考も大事ですが、脳直で怒る!っていうのも必要なことだと思います。生き物としての本能みたいな。とかく女は特に、その本能を出すな出すなと抑え込まれてきましたものね。