フェミニズムについて、ドラマ『SHUT UP』も『MIU404』も、Feticoも、楠本まきもヤマシタトモコもよしながふみも [フェミニズム][まじめに]

赤白つるばみ・裏/火星は錆でできていて赤いのだ (マーガレットコミックスDIGITAL)


一つ前の記事、女性の貧困と性被害、性の同意を真っ向からテーマにした社会派ドラマ『SHUT UP』について検索してたら見つけたインタビュー記事が素晴らしすぎて。

えっこれJJのインタビューなの!?キラキラおしゃれファッション誌だと思ってたのにこの硬派な内容…いやこれ自体が偏見だわ。キラキラおしゃれ女子を対象としたファッション誌にこんな小難しい内容載せるなんてってびっくりしてる時点で失礼だわ。すみませんでした。

もう、ここ最近思ってたことがてんこ盛りすぎて、他で読んだあの作家さんもあの作品も繋がりすぎて、自分用リンクまとめを作りました。

【JJドラマ部】新進気鋭のテレ東ドラマPに制作裏話を根掘り葉掘り聞いてみた | JJ

「タイトルの『SHUT UP』(月曜23時06分~/テレビ東京系)には、身勝手な理由で女性たちの口を塞いできた社会に向かって、黙っていてほしいという制作サイドの気持ちを込めています。ドラマは最終回に向かって、大テーマでもある“性暴力”の問題に向かっていきますが、そこにも深く関連しています」

「身勝手な理由で女性たちの口を塞いできた社会に向かって、黙っていてほしいという制作サイドの気持ちを込めています」!!
ふおお!!Feticoか!(後述)

性暴力と戦える作品にしたい

おおお…MIU404でも野木亜紀子さんと塚原あゆ子さんが語ってらしたやつ!(後述)

小林:田島由希、川田恵(莉子)、工藤しおり(片山友希)、浅井紗奈(渡邉美穂)の、同じ寮に住みながら、貧困同士で助けあう関係もいいんですよね。あの4人の友情はラストまで続くんでしょうか?

本間:続きます。さすがに最近はあまり耳にしないですが、「女の友情は儚いからね」とか、「表面上は仲良くしていても、裏でどう思っているのかわからないよ」と言う人が多かった。

小林:結婚、出産、離婚に仕事。女のタイムテーブルはどんどん変わるのに。

本間:そうですよね! ライフステージが変わるだけで、友情関係がなくなるっていうことはないです。個人と個人の波動みたいなものが、ちょっとずれる時期があるだけなのに、それを周囲から「女の友情なんて」って揶揄されるのは違いますよね。

イマ:『ブラッシュアップライフ』(2023年/日本テレビ系)がまさにそれでしたよね。昔は、恋愛のこじれや結婚して家に入ることで友情が続かなくなる描写がよくあったけど、このドラマでは女性4人の友情が、結婚や出産によって振り回されることがなかった。

それ!それそれそれそれ!
女性のライフステージが激動するのは、結婚出産育児に介護にと家族の世話に翻弄され続けるからで、とりもなおさず男性社会のあおりを食わされているに他ならないのに、当の男性たちから「女の友情は儚い」だの「女の敵は女」だのと先入観を植え付けられ、内部分裂を煽られ、蔑まれるって。なんとグロテスクな。

本間:男の人って癒しを女性に求めがちじゃないですか。でも、女性は女性同士で癒しあって、お互いのケアもできる。言葉を通したコミュニケーションに長けているんですよね。逆に男性には、そういう能力が発達していないように思うんです。
(中略)
まずは相手の、彼の気持ちを聞く。向き合って聞く。言葉にすること、相手の負の感情やシリアスなことを受け止めることも大事なんだと思います。そういう、男性同士がコミュニケーションを深められるようになるドラマを作ってみたいですね。

ほんっっとそれ!!!ほんっっとそれ!!!
女に世話をさせるのやめてほしい。

あのね。バカリズムの『ブラッシュアップライフ』は私も本当に大好きだったんですけど、『殺意の道程』の方はね、ノイズが気になってしまって楽しめなかったのです。キャバ嬢が…不器用な井浦新さんと慣れたふりしたバカリズムの二人が、キャバクラでキャバ嬢たちの一挙一動に一喜一憂してる様がね、いつものバカリズム節で笑える風に描かれてたんだけど私はもう笑えなかった。

若い女の子をお金で買って、男たちの癒しのために消費するという下卑た行為を、ありふれた罪のない娯楽であるかのように、何なら本気の恋の鞘当てみたいに扱うのをやめてほしい。怖い。ベランダの薄着の女性を双眼鏡で眺めてた、というオチにも嫌悪感を抱いてしまった。そんな、男の性欲を甘やかすようなネタを使わなくても楽しい脚本が書ける人なのに。

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インタビューに戻りますと、ここからは貧困と「自己責任」論について。ほんとに…ほんとに…。

イマ:私が所属する光文社の女性ファッション誌は、スクールカーストでいう、上位の読者層をターゲットにしたものが多いんです。幼稚園から有名私立に通っているような。『CLASSY.』や『JJ』の編集長をしていた時も、この素敵な生活をそのまんまできる人たちって東京にどれくらいいるんだろうと思ってましたよ(笑)。一方、光文社新書では若者や女性の貧困をテーマにした本が2010年代から定期的に出版されています。編集部が変わると、同じ日本でもこんなにも違った側面をフォーカスするんだな、という格差社会のリアルを感じます。

本間:一人一人のマインドの話になるかもしれないんですけど、貧困や格差などの問題を個人の責任に帰結させないことだと思います。何でも自己責任っていう風潮が年々強くなっているけれど、それは時に人の口を塞ぐことになる。たとえば、「この人は貧しい境遇だったけど、こんなに成り上がったよ」と、レアケースを例にあげて、個人の努力の話にすり替えてしまう。
(中略)
貧しさってバイタリティーを奪っていくし、残ったエネルギーには個体差があるのに、強い人を基準にして「おまえは努力が足りないんだ!」みたいなことを言われる。そうなると、弱った人がSOSを出せない社会になっていくんじゃないかと思います。

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ここからは、私が最近触れたフェミニズム関連リンク集。

「身勝手な理由で女性たちの口を塞いできた社会に向かって、黙っていてほしいという制作サイドの気持ち」、これ、日本人女性デザイナー舟山瑛美さんのブランド『Fetico(フェティコ)』と一緒だ!と思いました。

「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」 – WWDJAPAN

席には「DO NOT DISTURB」と書かれた、ホテルのドアノブに掛けるカードが置かれており、この「邪魔をしないで」という意味を持つ言葉が今季のテーマになった。

4年ぶりの海外渡航である気付きがあった。「旅先で解放感を得たことで、日常ではいかに抑え込んで生きているのかを考えるきっかけになった。周りには性別や年齢、肩書きなど、他者から見られる視点を気にする人も多い。でもそれは、心地良く生きるためには必要のないこと」と舟山デザイナーは言う。「ファッションだけでも身に付けたいものを着て、自分らしさを大切にすれば、人生はもっと豊かになるはず。自由に生きようとする女性を邪魔しないで

Don’t Disturb!
邪魔しないで!
本当に…本当に…

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それから、フェミニズム、フェミニストと公言しているといえば私の中では楠本まきさん
最近の『赤白つるばみ・裏』という作品の中で、登場人物たちが「あなたは〇〇〇ですか?」と聞かれる場面があって、人それぞれに即答したり迷ったりするのですが。わかる。迷う人の気持ちわかる。私も即答できなかった。言葉のイメージが悪すぎて。

その〇〇〇=フェミニストという言葉の意味を、「女性が、女性だという理由で、社会的、政治的、経済的不利益を被ることを是としない人」と紹介していて。作中の若い男性が、「ていうかこれでフェミニストじゃないって答える人ってどんな状況?誰なん?」と。ほんとだよね!と思いました。

でも、そうだと思いたい。これを是とする人はそんなにはいないはずだと。女性にも、男性にも。

「励まされる人に向けて描きたい」 「これまでの漫画家業の集大成」としての展覧会に満足 楠本まきさんインタビュー 美術展ナビ

Q 2019年、少女漫画の中に見られるジェンダーバイアスのかかった表現に対する提言で注目されました。特にクリエイティブに関わっている人たちが勇気をもらった発言だと思います。

A 2018年に発覚した医学部の不正入試のニュースが本当に衝撃で。あれがなければ、ここまではっきりしたことは描かなかったと思います。

Q この時代にあれほどあからさまな女性差別が存在するのか、とあきれてしまう事件でした。

A それまでももちろん、さまざまな場面で女性差別があることは多かれ少なかれ誰もが感じていたと思いますが、入試のような、能力だけで測られると信じていたものにまで性別で差をつけていた、というのは愕然とするというか、絶望しましたね。女性差別が常態化してしまっている社会にあって、せめて少女漫画はジェンダー規範の再生産に加担しないという選択をしてほしいと思いました。

やはり…みんな絶望している。しょっちゅう書いてしまうのですが、ヤマシタトモコさんの『違国日記』7巻を思い出さずにいられないのです折に触れて。医大をめざす女子学生森本千世さんが教室で叫ぶんですよね、「こんなの人間扱いされてないってことじゃん!」「なんで誰も今まで正してこなかったの!?」と。

私は最初にこの入試不正のニュースを見た時「ああやっぱりそうなんだ、そりゃそのくらいのことはするだろうね」みたいに、斜に構えた感想しか出てこなかった自分を恥じました。「そのくらいのこと」なんかじゃないのに。当たり前のことなんかじゃないのに。そんなふうに、わかったふうに見過ごすことで、私よりも年若い人たちを同じ苦しみの中に繋ぎ止めることになってしまうのに。

「ジェンダーバイアスのかかった漫画は滅びればいい」。漫画家・楠本まきはなぜ登場人物にこう語らせたのか | ハフポストPROJECT

ご本人のnote
エンパワメント。|楠本まき

『赤白つるばみ・裏』のむちゃくちゃ熱いレビュー。
楠本まき「赤白つるばみ・裏」を読んだ。~「ジェンダーバイアスはなくなった方がいい」とは、どう語られたのか~|仲村

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前に岡崎体育のとこでも書いたのですがこっちにも改めて。
MIU404の3話について、脚本家野木亜紀子さんもこんなことを語ってらした。

「MIU404」女子高生拉致シーンにジェンダーへの配慮 脚本家・野木亜紀子が明かす裏側 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

野木さん:3話では岡崎体育さん演じる変質者に女子高生が拉致される場面があるんですが、塚原さん(監督塚原あゆ子さん)は「絶対におかずにされないように撮る」と言っていて、全面同意でした。エロとして見えてしまうと、訴えたいことと真逆の効果を生んでしまうので注意しないといけない。

うおおおん!!
私、野木作品に最初に鷲掴まれたのって『アンナチュラル』の石原さとみさん演じるミコトの、「女性がどんな服を着ようが、酔っ払っていようが、好きにしていい理由にはなりません。合意のない性行為は犯罪です」という毅然としたセリフでした。それ!!それ!!と拍手喝采だった。

みんな、みんな感じている。憤っているのだなこの現実に、と思うし、それぞれの立場からなんとか伝えようと足掻いているのだなと、こういう作品や、製作者の意図に、勇気に、触れるたびに励まされるのです。私は間違ってないんだ。傷ついて当然なんだ。もっと怒っていいんだ。

楠本まきさんが、『赤白つるばみ』本編である上下巻のあとがきに書かれていた「私にできる努力として、この作品はある」という言葉にも貫かれました。私にできる努力として。女性医療の遅れについての記事の最後の方を書いている時、たぶんこのあとがきの一文が心のどこかにあったんだと思います。

と、ちょっとまたとっ散らかったままなのですが、こういうの勢いでアップしないと怖気付いて下書きのまま眠らせてしまうので、えいっと公開してしまいます。誰かの背中を温められるように。背中を押すつもりではないの。無理しなくて良い、どんなことも。ただ隣に寄り添えるように。

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関連あひる
フェミニズム的重い記事リンク集2。ひとつ前の記事の最後とはまた別…まだあった…。

2023-11-17 体外受精の分娩で大変な目に遭った私が、代理出産について思うこと[分娩記録][生殖医療][まじめに]

2007年の記事。ブログに書くようになったのはごく最近と思っていたけど、書いてるな。ずっと考え続けてるんですよね、当たり前のことだけど。

2007-10-14 フェミニズムはやっぱり関係なくないんだ! よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり 途中感想

自己責任論といえば生活保護をテーマとしたぴこたんの『健康と文化的〜』。これについても書きたいことあるんだった。今度書く。
2018-08-20 [真面目に] ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』親子関係を問う衝撃回5話が無料配信、6話は明日8/21火曜夜放送 [柏木ハルコ]

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ひとつ前の記事につけたフェミニズム記事リンク集1。

2022-04-21 性暴力に関するNHKアンケート、過去のあれも性被害だったのだと気づいた話 [まじめに]

2022-04-25 フィクション、不意打ちキスしすぎ問題 [まじめに]

2022-04-19 女性の医療の遅れについて(時代遅れな子宮掻爬術や、麻酔無しの採卵や検査など)[まじめに][生殖医療]

2023-12-12 野木亜紀子x新垣結衣『獣になれない私たち』の溢れんばかりの女性たちへのエールと、夫婦を超えてゆきたくてもがくここ数年の私 [まじめに]

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美しい上下巻…


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