<NHKドラマ10 大奥 オリジナルサウンドトラック KOHTA YAMAMOTO>
もう…もう…観ましたか…ご覧になりましたか皆さん…
うおおおおおうんおうおうおう。
おろろーーーーんおんおんおん(泣き方)。
っていう(どういう!?)単なる感想です。私は原作既読組なので、ドラマの今後の展開についてもネタバレしてしまうかと存じますゆえご注意くだされたく。
8巻の途中から、12巻までが原作の医療編です。それをぎゅっと3話に凝縮…それがまた、すごくまとまって!重要なエッセンスだけを見事に抽出しているから、決してダイジェストみたいな急ぎすぎ感もなく、わかりやすくて見応えあって…
ただですね…素晴らしくうまくまとめられているだけに…原作でも一番くらい辛い展開の医療編の、辛さも暗さもぎゅぎゅっと煮詰まりまくってもう地獄みがとんでもないことに…息つく暇もない…鎌倉殿で鍛えられたはずの我々も瀕死…
ツイッタランドでね、もうここで脱落してもいいかな…?って呟いてる方がいらして。フォロワーさんらしき人が一生懸命引き止めてたんですが、うん、でも、あの、さっき原作でもここが一番くらい辛いって書いたけど違うかも。この後さらに畜生なこと起こりまくるから。少なくとも2〜3段階落ちるから…ここで去る人を止められない…
あとね?
ドラマ版では丁寧に慎重に取り除かれた原作にしかないエピソードの中にももっともっと地獄あるんでね?なのでこれから原作あたる方は心してくだされませ…?
たとえば田沼意次殿には後継ぎ娘さんがいらしてね。意次殿そっくりの聡明で美しい…その娘さんが殿中で惨たらしく殺されたりとか…さらにはそれが、飢饉に喘ぐ民衆たちから喝采でもって迎えられたり…天誅だとかバチが当たったんだとかね…つっら。もう辛い。辛すぎる。医者はなんのためにあるんだ!!違うからその叫びは雨のなか天を仰いで叫ぶといえばの大元、ブラックジャック先生の魂の叫びだから。大奥での黒木殿の叫びは「あまりに理不尽ではないか!!」ですから。本当に…理不尽すぎて辛いの…
もうあのシーンの黒木殿、玉置玲央さんが三次元なのに完全に作画よしながふみで…素晴らしかったです…大奥テーマソングも絶妙なタイミングで鳴り響いて…やめて…。
源内のあれもね…もううー!!ドラマ版!!やめて〜。暴漢から走って逃げる源内の夜道の背中を…弟を亡くし、弟の着物で旅の空に走り出した源内の背中とオーバーラップさせるのやめて〜〜やめてよもうう〜〜。
生身の人間が演じると…より一層悲壮感が増すのですよね…いやそれはきっと単にドラマ化したからってだけではもちろんない。素晴らしく丁寧に…セット、音楽、小物、すべてのスタッフさんの仕事が全力で効果を発揮しているから…。
生身の人間で悲壮感を増したといえば、時の将軍家治ですね!治済に盛られた毒ですっかり弱って意次を罵倒してしまうシーンは原作にもあったけれど、ここまでとは…!つっら。泣き叫ぶ声が辛かったです…高田夏帆さんの熱演…。
松平、のちの白河定信様も、安達祐実ちゃんが素晴らしいったら!生真面目で堅物すぎる定信そのもの!
そして次回から大活躍予定の治済がまた…仲間由紀恵…不気味!あんな美しい由紀恵が不気味すぎる…ずっと笑顔なのに怖すぎて…。「もし」って。定信をそっと呼び止める「もし」って!妖怪か!!怖ァ!
「男だらけの大奥で何をしているのやら…」「けっけしからん!」のシーンも、原作ではちょっと笑えるというか、定信が真っ赤になってるのがこう、せくすぃーな想像をしてしまって戸惑ってる感が出てて可愛いのですが、由紀恵と安達祐実ちゃんだと、ひたすら冷たくて。怒り狂ってるようにしか見えんくて。怖い。
原作ではね、この後、治済の栄華が始まってしまい、美男との酒池肉林に耽ったり油断して、打倒治済を掲げた者たちの知略に嵌ってしまうわけですが、この由紀恵治済はそんなもんに騙されてくれなそうじゃないですか!?どうしたら!どうしたら倒せるの…寿命を待つしか!?嫌だあああ。
ていうか黒木さんの慟哭もね?「大奥の女たちよ!貴様らは母になったことはないのか!」っていうの…治済には効かないから…治済は血の通った息子も孫も別に、退屈しのぎに間引いたりする程度の…しかもそれ忘れてて「あっもう殺したのだった、しもうたしもうた」って…うわあああ来週うううう。鬼畜じゃ、鬼畜の所業じゃあああ。
斉藤由貴さんといい、由紀恵といい…素晴らしい配役…
松下奈緒さんも!「ありがとう…青沼」の発音が!掠れた涙声が完璧すぎて…!
源内との絆も、原作のいろんな人物やエピソードをカットした分シンプルになっていて、より深まっていたように見えました。口吸い…!回想シーンで慌てて止めに入る堀内敬子さんも好き。
定信をこてんぱんにのしてしまうシーンも(治済の「もし」と「けしからん!」の直前)、原作では単に思ったことを黙ってられない性格のせいでうっかり、って雰囲気だったように思いますが、ドラマ版だとああこんなの、目の前で意次様をあんだけ悪し様に罵られたらこの源内が黙ってられるわけないよな、という納得の流れになっていたの、お見事でした。そして安達祐実ちゃんの、小柄な体躯で下から睨め付ける三白眼の迫力ときたら…!お見事すぎる…!
お見事といえば何もかもお見事でしたのですが…青沼殿の白装束もね…まるでシーズン1の再来でね…水野の時には…あそこで吉宗公の名裁きが入ったのに…止めてよ〜。今回も止めてよ〜誰か〜。定信様!お祖母様が誇りならおんなじことしてよ〜。そんなことは起こらず、飛び散る血飛沫の無慈悲…。うわああああ。
その直前の回想シーンも!怒涛のありがとうラッシュ!うおおおうおうおうやめてよドラマ版やめてよう〜涙で画面見えなくすんのやめてようう〜。いろんな人からのありがとう、ありがとうが、ありありありありアリーヴェデルチいいいい(それはブチャラティぃぃぃ)。
原作勢から未読派に言えることは…もっと辛くなるよ…?っていう…ことですよね…ごめんもっと辛い…まだまだ地獄は続くんよ…
だからこそね…人と人との繋がりや、思いやる心や、ほんのちょっとしたきっかけで立ちのぼる美しいものの煌めきが胸を刺すのですよね…このよしなが大奥…。それを本当に、本当にここまで忠実に映像化してくれるとは…!忠実、といってもそのまんまなぞってるんじゃないの。一度解体して組み上げて原作の魅力をより引き上げているという素晴らしいドラマ化…こんなことってある…?完璧すぎる…
俺たちはよしなが大奥が実在する世界線を生きている…
はあ…続きも楽しみです…HPもMPも削られまくるけど…。
何が削られるってね、よしなが大奥の世界がね、決してフィクションじゃないんだな、ということを日々思い知らされるところですよね。主にジェンダー的な意味で。知ってたけど。だからこそこんなにも響くんだもの。男女が逆転することで見えてくる様々ないびつさ、それはとりもなおさず、僕らが生きている現実社会が歪んでいるからであって。
わかります?言ってることわかっていただけるかしら。
そんな大袈裟な、とため息ついたり苦笑したりできる人には、見えていない世界がある。それをわかりやすく作品にして、連綿と綴ってくれているのがこの『大奥』という作品であって。この苦しみが、まったくもって他人事じゃないのです。
現実とのリンクといえばもうひとつ実際に、新型コロナウィルスがいまだ猛威を奮っているじゃないですか。風土病のようなものとして定着しつつあるのではないかと言われている今、よしなが大奥の医療編が描かれたのが2011年頃という、先見の明。
もともと幾度となく伝染病に苦しめられ、それをなんとか駆逐してきた人類の歴史があるからこそ、それをベースによしなが先生がこういった物語に落とし込んだのだとはもちろん思いますが、それにしても…人痘接種、今で言うワクチンの開発に漕ぎ着けるまでの人々の努力、その危険性も医師である青沼は熟知していること、それもあわせて民に伝える責任があること、それでも打ちたいという希望者には打つべきであるという姿勢。大奥内の政治抗争に巻き込まれ、己が命が危ういと知っても少しも動じず、「明日もあさっても、接種を受けたいという人たちがおります」「お偉い方々がどうお考えになろうが、広く人痘接種を行うことこそが仁の道」と、意次をまっすぐ見つめる青沼の静かな瞳…。
そんな人々に容赦無く向けられる、政敵による権謀術数と、民による不安や誤解からくる攻撃…。
辛い。
ゾン100にもつい書いてしまったけれど、そうしたものに陥らないために、何ができるんだろうか。
ともあれ!来週も楽し…み…楽しくは…ない…でも観なければ…見届けなければ…なりますまい…
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