『吉野朔実劇場』最後の新刊あれこれ比較、『吉野朔実は本が大好き(吉野朔実劇場 ALL IN ONE)』は白黒のみ、ところどころ抜けあり

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吉野朔実さん最後の新刊、三冊が届きました。
・最新の内容の『吉野朔実劇場 天使は本棚に住んでいる』(シリーズ8巻め)
・吉野朔実劇場8冊を一冊に集めた『吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)』
・『本の雑誌』吉野朔実追悼号。
この3冊です。
まず、ファンに一番おすすめしたいのは『本の雑誌』吉野朔実追悼号。雑誌だから今を逃すと手に入れにくくなるし。



『吉野朔実劇場』でおなじみの吉野さんのご友人の方々が追悼文を寄せていらして、吉野朔実劇場に登場する時のおなじみの似顔絵キャラとともに掲載されていて、読んでいてああこの人はあの、と親しみを覚えるとともに、そこに書かれている吉野さんの人となりや、書き手の悲しみや後悔(いつでも会えると思い込んでここ数年会っていなかった等)もいっそう胸に迫ってきて、改めて吉野さんの不在を悼む気持ちが深くなりました。
私にとってここまで好きな作家を亡くすのが初めての経験なので他を知らないのですが、どの作家さんに対してもこんなふうに温かく、そして悲しみに満ちた追悼特集本が作られるものなのだろうか?
吉野朔実さんが、長らく他でもない『本の雑誌』という本好きのための雑誌に連載をしていたからこそ、というのもあるのかしら。まだ全部は読んでないのですが、とても素晴らしい特集雑誌だと思いました。これからゆっくり少しずつ読んでいきます。
それから『本の雑誌』の穂村弘さんの連載、なのかな?『続・棒パン日常』というページは今回『吉野さん その2』というタイトルで、「前回吉野さんの思い出とともに彼女が作った短歌を紹介した」とあったので前号もAmazonで注文しました。届くの楽しみ。今回は吉野さんの短歌がいくつか紹介されていましたが、言葉選びのほんわかした丸っこさと内容の鋭利さがあいまって、ご本人のマンガそのままだなあ。
ひとつ前の号がこちら。



そして、『吉野朔実劇場』最後の一冊がこちら、『天使は本棚に住んでいる』。



ざっと見たところ、ひとつひとつの内容はいつもの吉野朔実劇場と変わりないのですが、本全体の編集というのかな、体裁がいつもと少しずつ違っていました。いつもなら何らかのイラストの巻頭カラー口絵があるのですが、今回はカラーではあるけれど1ページ分の書評になっていたり、中身のカラーページも無しでした。それから座談会のような文字企画もなし。あとがきもなし。
それでぷっつりと途切れるように本が終わってしまったので、少し寂しい気持ちになっていたら、最後の最後の、奥付のさらに次のページに、「発掘」というタイトルの1ページがありました。「『宝物』を掘り出しに行って、本がごっそり出てきたら、とりあえずはがっかりすると思う」という書き出しで始まる、本というものと人との関係、のようなエッセイマンガ。この1ページで、『吉野朔実劇場』の最新刊は幕を閉じていました。

(追記:『発掘』について。
『天使は本棚に住んでいる』奥付によると、1997年『ハヤカワ文庫夏のブックパーティー’97』掲載。『吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)』の方には載っていない…と思ったら、コメント欄でご指摘頂いて再度確認したところ載っていました。『弟の家には本棚がない』の前書きのすぐ後、159pです。ご指摘ありがとうございました!)

それから、この吉野朔実劇場8冊分オールインワン、これはちょっと、もったいない作りに思えました…。未収録分があるので何ともいえないのですが、正直あんまりおすすめはしづらい…。



これまでの『吉野朔実劇場』をコンプリートしたいという人で、内容だけ読めれば良いのなら買い。これまでの『本』の体裁も含めて好きだったという人には、一冊一冊買い集めることをお勧めしたいかも。未収録分は困るんですけどね…
ソフトカバーなのはAmazonの情報で事前に知っていたし、めくりやすくてまあ良いのかなと思います。
ただ中身が、カラーページ無しのすべて白黒で、それぞれの巻の表紙や扉絵も無しでとにかく詰め込まれているだけで、本としてあんまり嬉しいものではなくて、少し残念でした。
できることならカラーもそのまま掲載してほしかったし、それがコストがかさんでだめだったのなら、せめて印象的だったそれぞれの単行本の表紙や、扉ページの額縁のように装飾でふちどられたタイトルだけでも載せてほしかったのですが、それも無し。単に文字で『神様は本を読まない』などと書かれているだけで、ぱらぱらめくった時にどこが各巻の境目かわかりづらいし、何となく目に楽しくない…。
手持ちの単行本と比較してみます。
左が『ALL IN ONE』、右が『天使は本棚に住んでいる』。
1ページ目のカラーマンガが、オールインワンには載っていません。タイトルが書かれているのみ。

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左が『ALL IN ONE』、右が『悪魔が本とやってくる』。
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って、電子化しちゃってるクセに何を偉そうにですかね!?
すいません…このシリーズは特に悩んだのですが、電子化していない本をほんっとうに手に取らなくなってしまって…カバーも、本体のハードカバー部分も帯もちゃんとデータ化して残してあります。
あの…言い訳をします。いえさせてください。
鉄道好きにも乗り鉄とか撮り鉄とかいらっしゃるようにですね。本好きにも色々いるのだと思うのです。本という形そのもの、表紙や紙の質感や、そこにインクが乗った時の印刷の感じとか、そういったものも愛している人。そういう人にとっては電子化とか言語道断、悪魔の所行でしょう…何しろ本を裁断するんですから…いえ私だって心が痛むのです。こともあろうに本に刃物を入れるという行為!もちろん心は痛むのです。全然平気の平座でざくざくやっちゃってるわけじゃないのです。
でもiPadの中に自分の蔵書が収まり(容量も大きいので全部は持ち出せないですが)、いつでも外出先でもさっと読める手軽さ、特に育児中痛感したのが手が塞がっていても、暗がりでも読める利便性の凄まじさと、それから壁一面を覆っていた本棚のスペースがごっそり空いたという圧倒的物理的空間的事実に抗えず、手持ちの本を次々電子化した次第です。
本好き派閥?としては、電子書籍も抵抗ナシ、コンビニマンガみたいな「中身だけ読めれば紙質とか端末とかどっちでもいい」的な人もいると思います。初回特典とかボーナストラックみたいなのも別にいらないとか。帯は即捨てるとか!
私は本好きの中でも(…本、好きなのかなあたし…?改めて考えたこと無かったけど…たぶん好きじゃない人に比べたら好きな方だとは思います…)、両者の間なんじゃないかと思います。コンテンツ、中身重視というのかな。前々から口をすっぱくして書いているので(指がすっぱくか?)皆さんも耳タコだとは思いますが(目にタコか??)、カバー裏とか帯とかも大事なコンテンツの一部なので余すところ無く所有していたい!
なのでその、好きな作家の好きな本ほど電子化して手元に、家の本棚ではなくiPadの中に納めておきたいという欲求に勝てず…今回の『吉野朔実劇場』も電子化した次第でございます…。ハードカバーの装丁も好きだったし、薄くてかさばるものでもないし、本当に迷ったのですが…でも電子化した方が私にとっては「読む」なあ、と実感したので電子化に踏み切ったのでした。
すいません話が逸れに逸れて。でも『吉野朔実劇場』でたびたび出てきたように、「本」のどこがどのように好きか、という話でもあるので、ちょっと書かせて頂きました。手持ち蔵書の電子化についてはまた別途情報をまとめて書かせてもらうかもです。
んーとそんな中身重視、というか「少しも損をしたくない女(吉田戦車の言葉)」というあさましげなあひるちゃんでありますので、今回のオールインワンは損してる!一冊一冊の時にはちゃんとあったカラーもない!本をめくる時、表紙を最初にめくった時のタイトルが書かれている扉、映画でいえばタイトルがじゃーんと出てくる、さあ始まるぞ!読むぞ~!というあのワクワク感もない!損してるー!
と思ってしまったのでした。
できることならやはり、『天使は本棚に住んでいる』の方に未収録分を載せてほしかったです。今までの単行本をすべて持っているファンに対して、これではあまりに商業的すぎるのではないだろうか。今までの7冊も持っている人間にとっては、全部入りの未収録分以外の部分が完全に余計だったのが残念なのです。
こんなふうに、未収録分で昔からのファンを釣って全部入りを買わせるようなやり方ではなく、せめて完璧にカラーなどを再現してくれて、各単行本の表紙の色味や雰囲気も含めて掲載してくれるとか、そういうふうにしてくれたら一冊一冊の単行本とはまた別に、全部入りは全部入りで大切にしたい本になったと思うのに。このシリーズは特に帯の言葉も洒落ていて好きだったので、そういうのもあわせて残してほしかったな。
そう思うと残念です。
せっかくの最後の本に、難癖つけてしまってすみません…。
『フラワーズ』に掲載されていた短編マンガなどもあるはずなので、他の出版社からまた出るんじゃないかと思います。楽しみにしていよう。
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関連あひる
July 06, 2016 「吉野朔実劇場」最終巻と、全巻まとめた1冊『吉野朔実は本が大好き』発売、『本の雑誌』でも追悼特集

過去の吉野朔実記事へのリンク集もこちらにまとめてあります。
May 03, 2016 [訃報]吉野朔実逝去


日常に潜む暴力のこと、本を読んだり絵を描いたり、好きなことを淡々と積み重ねて過ごす静かな時間が確かな力になること、子供時代から脱却する人生の転換期に必要だった様々なピースを、彼女の作品からこんなにも多く受け取ってきていたことに改めて気づかされています。まだ気持ちの整理はつかないですが、吉野先生本当にありがとうございました。どうぞ安らかに、眠ってはいなさそうですね。きっと果てのない本棚の前で好きなだけ本を読みながら今後を過ごしていかれるのではないかと想像します。本当にありがとうございました。心よりご冥福をお祈りします。

まだ買ってないのでわからないのですが、Kindle版はどうなのかなあ…カラーはちゃんとそのままかしら…扉はどうなってるのかしら…

お父さんは時代小説が大好き
吉野朔実
本の雑誌社
2015-06-01


お母さんは「赤毛のアン」が大好き
吉野朔実
本の雑誌社
2015-06-01


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2 Replies to “『吉野朔実劇場』最後の新刊あれこれ比較、『吉野朔実は本が大好き(吉野朔実劇場 ALL IN ONE)』は白黒のみ、ところどころ抜けあり”

  1. 時々みさせて頂いています。鈴木祥子さんと吉野朔実さんのファンです。
    実はオールインワンにも発掘、入ってますよ。目次見てみてください。
    私は四月から手放した吉野作品をコツコツ集め直してるところでした。若い頃とは違う感動があって良かったです。いたいけな瞳再読で一番好きなのは夢喰いでした。あ、昔からかも(^_^;)
    また更新楽しみにしてます

  2. >うめさん
    コメントありがとうございます。鈴木祥子さんと吉野朔実さん…(シェイクハンズ!!)
    『発掘』についてありがとうございました。さっそく本文修正しました。かなり確認したつもりだったのですが、真ん中らへんにはさまっていたとは…!初出の年月日が近い『弟の部屋には』に差し込んだのでしょうか。
    『夢喰い』良いですよね!私も好きです。「さみしがりの子供の庭の花になって」というフレーズがとても素敵。次のおじさんと療養所の話も好きです。夢の残酷さ、容赦のなさ…。
    私はどれかな…ひとつに絞るのは難しいですが、カラーが鮮烈な『月の桂』、それから『レンタル家族』や、スキップが活躍?する2編なんかがパッと思い浮かびます。

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