友人から聞いた、優しい通りすがりさんの話

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学生時代からの友人が、転職・結婚を機に遠方に引っ越すことになりました。なんてめでたい。お仕事本当におつかれさま、そしておめでとう。
そうそう会えない距離へ離れてしまうのはとても寂しいけれど、東京を離れる直前に会って聞いた、彼氏さんのご家族が温かく彼女を迎えてくれている様子が本当に嬉しいです。良かったねえ、うんありがとう、とお互いうるうるしてしまいました。
そんな彼女から聞いた、何年も経った今も思い出すたびにうるうるしてしまう話があります。年の瀬に優しい通りすがりさんのお話でもひとつ。


彼女はとても朗らかで、にこにこと楽しそうに話を聞いてくれるのでついついこちらばかりたくさんしゃべってしまって、また自分の悩みや愚痴については寡黙であまり表に出さない人だったので、家族の中で子供の頃からずっと深く傷ついてきたのだということを社会人になる頃にようやく少しずつ詳しく聞くようになって、本当にびっくりしました。お互いすっかり大人になり、学生の頃よりも会う機会は減ったけれど親しく深くいろんな話をするようになって、ぽつりぽつりとそういう話が出てきたように思います。そのたびに聞いてもらえてすごく嬉しい、とこちらこそなのにいつも彼女は言ってくれました。そして毎回話はますます途切れず、久しぶりに会う時には2軒3軒とはしごして最後はいつも終電ダッシュ。
その日もそんな帰り道、別れ際に彼女がぽつんとこんなことを言ったのです。
「そういえば、私の話を聞いて『あなたは悪くないよ』って言ってくれたのは、あの頃は全然知らない通りすがりの人だけだったんだよね」
ぜ全然知らない通りすがりの人!?ナニソレどういう状況!?と訊いたら。
家に帰るのがどうしてもつらい時、彼女はよく道ばたにしゃがみこんで泣いていたんだそうです(もうこれだけで涙が間欠泉)。その夜もそうして泣いていたら、仕事帰りの若いサラリーマンがどうしたの、と声をかけてくれたと。近くの自販機で缶コーヒーを買ってきてくれて、それを飲みながら彼女はそれまで友だちにもなかなか言えなかった家族の悩みを打ち明けていったのだそうです。こんなに毎日辛く苦しいのは自分のせいなんだけど、みんながいつもそう言うからきっと自分が悪いんだけど、と。
そうしたら、彼女の言葉が途切れた頃、ずっと黙って話を聞いてくれていたその人が、
「それはきみのせいじゃないよ」
と言ってくれたと。きみにはどれもどうしようもないことじゃないかと。
ナニソレ良い話すぎるよーーー!!!
終電間際の品川駅のコンコースを早足でせっせと歩いている時にそんな話が飛び出してきたものだから、思わず立ち止まって二人して号泣してしまいました。
そんなことを言われたのは生まれて初めてだったから本当にびっくりした、それ以来すごく気持ちが楽になったと。
彼女のつらかった日々に、そんな優しい人が足を止めてくれたことに感謝したいです。そして何年も経った今、彼女を理解し寄り添ってくれる人が隣にいてくれることにも。ユーモアと行動力に溢れ、思慮深く客観的、なおかつ温かい想像力も持っていて、私の話にも涙ぐんだり労ってくれたり心を寄せてくれる彼女は、私にとって特別に大切な友人の一人です。なかなか会えなくなるけれど、新しい土地で新しい家族とどうぞ幸せに。きっと今年はいつもより暖かいクリスマスと年越しでしょう。
きのう何食べた?(7) (モーニング KC)きのう何食べた?(7) (モーニング KC)
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よしながふみはやっぱりすごいよねえ!という話でもよく盛り上がります。


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