各種メディア・ソースをコピペするだけですがまとめというかメモというか。(英語でのスピーチ原文、と思われるものも引用・転載してあります)
【追記2009/2/17 13:41】もう少し詳しい情報を別記事にupしました。
【追記2009/2/18 06:12】春樹氏が語っている動画と、さらに詳しい口語体のスピーチ英文をupしました。【追記以上】
まずはこういうことがあったらしい。
■webDICE – TOPICS – エルサレム賞受賞の村上春樹氏への公開書簡
以下、一部引用。
【イスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」の2009年度の受賞者に作家の村上春樹氏が決まりました。】
【ガザを攻撃し多数の民間人を殺したイスラエルなんかにいくなという声もある。
以下、パレスチナ平和の会のサイトに掲載されている公開書簡】
結果ハルキ氏がどうしたのか、メールで知らせてくれたハルキ好き友人の一人によると、新聞社・記者によってニュアンスが違う、とのこと。なるほど確かにこれは原文で読んでみたいなあ。
というわけで以下ニュース文コピペ(ほぼ更新順)。
■時事ドットコム:村上春樹さんに「エルサレム賞」=スピーチでガザ侵攻を批判
【【エルサレム15日時事】作家の村上春樹さん(60)は15日、イスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」を受賞し、エルサレム市内の会議場でスピーチを行った。村上さんは、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ侵攻を批判、日本で受賞をボイコットすべきだとの意見が出たことを紹介した。
村上さんは例え話として、「高い壁」とそれにぶつかって割れる「卵」があり、いつも自分は「卵」の側に付くと言及。その上で、「爆弾犯や戦車、ロケット弾、白リン弾が高い壁で、卵は被害を受ける人々だ」と述べ、名指しは避けつつも、イスラエル軍やパレスチナ武装組織を非難した。
(2009/02/16-06:47)】
■asahi.com(朝日新聞社):村上春樹さん、エルサレム賞記念講演でガザ攻撃を批判 – 文化
【15日、イスラエルのエルサレムで開かれたエルサレム賞の授賞式で、記念講演する村上春樹さん=平田写す】
【15日、エルサレムで開かれたエルサレム賞の授賞式で、市長から同賞を贈られる村上春樹さん=平田写す】
【【エルサレム=平田篤央】イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞が15日、作家の村上春樹さん(60)に贈られた。エルサレムで開かれた授賞式の記念講演で、村上さんはイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に触れ、人間を壊れやすい卵に例えたうえで「私は卵の側に立つ」と述べ、軍事力に訴えるやり方を批判した。
ガザ攻撃では1300人以上が死亡し、大半が一般市民で、子どもや女性も多かった。このため日本国内で市民団体などが「イスラエルの政策を擁護することになる」として賞の返上を求めていた。
村上さんは、授賞式への出席について迷ったと述べ、エルサレムに来たのは「メッセージを伝えるためだ」と説明。体制を壁に、個人を卵に例えて、「高い壁に挟まれ、壁にぶつかって壊れる卵」を思い浮かべた時、「どんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」と強調した。
また「壁は私たちを守ってくれると思われるが、私たちを殺し、また他人を冷淡に効率よく殺す理由にもなる」と述べた。イスラエルが進めるパレスチナとの分離壁の建設を意識した発言とみられる。
村上さんの「海辺のカフカ」「ノルウェイの森」など複数の作品はヘブライ語に翻訳され、イスラエルでもベストセラーになった。
エルサレム賞は63年に始まり、「社会における個人の自由」に貢献した文学者に隔年で贈られる。受賞者には、英国の哲学者バートランド・ラッセル、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘス、チェコの作家ミラン・クンデラ各氏ら、著名な名前が並ぶ。欧米言語以外の作家の受賞は初めて。
ただ中東紛争のただ中にある国の文学賞だけに、政治的論争と無縁ではない。01年には記念講演でスーザン・ソンタグ氏が、03年の受賞者アーサー・ミラー氏は授賞式に出席する代わりにビデオスピーチで、それぞれイスラエルのパレスチナ政策を批判した。
2009年2月16日8時27分】
■エルサレム賞の村上春樹さん「ここに来ること選んだ」 : 文化 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
【授賞式でスピーチする村上さん(15日、エルサレムで)=松本剛撮影】
(注:写真は2009年2月16日15時12分更新の記事より)
【【エルサレム=三井美奈】作家の村上春樹さん(60)がイスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」に選ばれ15日、エルサレム市で授賞式が行われた。
同国軍のパレスチナ自治区ガザ攻撃で約1300人の死者が出た直後だけに、受賞辞退を求める声も出ていたが、村上さんは受賞スピーチで「作家は自分の目で見たことしか信じない。私は非関与やだんまりを決め込むより、ここに来て、見て、語ることを選んだ」と述べた。
村上さんは、戦争を生む社会システムを「我々を守る一方、時には組織的な殺人を強いる『壁』」と呼び、人間を壁にぶつかると割れてしまう「卵」にたとえた。ただ、卵は個性を持つかけがえのない存在であり、自分は「常に卵の側に立つ」と宣言した。その上で、「壁は高く勝利が絶望的に見えることもあるが、我々はシステムに利用されてはならない。我々がシステムの主人なのだ」と述べた。
エルサレム賞は1963年創設。「社会における個人の自由」をめぐる優れた執筆活動に対して隔年贈呈され、これまでに英国の哲学者でノーベル文学賞受賞者のバートランド・ラッセル、仏人著述家シモーヌ・ド・ボーボワールらが受賞している。
(2009年2月16日10時49分 読売新聞)】
■村上春樹さん:ガザ過剰攻撃に苦言 エルサレム賞授賞式で – 毎日jp(毎日新聞)
【エルサレム賞の授賞式で賞状を受け取る村上春樹さん(右)=2009年2月15日、前田英司撮影】
【村上春樹さん:ガザ過剰攻撃に苦言 エルサレム賞授賞式で
【エルサレム前田英司】イスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」の授賞式が15日、エルサレムの国際会議場であり、受賞した作家の村上春樹さん(60)に賞状などが贈られた。村上さんは受賞演説でイスラエル軍による先のパレスチナ自治区ガザ地区攻撃に言及、人間を殻の壊れやすい「卵」に例えて尊厳を訴えた。
63年に始まったエルサレム賞は隔年で、個人の自由や社会、政治を題材にした作品を発表した作家に贈られる。過去の受賞者には英国の哲学者バートランド・ラッセルや、メキシコの詩人オクタビオ・パスらノーベル文学賞受賞者が名を連ねている。
村上さんは英語で演説し、ガザ攻撃について「1000人以上が死亡し、その多くは非武装の子供やお年寄りだった」と言及し、事実上イスラエル軍の過剰攻撃を批判。日本国内で受賞拒否を求める声が挙がったと説明するとともに、「私は沈黙するのではなく(現地に来て)話すことを選んだ」と述べた。
そのうえで村上さんは、人間を殻のもろい「卵」に例える一方、イスラエル軍の戦車や白リン弾、イスラム原理主義組織ハマスのロケット弾など双方の武器や、それらを使う体制を「壁」と表現。「私たちは皆、壁に直面した卵だ。しかし、壁は私たちが作り出したのであり、制御しなければならない」と述べて命の尊さを訴えた。
イスラエルでは「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」など村上さんの作品11冊がヘブライ語に翻訳されており、抜群の人気と知名度がある。「ねじまき鳥クロニクル」を愛読するという女性会社員イラ・グロスさん(31)は「村上作品の主人公は常に真の愛を追求したり、孤独からの逃げ場を探したりして共感できる」と絶賛した。
一方、演説を聴いたイスラエル人男性からは「エルサレムまで来て賞を受けながらイスラエル批判をするのは納得いかない」との不満の声も漏れた。
毎日新聞 2009年2月16日 11時04分(最終更新 2月16日 13時20分)】
* * * * * *
以上です。
む、原文発見。べたっと貼っておきます。
スピーチ全文、ではないかもしれないけど。いくらなんでも読みにくいので、ひとまずハルキ氏の発言部分(たぶん)を太字に装飾してみます。
■Murakami, in trademark obscurity, explains why he accepted Jerusalem award | Books | Jerusalem Post
【Japanese novelist Haruki Murakami receives the Jerusalem Prize from Jerusalem Mayor Nir Barkat, during the International Book Fair in Jerusalem, Sunday.
Photo: AP】
【Israel is not the egg.
Confused? This might be the only explanation we will ever hear from Japanese bestselling author Haruki Murakami – and in true Murakami style, even it will be somewhat vague.
Murakami on Sunday night defeated jetlag, political opposition and droves of photographers to accept the Jerusalem Prize for the Freedom of the Individual in Society at the opening of the 24th Jerusalem International Book Fair held at Jerusalem’s International Conference Center.
Flanked by President Shimon Peres and Jerusalem Mayor Nir Barkat, he took the prize with quiet poise. Then, alone on the podium and free of camera flashes, the author got down to business.
“So I have come to Jerusalem. I have a come as a novelist, that is – a spinner of lies.
“Novelists aren’t the only ones who tell lies – politicians do (sorry, Mr. President) – and diplomats, too. But something distinguishes the novelists from the others. We aren’t prosecuted for our lies: we are praised. And the bigger the lie, the more praise we get.
“The difference between our lies and their lies is that our lies help bring out the truth. It’s hard to grasp the truth in its entirety – so we transfer it to the fictional realm. But first, we have to clarify where the truth lies within ourselves.
“Today, I will tell the truth. There are only a few days a year when I do not engage in telling lies. Today is one of them.”
Murakami’s novels are surreal and imaginative, often bordering on bizarre. Reading his books is like gazing at a Picasso: a certain detachment from normalcy is required so that the objects and events in Murakami’s world can settle into their own logic.
But at the heart of each novel, standing in stark contrast to the logical chaos around him, is a very human, self-aware, humble soul-searching individual – and one whose internal struggles are the same as our own.
The panel that chose Murakami as its winner made its decision quickly and unanimously, citing Murakami’s themes of universal humanism, love for humanity, and battles with existential questions that have no easy answers. But while the award panel debated little about who should receive this year’s award, Murakami himself was torn about accepting it.
“When I was asked to accept this award,” he said, “I was warned from coming here because of the fighting in Gaza. I asked myself: Is visiting Israel the proper thing to do? Will I be supporting one side?
“I gave it some thought. And I decided to come. Like most novelists, I like to do exactly the opposite of what I’m told. It’s in my nature as a novelist. Novelists can’t trust anything they haven’t seen with their own eyes or touched with their own hands. So I chose to see. I chose to speak here rather than say nothing.
“So here is what I have come to say.”
And here Murakami left behind the persona of his main characters and took on the role of a marginal one (the lucid wisdoms in his novels tend to come from acquaintances of the protagonist), making a clear statement that left no room for reinterpretation. No time for ambiguity, this.
“If there is a hard, high wall and an egg that breaks against it, no matter how right the wall or how wrong the egg, I will stand on the side of the egg.
“Why? Because each of us is an egg, a unique soul enclosed in a fragile egg. Each of us is confronting a high wall. The high wall is the system” which forces us to do the things we would not ordinarily see fit to do as individuals.
“I have only one purpose in writing novels,” he continued, his voice as unobtrusive and penetrating as a conscience. “That is to draw out the unique divinity of the individual. To gratify uniqueness. To keep the system from tangling us. So – I write stories of life, love. Make people laugh and cry.
“We are all human beings, individuals, fragile eggs,” he urged. “We have no hope against the wall: it’s too high, too dark, too cold. To fight the wall, we must join our souls together for warmth, strength. We must not let the system control us – create who we are. It is we who created the system.”
Murakami, his message delivered, closed by thanking his readership – a special thing indeed from a man who does not make a habit of accepting awards in person.
“I am grateful to you, Israelis, for reading my books. I hope we are sharing something meaningful. You are the biggest reason why I am here.”
Feb 15, 2009 23:57 | Updated Feb 16, 2009 3:48 】
**関連あひる**
**村上春樹、カリフォルニア大学バークレーでの講演(2008/10/24)・村上春樹、ノーベル賞?(2008/10/06)
**ハルキ氏、プラハにて人生初記者会見(2006/10/31)・ノーベル文学賞発表、ハルキ受賞ならず(2006/10/14)・ハルキのやなぎにオコナー賞(2006/9/25)
おお~エルサレムポストの記事ありがとう!
ヨミウリのが、エルサレムポストの記事に、一番ニュアンスが近いような感じがしました。
ほかの新聞が書いているような、「エルサレムを非難」という端的なスピーチには見えない。
ガザ攻撃も含む、「個人だったらやらないだろうことをやらせる」システム全体に対して、「コントロールされないように協力していかないと」と言っているみたいし…。
あるいは、省略されている部分に、具体的に今回のことに関する細かい言及があったのかな。
エルサレムの賞を受けに行くと(受ける
と)、片側を応援するようなことになるんじゃないか、というのも、ちゃんと自分の目で見て、手で触らない物は信じない。というのはとてもハルキ氏らしい、とも感じました。
ああ、なるほどな、と、彼のいままでの小説のいろいろなシーンが思い浮かびました。
> ほかの新聞が書いているような、「エルサレムを非難」という端的なスピーチには見えない。
そうなのよね~。もう一人速報くれた友人(yanaさんもお知らせありがとう)が「原文読みたいなあ」って言ってて探してみたの。読めて良かったよね。
「要するにこういうことだった」と誰にでもわかりやすく伝えなければいけない、とかいう何か暗黙(もしくは明文化された)規定のようなものがあるのかもしれないね、新聞などの大きなメディアには。
それによって消えてしまう元々の手触りも、こうやって検索すれば探ることが出来るというのは本当に有り難い時代だよね。
> ちゃんと自分の目で見て、手で触らない物は信じない。というのはとてもハルキ氏らしい、とも感じました。
> ああ、なるほどな、と、彼のいままでの小説のいろいろなシーンが思い浮かびました。
そうそうそう、ほんとに。何だかほっとしてしまった。エルサレムポストの記者さんもハルキ読者なのかしら?何となく好意的な書き方なような。
あと嘘つきだけど今日は数少ない嘘をつかない日にも笑った(^ー^)