ひとつ前の記事にネットの感想をまとめました。
次は自分の感想。湿っぽいです。
どちらもネタバレを含みますのでご注意ください。
アニメは最終回まで放映されたけれど、原作にはその後の短編などもあるので、原作未読派さんたちは特にご注意くださいませ。
まずはアニメについて。
ほんっとうに素晴らしかった!!
作画の緩急というか、ちょっと作画が怪しいところもちらほらあったのですが、キメのシーンは毎回きっちり美しい絵をもってきてくれて、本当によくがんばってくれたと(スポーツチームの監督か)。
声の演技も申し分なかったし、脚本の削り方も潔かった。長編超人気作品をね、アニメ化するのならば、このくらいの気概を見せて欲しかったんですよ!なあみんな!!寄生獣みたいなことになってしまわなくて!!本当に良かったと今滂沱たる涙で万感の思いを込めて汽笛がムキー!!寄生獣を返せ!!まともなアニメ化して戻せ!!
失礼、取り乱しました。
原作も含めたストーリーについて。
先ほどもちらっと書いたのですが、私が原作を読んだのは完結後にまとめてで、全19巻をほとんど一気に読んだので、ちょっと消化しきれていないところもありました。アッシュが死んでエンド、というのが受け入れられなかった。ここまで読ませておいて結局死ぬんかい!!と。いろいろがんばったのに全部無駄じゃん!こんなのってないよ!と思っていました。
だからというか、世間で言うほど『バナナフィッシュ』の評価が高くなかったんですよね、自分の中では。
でも、今回アニメ化の報を受けた半年ほど前に、20年ぶりくらいに原作を読み返してみたら。まあとにかく、”アッシュ”というキャラクターが強烈すぎて。魅力的すぎて。
すごいなあと改めて、20年遅れてしみじみ思わされました。
この神がかった魅力。
大人になってから『あしたのジョー』を読み返した時、矢吹丈について感じたのと似たようなことを思いました。
主人公だし、天賦の才もあるのだけれど、決して幸福で順風満帆ではなく、努力もして、逆風に苦しんでもいて、そんな中ふと窓を開けて見る夜の雨上がりの景色が輝いていたり。
そんなような、とてもひっそりとした、静かな物語なのだなあと。
ド派手な展開が多いし、主人公も派手なんだけど、描きたいのはそこじゃないのだなあと。
先ほどネットの声の中に、作者吉田秋生先生が連載初期の頃にインタビューで「夭折する哀しみを描きたかった」と言っておられた、とありましたが、はじめから決められていたのだなあ、と改めて思いました。がんばったのに死んでしまった、ではなく、死ぬまでをいかに生きるか、いかに生きたか、という物語だったのだな、と。
それから、同じく何回か前のネットの声の中に、アッシュという存在は男性社会の中で虐げられる女性を暗喩している、というのも、なかなか感じるところがありました。直接そんなふうに言ってしまうとあるいは無粋かもしれないのですが、そこまでダイレクトじゃなくとも、アッシュが魂の自由を得るためにもがく姿には、当時の掲載誌『少女コミック』読者の大多数を占めていたであろう女の子たちへのエールがこめられていたのかもしれない、と思うと、なかなかに胸が熱くなるものを感じます。
大人から、少女たちへ。幾原邦彦の『少女革命ウテナ』といい、対象は少女だけではないけれど上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』シリーズといい、大人から子供たちへ手を差し伸べるような、背中を温めるような、そういう物語だと思うとなおさら、読後の深みが増すというか。
もうあの、しかし、そういう理屈は抜きにしてもアッシュの美しさです。
画集を見ても、佇まいの絵になること。立っていても座っていても、そこに佇んでいるだけで物語になる。すごいキャラクターだなあ、と思います。
それがあなた!今回のような、現代的で美しい絵により、動いてしゃべるとか!
すごい時代になったものです!
アッシュのキャンディーバーが視聴できる世界に俺たちは生きてる!
アッシュのアニメでのキャラデザ、金髪の輪郭線が茶色だったのも良かった。透けるような儚さが際立っていた。金髪キャラなら他にもいるけれど、色素の薄さや、他から抜きん出た、目を奪われるような特別な外見、ということが表現できていたように思う。
先ほども少し書きましたが、原作で印象的だったシーンが、アニメでもほとんどそのまま再現されていたことも驚きでした。シャフトか!シャフト並みの再現力!キャラの表情や立ち姿だけでなく、コマの中の余白まで一緒で。原作を大事にしようとしてくれていることが伝わってきて、見ていてとっても気持ちが良かった。外さない。外さない公式さん。おさえてくる。大事なところをきちっとビシッとおさえてくる公式さんでした。
本当に面白かった。原作もアニメも、素晴らしい作品でした。
『光の庭』、私は好きだったのでぜひアニメ化してほしいなあ!
それから『夜叉-YASHA』も!
『バナナフィッシュ』のあと、作者さんもアッシュのような「超絶美形で天才的な頭脳や身体能力の持ち主、だけど孤独」というキャラクターをまだ描き足りず、今度こそもっと違う形での救いを与えてあげたかったのかなあ、と思いました。今回くらい気合い入れてくれるのなら、『夜叉』と続編『イブの眠り』もぜひアニメ化してほしいなあ。
いやーほんとにおつかれさまでした!
良い作品だった!
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