はい。村上春樹ムリになりました宣言のこの勢いで書いてしまいますと。懺悔したいのですこの場で。蒼井優ちゃんに謝りたい。
何年か前、新井英樹さんに原画展のサイン会でお会いした時にですね。映画宮本のお話になりまして。蒼井優ちゃんが、フェラのシーンいる…?と懐疑的だったそうで。そこまでする必要ある…?と。そこで原作者新井さんも、池松壮亮くんも(監督もだったかな?)、いるよ!!必要だよ!!と力説したそうで。蒼井優ちゃんは、ええ〜〜?と渋々…な様子だったけれど、最終的には周囲に説得されてそのシーンを撮影したと。
私ね、その時つい、「あれは必要ですよ!いりますよ!」と興奮気味に、新井さんに同意してしまって。
それを謝りたい。
インティマシーコーディネーターの必要性。
いや大真面目に。今回大真面目です。3000字。
そのシーンが、本当に作品表現にとって必要かどうかを、原作者や主演俳優や監督のゴリ押しではなく、女性俳優さんの疑問や葛藤、躊躇や拒否感などもきちんと尊重して、汲み取る人が絶対に必要だな、と、昨今インティマシーコーディネーターさんの存在を知って真っ先に、この時の自分の反応も含めて、思い出して猛省しました。
だって、原作者や主演俳優や監督、すべて男性たちだけど、「女性の原作者ファンもあのフェラシーンは作品に必要!と同意していた」という一票になってしまった、ような気がして。私の賛成によって、蒼井優ちゃんの「ええ〜」が、ただの女優のワガママ、みたいな扱いにますますなってしまうような気がして。もちろんただの一ファンである私一人の反応や発言がそんな大きな力を持つわけじゃない。でも、持つかもしれない。天秤を傾けてしまうかもしれないじゃないですか。
一人の女性を取り囲んで、男性たちが性的なシーンの重要性を力説している時、私は男性側に加わってしまったようなもので。それを後悔しているのです。女性の側に立つべきだったな、と。
だから謝りたい。蒼井優ちゃんに。
そしてインティマシーコーディネーターさんを入れてほしい。あらゆる作品に。
あの、新井作品からもここ数年離れてまして…宮本だけじゃなく、女性の扱いが…うううーん…どうしてこういうふうにしたんだろう…という疑問がふつふつと…。それをやはり、漫画家さんが一人で頭の中でストーリーを作ってそういうシーンを描くのと、生身の女性に演じてもらうのとだとやはり訳が違うと思うのです。表現方法が変わって当たり前だと思う。何でもかんでも原作に書いてあるからその通りやればいいってもんじゃない。池松くんだって原作通り歯を抜こうとしたのを新井さん止めたって話なのに。フェラシーンを入れるか入れないかも、歯を抜くのと同じくらい、心に傷をつける表現だと、繊細に扱ってほしい、のです。いち映画ファン、漫画ファンとして。
そう考えると、確かにあのフェラシーン必要か…?と、疑念が沸く。
靖子がだめ、見ちゃ、って言ってるのを(正確には「らめ」なんですけど。くわえてるから)宮本がなんとも言えない表情で見てるんですよね。なんだろう…征服してる感…女さんの考えすぎかもしれんけどな!ていうかそもそも、靖子が生理中で挿入できないからって口で出してもらう、っていうこと自体が。それを男が嬉しそ〜に見下ろしてるっていうのが。恋人同士の甘い関係にもう見えない。しかも靖子は恥ずかしがってるし。そういうのね!確かにわざわざ生身の女性に演じさせる必要ある!?なくない!?ていうか嫌なんだけど!と抗議したい蒼井優ちゃんの気持ちがやっとわかった。いやこういうふうに思っていたのかはわかりませんが。
でも、このシーン必要と思えないんだけど、という演者の訴えを、「いるだろ!」で済ませずに、丁寧に掬い取ってほしいな、と。すごく思うのです。せめて今後はあらゆるフィクションで。あと現実でもね!!当たり前だけどさ!!
あの、『万引き家族』の中でもね、リリーフランキーさんが何かのインタビューで言ってらしたんですけど、濡れ場は台本には書かれてなかったのに、現場に行ってみたらなんの説明もなく前貼りが置いてあってどうぞーみたいな感じで面食らったと。でも安藤サクラさんはなんにも言わずにさっと用意を始めて、やっぱり女性の方がこういう時は腹括って強いですね、みたいな良い話として語ってらしたんですけど。
これも!インティマシーコーディネーター案件ですよね!?
そういうのを、女性俳優さんの、いわゆる「女優魂」みたいな、やる気の問題、みたいに扱わないでほしい。やりがい搾取。あと現実でもね!!もっかい言うけどさ!!
あの、こういうお話といえば!ましゃのぶです!
NHKドラマ10『大奥』について、素晴らしいエッセイを書いてくださって…それを他ならぬインティマシーコーディネーター浅田智穂さんがご紹介されているツイートがこちら。
NHK #ドラマ10大奥 でご一緒した高嶋政伸さんが、新潮社『波』のエッセイでICについて書いて下さいました!素晴らしいお芝居と撮影に対する真摯な姿勢のみならず、さらにこんなに引き込まれる文章まで書かれるとは!#インティマシーコーディネーターhttps://t.co/R5OUYHGP38
— Chiho Asada / 浅田智穂 (@ChihoAsada) March 27, 2024
(映り込んでいる十二国記が嬉しい)
高嶋政伸さんの文章はこちら。
■おつむの良い子は長居しない 第12回/高嶋政伸 波:2024年4月号 | 新潮社
素晴らしすぎる…あのキモは1000%エンドレスサマーだったましゃのぶ家慶…中の人はこんなにも紳士で真摯だとは…演技力凄すぎる(褒めて…るつもりなのに失礼すぎて本当にすみません…)
ここまで役者さんの心に配慮して作られていたとは、本当にますます好きになりましたNHK大奥。安心して楽しめる。
こちらの文末で、インティマシーコーディネーターのライセンスは米国でのみ取得可能(2024年4月号掲載内容)、とありますが、私も調べてみたらまさに浅田智穂さんが日本でもライセンス取得できるよう準備をされて、今まさに!後進を育てていらっしゃる真っ最中だそうで!すごい!
■インティマシーコーディネーター浅田智穂さんに聞く 作品づくりにおける「新たな仕事」の意義と重要性 ~後編~
株式会社Blanket(ブランケット)!
■株式会社Blanket | インティマシーコーディネーター 浅田智穂
少し前、映画『ラストマイル』でもちょっと話題になってたんですよね。幼い娘に向かって母親がきいっと怒ってしまうシーンが、もしかしたら、子役さんと母親役の人と、別撮りしてるんじゃないか?と。子役さんにほんとに直接怒りをぶつけるのではなく。演技とはいえね…幼児には恐怖体験じゃないですか。なので、別撮りにして、直接怒鳴ったり睨みつけたりせずに済むように撮影したのではないか?と。あくまで見た人たちの想像なのですけど。でもあのチームなら、アンナチュラル、MIU404、ラストマイル、そして海眠の野木塚原新井チームならやってくれかねない。
暴言にしろ性被害にしろ、直接的な役者さん同士のやりとりがなくても十分すぎるほど伝わってくる。それでいいんだよ!ほんと!そういえば私だいぶ前ですけど、女性俳優さんにやたら自慰行為をさせたがる映画監督について疑問を呈したことがありました。2008年か。だいぶ前だな。変わってないなあひるちゃん。あっそういえば!ブログ始めて20年経ちましたー。2004年12月13日からだったのです。過ぎちゃっとる!一応その日に記念記事書こうかと思ってたのにすっからかんにうっかりしてた。でもちょうど年末蔵出し真っ最中だからまあ祭りみたいなもんってことで。この記事もわりと20周年にふさわしい、ぶれてないなって内容ですしいいかしら。
そんなわけで皆様本当にいつも読みに来てくださってありがとうございます。本当に。まことに。(これなんだっけ…ぼのぼの…?)いやほんとに。ありがとうございます。
20周年おめでとうございます!
そして続けて下さってありがとうございます。
そのおかげでこのブログに出会えたんですもの。
確かに、新井さんのネタがぷっつり出なくなったなとは思ってましたが。
そうか、宮本の映画でそんな事があったのですね。
生理で挿入できないから口で…って、でも男性は皆当たり前に要求するんですよね。
私もありますコレ。
ほんと嫌だった。
なんでアンタの性欲処理を担わなきゃいけないの?って、心から思って、一気に醒めましたね。
男性はそれが愛情だと勘違いしてるのが、ほんとたち悪い。
現実がこんな事ばかりだから、フィクションくらいはそうあって欲しくないのですが…。
なんか悲しくなっちゃいます。
k.satさん
わーありがとうございますー!ここ最近は本当に、k.satさんの存在がモチベーションになってます。本当にありがとうございます。読んでくださる方、コメントくださる方がいてこそ書き続けられるんだよな、と実感しています。これからもどうぞよろしくお願いします!
コメントも、どうぞご無理なさらないでくださいね。余裕がある時だけ、書きたい時だけ頂けたら十分ですので。
そしてそれ!男性はそれが愛情だと勘違いしてるのがほんとたち悪い!!それェ!
現実がこんな事ばかりだから、フィクションくらいはそうあって欲しくない、ほんとそれですよね。逆にそんなフィクションが多いから、若い女の子たちもこれをやらないと愛情だと思ってもらえない、と勘違いさせられるので、フィクションこそ変えていかないと、と思います。
映画映像業界、芸能界の性行為強要って、本当に根が深いというか浅いというか…男たちの欲望のままだったのがようやく問題視されつつあるので、このままどんどん変わっていくといいなと思いますね。
20年おめでとうございます!もはやきっかけが何だったか…と思い出せませんが、いつも楽しく拝見しつつ学ばせていただいてます。これからも無理のない範囲で書き続けてくださると嬉しいです。
インティマシーコーディネーターというお仕事、ここ数年でやっぱりドラマなどで知って浅田さんの記事など興味深く拝見しつつ、後進の心配を勝手にしておりましたが、日本でもライセンス取得が可能になるかもとのこと、これまた勝手に安堵しました。
女性のためももちろん、男性のためにもなるよう向かっていくといいな。
シベリアさん
ありがとうございますー!そうですね、もうずいぶん長いこと来てくださっていて…ほんとにありがとうございます。
インティマシーコーディネーター、ほんと当たり前になってほしいですね。男性には男性の専門家がサポートに入れるように、男女共に増えてほしいなと思います。