花よりも花の如く 6 (6) (花とゆめCOMICS) 成田 美名子 白泉社 2008-11-05 by G-Tools |
『花花』最新巻6巻に載っていた狂言の演目、『月見座頭』が気になったので検索してみました。メモ。
あらすじは、月の夜に虫の音を聞いていた座頭と、月見をしていた上京(かみぎょう)の男が仲良く酒を酌み交わし語り合うのだが、別れる段になって突然男が目の見えない座頭を掴んで突き倒すなどの乱暴をはたらく。それを同一人物と気づかない座頭は、先ほどの男のような人もいるのに、ひどいことをする人もいるものだと一人悲しむ。
という。なんかとんでもないお話なんですが。
調べてみると、大体の感想は似ているのですが人によって細部の受け取り方が様々で面白かったです。
どきりとする解釈がこちら。
■いくっちの多忙な日常?! : 月見座頭 – livedoor Blog(ブログ)
【上京の男は座頭に声を掛けたこと自体が座興だったのだ。】
そこからですか!!
さらに冷酷な解釈はこちら。
【要は、「目が見えないくせに、偉そうにしてるからひどい目にあうのだ」ということです。
座頭を見下ろす笑いが最後の最後に残されているのですが、残念ながらそのことに気がつく人は皆無のようです。 】
な、なんてことを。
大抵は、「はじめは座頭との一時を純粋に楽しんでいた男が、帰る段になってふと気を変えてしまい、」という解釈のようですが。そこが人間の二面性を現している、と。
『花花』にも「二面性というのは最近の解釈」とありましたので、「情けは人のためならず」の解釈と同様に、現代になってマイルドな意味合いにシフトしていったのかもしれません。
上2つよりもう少しマイルドだけれど、やはりもの悲しく、かつ否定しがたい説得力ある解釈がこちら。
【前半は男との心通い合う酒宴ですが、そこで男が詠む古歌や謡は名月に関するものですが、一方、座頭はあくまで虫の音に関するものばかりです。一見、共に楽しんでいるように見せながら、後半、実際には心通い合ってはいなかったことを暗示するのかもしれませんね。】
心情的に一番共感できたのはこちらのレビューでした。文章も静かで美しい。
■BigBang: 「月見座頭」——-青く冷たい空間と人の二面性
【打ちひしがれた座頭が、ゆっくりと嘆きつつ退場していった後、客席はそれぞれの思いにしんと静まり返っていたことを今でも思い出す。】
【自分はこの座頭を打ち倒した男のようなことをしたことが全くないかと考えると、否定する自信はない。あまり思い出したくない幾ばくかの記憶がよみがえるような気がして、あわててそれを振り払う。】
【二面の邪性からどうして自分だけが逃れられようか。】
『花花』の物語の中では、家族の事情、それを意識したことによって弟(成田美名子の前作『NATURAL』のキーパーソン、西門さんです)とうまく接することができなくなってしまった主人公のケントくんが、座頭を突き倒した男に自分を重ねて煩悶します。
5巻の最後でずいぶんと不穏な雰囲気だったのですが、それほど痛々しい展開にならず穏やかな決着がついてほっとしました。
ケントくんと西門さんのご両親やじいさまたちは、仕方なかったとはいえ大人の都合で子供たちを泣かせ、20年以上の間悩ませてしまってさぞ心が痛かっただろうなあ、ともはや若い主人公より親世代に感情移入してしまう自分を発見したり。
あ、でも1巻の頃は23歳だったケントくん、いつのまにか28歳になってましたね。時間が進んでるんだなあ。
**あひると花花、成田美名子さん(blog内Google検索)**
花よりも花の如く 6 (6) (花とゆめCOMICS) 成田 美名子 白泉社 2008-11-05 by G-Tools |
花よりも花の如く 5 (5) (花とゆめCOMICS) 成田 美名子 白泉社 2007-08-17 by G-Tools |
NATURAL (第2巻) (白泉社文庫) 成田 美名子 白泉社 2003-12 by G-Tools |
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