村上春樹「僕はなぜエルサレムに行ったのか」文藝春秋4月号に掲載 [翌日追記]

3/10発売の文藝春秋2009年4月号に、「僕はなぜエルサレムに行ったのか」というタイトルで、村上春樹への独占インタビュー、そして受賞スピーチ全文、日本語と英文の両方が掲載されていました。
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今までネット上のメディアに掲載されてきた日本文スピーチと大きく違う点は、「英文スピーチの日本語訳」ではなく、「英文スピーチの前段階として、まず始めに村上氏自身によって書かれた日本語の文章」というところです。元祖、村上春樹のスピーチ原稿、というわけですね。
英文のほうは、47トピックス掲載のものとほとんど同内容です。


[2009/3/14/1:20追記]読んで最初にへえ、と思ったことを書き忘れてしまってました。
文藝春秋の英文は、タイトルが今までネット上に出ていたものと違い、“Of Walls and Eggs” となっていました。これが正式なタイトルのようです。[追記以上]
同じく、クーリエジャポン4月号にもスピーチ全文が掲載されていますが、こちらはインタビューなどは無く既出のスピーチのみでした。イスラエルニュース Haaretz 掲載バージョンとほぼ同じだと思います。文藝春秋/47トピックス掲載のものと9割くらい同じですが、若干違いがあります。[注]
それから、クーリエジャポンの日本文はそのハアレツ英文の日本語訳です。なので、個人的には文藝春秋のほうがおすすめ。(うっかり中身を確認せずに両方買っちゃったけど、文藝春秋だけでよかった。。)
本人の手による日本語スピーチに加えて、今回のことにまつわる様々な思いが詳細に、8ページに渡って綴られています。
現在起こっているイスラエル・パレスチナ紛争にとどまらず、ホロコースト、原理主義、地下鉄サリン事件、ベトナム反戦運動そしてその失敗・挫折を経験した春樹氏の世代。様々な問題、事象がすべて連綿と関係し、繋がって派生していっているのだ、ということを、それは当たり前のことなのかもしれないけれど、私はこれを読んで改めてひしひしと感じました。
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[注] 47トピックス掲載版Haaretz 掲載版の違いについて。
1:最後の段落の言葉の多さ。
Haaretzはあっさりで、47トピックスのほうがもうちょっと情感がこもっています。
2:序盤~中盤の段落の有無
ただ逆に、Haaretzにはある段落が、47トピックスでごっそりと抜けているところもあります。全体の主旨は変わりませんが。
以下の部分です。
(Haaretzにのみ載っている段落=緑色
【And that is why I am here. I chose to come here rather than stay away. I chose to see for myself rather than not to see. I chose to speak to you rather than to say nothing.
This is not to say that I am here to deliver a political message. To make judgments about right and wrong is one of the novelist’s most important duties, of course.
It is left to each writer, however, to decide upon the form in which he or she will convey those judgments to others. I myself prefer to transform them into stories – stories that tend toward the surreal. Which is why I do not intend to stand before you today delivering a direct political message.

Please do, however, allow me to deliver one very personal message.】

間違い探しのように細かい違いを並べ立てたいわけではなく、どこがどのように違うのか、どういうバージョンがあるのかを把握しておきたいな、と思ったのでメモとして書いておきます。
違っていたらごめんなさい。チェックミスだと思うので、ご指摘頂けると嬉しいです。

**関連あひる**
割れる卵、タフであるということ ~村上春樹のエルサレム賞スピーチメモ、その5
春樹スピーチメモ4:動画とほぼ全文と思われるスピーチ英文
その他春樹スピーチメモ:123
村上春樹、カリフォルニア大学バークレーでの講演(2008/10/24)村上春樹、ノーベル賞?(2008/10/06)
ハルキ氏、プラハにて人生初記者会見(2006/10/31)ノーベル文学賞発表、ハルキ受賞ならず(2006/10/14)ハルキのやなぎにオコナー賞(2006/9/25)
[2009/3/14/1:20追記、もうひとつ]
関連リンク。
裏[4k]:正論原理主義に効くクスリとしての落語
4kさんの、まだ原文が出る前の「ハルキは結局イスラエルに行ったらしい」段階の時の記事「あえて火中の栗を拾う村上春樹」というタイトル見て吹きました。
[2009/3/14/20:30さらに追記]
「僕はなぜエルサレムに行ったのか」(文芸春秋/4月号) :Paqn! ミカニッキ
【ブログやtumblrで断片をチェックしている方、特に『ネット空間にはびこる正論原理主義を怖いと思う』という引用がひっかかる方は、最初から最後まで自分の目で確認して、自分の読解力で読んだほうがいいんじゃないかな。断片は断片なんだなと分かるから。】(ネタ元:SW’s memo
それ!!それが言いたかった。[追記以上]

416369580X 走ることについて語るときに僕の語ること
村上 春樹
文藝春秋 2007-10-12

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“村上春樹「僕はなぜエルサレムに行ったのか」文藝春秋4月号に掲載 [翌日追記]” への2件の返信

  1. 村上春樹新作長編「1Q84」5/29発売

    おお!意外に近い!
    ハルキ好き友人が取り上げていました。
    1Q84(1)著者:村上春樹販売元:新潮社発売日:2009-05-29
    1Q84(2)著者:村上春樹販売元:新潮社発売日:2009-05-29
    全2冊、同時発売のようです。今のうちから予約しておこう。

  2. 村上春樹 カタルーニャ国際賞受賞スピーチ、動画と原稿全文 [地震関連]

    究極映像研究所さんの記事で、初めて知りました。スペインのカタルーニャ国際賞を受賞した村上春樹氏が、バルセロナで行われた授賞式でスピーチをしたのだそうです。
    ■■村上春 …

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