本当はめでたしめでたしな『うらしまたろう』[絵本の話][気になって調べてみた]



あらまあ。
ひとつ前の記事で、古い絵本を読んで勝手に想像した『うらしまたろう』の透明な哀しみについてついついしたためてしまいましたが、世の中やはりあの結末はあんまりだろうと疑問に思って原典をあたった方がいらしたようで、TVのネタになったりもしていたのですね。でもそのTVで紹介された解釈にも疑問を呈する方がいらしたり。ほうほう。興味深い。
と、調べていったら面白かったのでまとめてみます。

まずは、一番上にヒットする記事。

(2015年11月28日)
「浦島太郎」にカットされた真の結末 永遠の命もつ鶴に生まれ変わる – ライブドアニュース

疑問の解決編VTRでは、かつて同局で放送していた「トリビアの泉」で、「浦島太郎は玉手箱を開けて、おじいさんになったあと、鶴になった」というトリビアが紹介された過去が明かされる。

浦島は亀を助けるという良いことをしたのに「なぜ罰を受けたのか?」という疑問には、「トリビアの泉」にも出演した立正大学の三浦佑之教授が「罰を受けるという風にとる必要はないと思います」とコメントした。

三浦教授によると、元来のあらすじは、浦島が竜宮城から故郷へ帰ってくると、700年の歳月が過ぎたことを知ってしまい、途方に暮れる。そんな浦島の手には、持ち帰ってきた玉手箱があった。実は、これには浦島の魂が封じ込められており、浦島は老いない体になっていたのだ。そこには、乙姫の「浦島に再び会いたい」との思いが込められていたのだという。

そのことを知らない浦島は玉手箱を開けてしまい、鶴に生まれ変わって永遠の命を与えられた。鶴になった浦島は、亀に姿を変えた乙姫と再会し、長く愛しあったそうだ。

この物話を、三浦教授は「鶴になるということはハッピーエンドという風に考えれば、この話は決して残酷な話ではない。ラブストーリーである」と、本来の物語について教訓を語り、疑問を解明したのだった。


ほほう!
昨日書いた「玉手箱はビーコン説」、乙姫が恋しい浦島太郎に「ふたたび会うまでの遠い約束」として渡した説、だいたいあってたっぽい!

ただ、そこは良いのですが、番組で紹介された別の内容にちょっとそこは違うんじゃないのか?と異議を唱える人も。

問題の箇所は、さきほどと同じリンク先の、「教訓のために改ざんされた」という点です。
これに対して、そんな理由で改ざんするとかないんじゃないのか?と思って調べた、というのがこちらのブログ。

(2015-11-30)
浦島太郎の謎 – 国家鮟鱇

ライブドアニュースには

もともと、「浦島太郎」が書かれたのは室町時代の御伽草子。その400年後の明治29年に、児童文学者の巌谷小波氏が子供向けに書き直したものが、現在よく知られる「浦島太郎」の物語なのだそうだ。その際、巌谷氏は「約束を破ると良くない」という教訓を伝えるため、鶴になる部分をカットしたらしい。

とある。「らしい」とあるので巌谷小波本人がそう言ったというわけではなくて、誰かがそう推測したのだろう。それが誰なのかはわからない。どこかの研究者がそう推測したのかもしれないが、番組のライターが推測したのかもしれない。

(2015-12-01)
現代の「浦島太郎」に鶴になった話が無い理由 – 国家鮟鱇

巌谷小波の「浦島太郎」が発表されたのが1896(明治29)年

『校註日本文學大系19』が出版されたのが1925(大正14)年

この『校註日本文學大系19』は浦島太郎が玉手箱を開けて鶴になったという解釈を採用していない。少なくとも記述していない。

以上を考慮すれば、巌谷小波が「浦島太郎」を書いた当時は、浦島が玉手箱を開けて鶴になったという解釈は存在しなかったか、または主流ではなかったのではないかと考えられる。

現代の「浦島太郎」に鶴になった話が無い理由(その2) – 国家鮟鱇

素人の主張か学者の主張かにかかわらず、「○○のために改ざんした」なんて話を聞いたら十中八九間違っている、いや100のうち99は間違っていると考えた方が良いのである。


なるほど!

このかた、玉手箱についてこんなこともおっしゃっていました。

浦島太郎と魔法少女 – 国家鮟鱇

玉手箱に浦島太郎の魂が封じ込められているのだとしたら、

浦島太郎の本体は玉手箱ではないだろうか?

すなわち

ソウルジェム

ソウルジェムとは – はてなキーワード

の同類であり、玉手箱を開けるというのは、ソウルジェムを破壊するという行為と同じなのかもしれない。


玉手箱=ソウルジェム!!
わかりやすい!!一部の人にはものすごくわかりやすい!!



それから、原典『御伽草紙』を引用しながら現代語訳を載せてくれているサイトもありました。面白い!
肝心のとこだけ引用させて頂きますが、太郎が亀に恩を着せていたり、乙姫が実は亀だったりけっこう意外な展開で楽しいです。ぜひリンク先で全文ご覧ください。

(2016年12月20日)
童話「浦島太郎」。驚きの原作の内容とは? ほのぼのスタイル

すると箱の中から紫色の煙が三本立ち上ってきました。24~25歳だった浦島太郎の姿がみるみる変わっていきます。
最後には浦島太郎は“鶴”になってしまいました。
鶴になった浦島太郎は大空に羽ばたきながら思いました。

恐らく竜宮城に居ている間は元の世界の何倍もの速さで年をとってしまうんだ。
人間ならあっという間に死んでしまう。
竜宮城のカメ(女性)は、私が年をとらないように私の“歳”をあの箱の中に入れててくれたんだ。
そして、もし箱を開けてしまった私の為に千年生きるといわれる鶴に姿を変えてくれたんだ。

鶴になった浦島太郎は、蓬莱の山に向かって飛んでいきました。

その後、浦島太郎は丹後の国に浦島明神としてあがめられました。
竜宮城のカメも同じ場所に神として現れ夫婦の神となることができました。

めでたしめでたし。


なるほどなるほど。これなら「めでたし」ですね。
さらに原典には、最後の解説のようなものがついているのだそうです。
同じリンク先から、原文と現代語訳を並べて引用させて頂きます。

童話「浦島太郎」。驚きの原作の内容とは? ほのぼのスタイル

生あるもの、いづれも情を知らぬといふことなし。いはんや人間の身として、恩をみて恩を知らぬは、木石にたとへたり。
(中略)
只人には情あれ、情のある人は行末めでたき由申し傳へたり。

“生あるものは情があって当り前!”
“恩を知らない人間は、木や石と同じ!(心を持たない)”
(中略)
“情に厚い人ほど幸せが訪れると伝わります。”

以上が浦島太郎のもととなった『御伽草子』(おとぎぞうし)の中の「浦島太郎」です。
終わり方としては、個人的にこちらの方が好きですね。
玉手箱を開けてしまってからはあまり詳しく書かれていませんが、玉手箱を開けてお爺さんになってしまった後に、
“悪いことをしたら自分に返ってくるよ”という教訓で終わるよりすっきり終われている気がします。

僕が驚いたのはこの「浦島太郎」の最後に書かれている人間のあるべき生き方です。
いつの時代も同じような教訓が伝わっています。
教訓が伝わるという事は、人間がそこまで成長できていない証拠ですよね。


なるほどなるほど〜。面白かった!!
浦島太郎も乙姫も幸せでほっとしました。今度から鶴と亀になって仲睦まじく幸せに暮らしたんだって、というディレクターズカット版エンディングの話もうちの子タロー4歳にしてあげよう。なんでなんで?と質問責めにあいそうですが。ねえ。なんでだろうね。母ちゃんも気になって調べてみたんだよ。

っていうお話でした!

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似たような「気になって調べてみた」系。

2008-11-09 我が子の首を前に ~歌舞伎と古代ギリシア
2008-11-09 月見座頭 ~成田美名子『花よりも花の如く』6巻

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