サンタクロースはいるのかいないのか論争

急行「北極号」
クリス・ヴァン・オールズバーグ
あすなろ書房
2003-11-10


サンタクロースの扱いが酷い映画をご紹介した流れで、この微妙な話題!
世界的に大変繊細な、厳重取扱注意議題!!

えー、サンタクロースはいるのかいないのか論争。

一番危険なのが、小学校高学年とか中学生くらいですよね。いや、今時はもっと下かなあ?

サンタなんてほんとはいないんだぜ~とか半笑いで言い出すあの手のお年頃に限って、実はそんな自分の疑いを大人に否定してほしがっている。そこの揺らぎに気づかず「お前それ弟(妹)の前では絶対言うなよ」と釘を刺したら「…もしかしたら…って思ってたけど、やっぱり本当だったんだね…」と長男のピュアなハートにとどめをさして傷つけちゃった、という話を友人から聞いた時には泣きました。お、お前ら大人ぶるのもたいがいにしろよ!!罪悪感ハンパないわ!!

でもね、世のサンタ論争には段階があるのだと、親になって知りました。

幼少期→「サンタさんイエー!」(疑いすらない)

反抗期→「サンタなんてほんとはいないんだぜ~(ちらっちらっ)」(こまっしゃくれた半端者)

親期→「サンタまじで存在した」←今ここ

いやあ、こういうことだったのかと。
大人になればもう一度わかる日が来る。サンタいるって。
だから友人ちのご長男も、今は「いない」が本当だと思って打ちひしがれてるんだろうけど、大人になったら「やっぱマジでいたし」ってわかると思う。その日を楽しみにしていてほしいな。楽しいよ?サンタがいる世界。

幼稚園のママ友さんちではサンタさんはamazonと提携してるんだそうで、だからamazonにあるものの中からプレゼント選んでね、って言ってるそうです。amazonやるな!超大口取引先!

あとクリスマスプレゼントといえば、昔オットくんからリアルタイムに聞いた、妹ちゃんが小学生の頃、サンタさんへのリクエストを直前で変更したもんだから交換が間に合わず(昔はamazonもなかったですしね…)、25日の朝目が覚めて、まっさきにツリーの下に飛んで行ってプレゼントを開け、違うものが入っているのを目にした妹ちゃん…!
両親と兄二人が固唾を飲んで見守る中…

無言で包み直し、また布団に入って寝た。

という雄弁な抗議のエピソードが大好きです。毎年この時期になると話題にのぼります。

もうひとつついでに。
サンタ論争で思い出すのはこの絵本。

急行「北極号」
クリス・ヴァン・オールズバーグ
あすなろ書房
2003-11-10


こう言っちゃあれなんだけど…、この村上春樹訳のクリスマス絵本のラストに、何となく引っかかるものがありまして。

「お父さんお母さんには聴こえないらしい鈴の音が、僕と妹、友人たちには聴こえた。でも年月が経って、彼らの耳にはもう沈黙しか聴こえない。僕は大人になったけれど鈴の音は耳に届く。心から信じていれば、その音はちゃんと聴こえるんだよ」

ってどうして他を落として自分を上げる必要があるの?
妹や友人たちなど「普通の(心の鈍い)大人」には聴こえないけど「(子供の心を失わない繊細で純粋な)僕」にはちゃんと聴こえるんだぜ(ドヤァ)みたいな?

なんかやな感じ。その選民意識いけすかない。
と思ってしまいまして。
ごめんね春樹さん。春樹さんのせいじゃないと思うし、原作のせいでもないと思う。私の変なセンサーにひっかかっちゃっただけだと思うんですけど。

同じそういうことを言うのなら、あれですよね。
先ほどのサンタ論争にもうひと段階加えるのなら、これですよね。

島本和彦期→「サンタになれ!!」

こうありたい!!
さすが島本先生です。さっきの絵本より島本先生の方が数段潔いと思う。

でもね、さっきの絵本も好きなんですすごく。いきなりdisっておいてすいませんけど。
初めてこの絵本を知ったのは、児童館の絵本読み聞かせの会でした。
そこに足繁く通っていた、うちの子タローが赤ちゃんの頃。ちょうどクリスマス時期、その日の最後の一冊に、読み聞かせのおばさまたちがこの絵本を紹介してくれて、「これは、お子さんたちにはちょっとまだ難しいかもしれないんだけど、日々子育てを頑張ってらっしゃるお母様がたに、私たちから」と読んでくれたのです。

内容ちっとも知らなかったので、せっかくサンタさんからもらった鈴を落としてしまってがっかりした…というくだりでは私も本当にがっかりしてしまって。

サンタクロースが世界中の子供たちのためにプレゼントを作っている「北極点」という秘密の街に連れて行ってくれる「急行北極号」、子供たちだけが乗れるその列車に乗って、サンタさんから「今年のクリスマスプレゼント第一号」をもらえるという栄誉を授かった「僕」がリクエストした、トナカイの首についた銀の鈴。だけど列車に戻ったら、ポケットに穴が空いていて鈴はどこにも見当たらなかった。

えええ!?なんだよ、せっかくワクワクを最高潮まで盛り上げておいてそんな形で無理矢理夢オチに持っていくつもりかよ!
証拠品がなければ何とでも言えるわよね、汚い!大人は汚い!と、聞きながら「僕」と一緒にしこたまがっかりしていたあひるちゃんだったのですが。

そのあとの展開についてはネタバレになっちゃうので明記は避けますが(今さら!って感じもするけど!)、本当に心から喜んでしまいました。
そこで聞いた「心から信じていれば、その音はちゃんと聴こえるんだよ」というフレーズには、自然と温かいものを感じました。そして読み聞かせのおばさまたちも、「ここにいらっしゃる皆さんも、鈴の音が聴こえる方ばかりですね」と言ってくださって、日々の子育てにいっぱいいっぱいで、擦り切れそうになる心をママバッグと抱っこ紐と一緒に抱え込んで居場所を求めて通っていた児童館の絵本コーナーで、本当に心から励まされました。

大人も子供も、誰かを温かい気持ちにさせたくて、わくわくしながら迎えるクリスマス。皆さんにもあたたかな夜、そして輝く朝が来ますように。メリークリスマス。

クリスマスのまえのばん (世界傑作絵本シリーズ)
クレメント・C. ムーア
福音館書店
1996-10-25



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