昔の絵本が好き。1960年、70年あたりが黄金期にして全盛期なんじゃないかと思う

ずっと書きたかった、絵本の話です!わーい!
先日の福音館書店60周年記念『絵本とおともだち』展、玉川高島屋記事にもちらっと載せた、かこさとし先生と絵本と戦後の話。
かこ先生は過去のインタビューの中で、「昭和24年頃から外国の子供向けの雑誌をとっていて、そこには戦争の間作品を発表できなかった作家たちが書きためたものがうわあーっと載っていた(要約)」と語っておられて、それが子供のために絵本を集めるようになった私がここ数年感じてきたことと重なる内容だったので、とても興味深かったです。
絵本って、1960年、70年あたりが黄金期にして全盛期なんじゃないかと思うのです。主に日本の絵本。海外のも日本で有名なものは同じ時期な気がする。
子供のために絵本を集めるようになって驚いたのですが、自分が子供の頃に読んでいたものが、そのまんまベストセラーのロングセラーになっていて、今でも第一線で読まれているのです。もちろん1990年や2000年以降にも人気作は出ているんですが、誰もが知っている馴染み深いものは大概が1960年、70年代出版。


奥付を見ると1960年、70年代、という絵本があまりにも多いので、どうしてなんだろうと不思議だったのです。きっと戦後、1945年の混乱や復興が落ち着いた頃、子供たちのための絵本が次々に発表され、そこへ1970年代の第二次ベビーブームもあって爆発的に読まれて広がって、浸透していったのかなあ、なんて、育児の合間につらつらと想像してみたのですが、かこさとし先生のインタビューによると、一足先に海外ではそういう戦後の文化の花盛りが起きていたのだそうです。日本でもそれが起こったのが1960年、70年代だったのかしらん。
かこさとし先生の過去のインタビュー。
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だからなのか、やなせたかし先生の『アンパンマン』もそうですが、1960年、70年代の絵本ってどれも、「子供のために描かれたもの」、という感じがとてもするのです。
大人が大人の都合で自分の言いたいことや売れそうなこと、一時的な流行を描いているわけじゃなく、お説教やしつけでもなく。
もっと自然で根源的な、生きることや食べること、眠ること、生活に必要なことを喜び、楽しむ感覚を、大人が子供に伝えたい、と思って描いてくれている。そんな気がして、読んでいてとても楽しい。
だから私は古い絵本が好きなのかもしれません。
それから、言葉遣いも美しい!
いわゆる文語体で、話し言葉とは少し違うし、古めかしい言い回しもあるのですが、美しい日本語表現が多い。特に昔話のような、実際に口語で語り継がれてきた物語には独特かつ自然なリズムがあって、読み聞かせていて楽しい。こういう言葉を覚えてくれると嬉しいな、と思いながら読んでいます。
絵も同じで、美しいです。子供向けに過剰にデフォルメされているわけでもなく、色使いもシンプルで。
かこさとし先生の絵本では、『だるまちゃんとかみなりちゃん』で、かみなりちゃんが落ちてくる時ちゃんと「ぴかぴか(光)ごろごろ(音)がらがらどしん(衝撃)」と、物理法則に従った順番で落ちてくるところが好きです。面白いな、と思って最後のページの作者略歴を見たら、なんとかこ先生、東大工学部卒!理系絵本作家!
それで調べてみたら、他の本もどれもいかにも理系の学者さんが(勝手に学者さん扱い)子どもたちに優しく科学を教えているような内容ばかりで、俄然大好きになってあれこれ集めているところでした。



どうぐ (かがくのえほん)
加古 里子
瑞雲舎
2001-10



こんな記事も発見。
人気絵本の秘密と戦争の時代 『未来のだるまちゃんへ』 (かこさとし 著)|書評|中島 京子(作家)|本の話WEB
本もある!
しかもkindle化、文庫化されてお求めやすく!

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)
かこさとし
文藝春秋
2017-01-20



こちらはハードカバー版かな?レビューが多いので参考に。

未来のだるまちゃんへ
かこ さとし
文藝春秋
2014-06-25



乗り物シリーズはなんといっても山本忠敬先生。絵本によってタッチが全然違っていて面白いです!

しょうぼうじどうしゃじぷた
渡辺 茂男
福音館書店
1966-06-10


のろまなローラー
小出 正吾
福音館書店
1967-01-20




乗り物絵本では、津田光郎さんも好きです!
リアルかつ丸っこくて可愛らしい、絶妙なバランス!
白が実に効果的に使われていて、車の光沢あるスチール感を見事に再現しつつ、ショベルカーやコンクリートミキサー車なんかのごつい重機もころころしていてみんな可愛いんです。
ストーリーも、この手の車系の絵本ってひたすら車が出てくるだけで内容がないものも多いけど、津田光郎さんのは最後まで読むと全部の車がちょっとしたつながりを持っていたりで、読後感がほっこりします。




安野光雅先生も大好きです。

あいうえおの本
安野 光雅
福音館書店
1976-02-20




安野光雅先生はですね~、特に「あいうえおの本」のあとがきが素晴らしいのです!!
なんて詩的で、ぶっきらぼうでシャイで、ツンデレなんだろう!本屋さんなどでぜひ見てみて頂きたい!
「あいうえおの本」と、その前に出されたという「ABCの本」、どちらもだまし絵にもなっていてすごく楽しいです。ひらがなもアルファベットも、形が似ている文字はパーツを流用してるの!「は」に横棒を足して「ほ」にしたり、「め」に丸を足して「ぬ」にしたり。「P」の一部をななめに下ろして「R」にしたり!超楽しい。子供が自分で気づく喜びを奪わないよう、見つけても教えずにこっそり楽しんでいます。

ABCの本―へそまがりのアルファベット
安野 光雅
福音館書店
1974-10-01



もちろん大好き松谷みよ子さん、「のせてのせて」は車がルパンすぎて毎回アイドルタイムにルパン三世のテーマを歌ってしまいます。もちろんジャズバージョンです。最後はカリオストロ城に着きます。



「いないいないばあ」はほんとに子供に大受け。
頂きもので0歳の時から読んでいたので、最初はあんまり反応がなかったのですが、ある日きゃっきゃと笑い出したり、自分の小さな手で動物たちの顔を隠して「ないないないないない?…ばあー!」とやり出した時にはなかなか感動的なものがありました。
しかし大好きすぎて10回くらい余裕で繰り返し読まされるので、そのうちこっちも「いないいない~、ビシャアアアア!!」と『寄生獣』の田村玲子的な効果音をつけたりしていました。ウケたけど。



他にも『ぐりとぐら』の中川李枝子・山脇百合子先生や、堀内誠一さんとか、『はじめてのおつかい』の筒井頼子,林明子先生などなども好き。もっと載せたい。時間が足りない。
日本昔ばなし系は、どれを選ぶかだいぶ悩みました。
最近の誰も死なない系の話に改変されたものじゃなく、ちゃんと死ぬやつがいいかなあ、と調べて取り寄せてみたのですが、結局昔ながらのお話も単純な勧善懲悪でしかなくて、「性格が悪いから酷い目に遭う(ていうか死ぬ)」っていうのもなんだかな、と改めて読んでみると思ったり。
と、これも長くなるのでまた別に。ああ!書きたかった絵本の話がようやく書けて嬉しい!
つらつらと書くだけ書いてしまいましたが、あひるちゃんの絵本話でした。
日本昔ばなしの話と、あと絶版系希少絵本の話も書きたいです。
オマケ情報、定期購読について。
去年1年間、福音館書店の絵本定期購読をしたのですがとっても良かった!
福音館公式サイトの「月刊誌」のページには今は載っていないのですが、2016年版の「こどものともセレクション」というシリーズがこれまでの人気作品を集めたもので、すでにうちにあるものが1冊だけだったので申し込んだのでした。どうもこの「セレクション」は幼稚園や保育園を通さないと購入できないのかも…検索してもあまりはっきりとした情報を見つけられず。私は近所の保育園の一時預けを週一くらいで利用していたので、保育園でチラシを見つけて保育園を通して購読していました。
「セレクション」以外のふつうの「こどものとも」なら個人で定期購読することができます。
1冊420円と通常の半額近くだし、ソフトカバーで薄いので本棚でかさばらないし、解説が付いているのも楽しかったです!毎月季節の絵本が届くというのはなかなか素敵なものでした。
年間ラインナップも公式サイトから確認できますので(ページ下方、「月刊誌最新号」のそれぞれの絵本をクリックすると12冊一覧が見られます)、ぜひ見てみてください。
おう、何これ知らなかった。買う。

生きる (日本傑作絵本シリーズ)
谷川 俊太郎
福音館書店
2017-03-01



この作品は、東日本大震災直後の2011年に企画されました。これから息が詰まる毎日を過ごすことになるかもしれない読者の子どもたちに、長く寄り添うような一冊を「たくさんのふしぎ」で届けられないだろうか、と企画されたものでした。「生きているということ いま生きているということ……」とさまざまな人生の瞬間の情景を連ねる谷川俊太郎さんの詩『生きる』をテキストに、小学生のきょうだいと家族のある何気ない夏の一日を描いています。足元のアリをじっと見つめること、気ままに絵を描くこと、夕暮れの町で母と買い物をすること……。子どもたちが過ごす何気ない日常のなかにこそ、生きていることのすべてがある、その事実がたちあがってくるような一冊にしようと本づくりをはじめました。谷川さんの「趣旨に賛成します。とにかく思い切りよく自由にやってください」ということばに力づけられて、2年をかけて完成しました。この間に画家の岡本よしろうさんと担当編集者の間でかわされたラフスケッチは、40冊をこえました。


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“昔の絵本が好き。1960年、70年あたりが黄金期にして全盛期なんじゃないかと思う” への2件の返信

  1. 福音館書店の定期購読は,とても良いですよね!子供たち二人ともお世話になりました。たんたんたんてい。なんど子供たちに読んだことだろう!
    っていうか私自身も幼稚園のときに定期購読しており,だるまちゃんとかみなりちゃん,じぷた,のろまなローラーなどなどなど,いろんな原本がまだ残っています。それも子供たちが読んでいました。

  2. マキパパさん
    原本が残ってますか!それを子供達が!素敵です~!
    うちもオット母が、オットが2歳の頃大好きで毎晩なんども読んでいた、という「ピー、うみへいく」を子供が1歳の誕生日の日に譲り受けて、しみじみ感涙してしまいました。
    そして、なんでもかんでもデータ化してちゃいけないかも、なんて思ったり…。
    30年40年前のものをそのまま手渡せる、ってすごいことですよね。デジタルの世界ではまず無理そう。

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