図書館奇譚 ~本当にあったスティーブン・キング

先日友人のすすめで、シャイニングを読みました。

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シャイニングは以前からこのblog上でネタにしてはいるのですがそれは映画版があまりにも笑顔のジャックニコルソンだって話であって、原作は学生の頃にざらっと読んだきりで、微妙に印象が薄かったんですよね。
でも友人が言うには、ホラーとしての側面よりも、人間描写がとても読ませると。

主人公の夫婦が、それぞれに問題を抱えつつ二人ともお互いを思いやっていて、破綻しそうな結婚生活を何とか修復しようと一生懸命で、それが結末の崩壊を知りながら読み進めているととてもかなしくて、と。
ほほう、と思って読んでみるとなるほど確かにその通りでした。とても面白かった。これは20歳そこそこの頃に読んでも印象に薄いはずだ、という大人の葛藤と苦悩が詳細に綴られていました。

と、そんな様子を友人が詳しく記事にまとめているではないですか。おお~そうそうまさしくこんなかんじ。

(ネタバレ無し)
yana’s つれづれ:映画と小説それぞれの「シャイニング」

で。
わたくしの語るべき本題はここからです。

こんなふうなキング話を友人とあれこれ咲かせていたら、封印していた15年くらい前のおぞましい記憶が突然蘇ったのです。

それは学生時代、オットくんと図書館に行った時のことです。

学生だったオットくんと私は、よく図書館で会っていました。初々しいですね。ほら学生の頃ってお金ないじゃないですか。なるべくお金を使わずに長時間過ごせる場所がほしいものじゃないですか。それが図書館だったんですね。あちこちの図書館をはしごしたりもしていたような。初々しいですね。甘酸っぺえですね。

そんな行動範囲の中のわりと大きめの図書館には、当時始まったばかりだった映画視聴コーナーなんかがあったりしましてね。音楽CDや映画のレーザーディスク、VHSのビデオテープなどをヘッドフォンで視聴できたのです。当時は今のように漫画喫茶なんかもなかったから、ビデオやCDを家でない場所で視聴というか試聴できるって、なかなか目新しいサービスでした。

それで、何か映画でも観てみようか、という話になり。
カウンターで、タイトルや製作年月日など文字だけが並んでいる、紙の目録を見せてもらって(この辺にも時代を感じますね)、役所にあるような大きなバインダーをめくりながら、どれにしようかと選んでいたらですね。

ふと、「スティーブン・キング一覧」というページが目につきまして。

スティーブン・キングって、『スタンド・バイ・ミー』の人だよね?



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じゃあこの中からどれか選べば、きっとあんなかんじの素敵なお話に違いない。
この、『IT(イット)』っていうのが上下巻らしいから、長くて見応えがありそうかも。

と、こしょこしょと相談しながら決めて、じゃあこの『IT(イット)』をお願いします、とカウンターの司書さんのお兄さんに告げたところ。

「本当にいいんですか」

と念を押されたのです。眼鏡で細身な、無表情な司書さんに。

えっ。は、はい、いいです。

司書「こちら上下巻なので、全部観ると4時間以上かかりますが、本当にいいんですか」

えっと…はい、いいです。(学生なのでお金はないけど時間はあります)

司書「途中で巻き戻すことはできないので、一度見始めたら最後まで観て頂くことになりますが、本当にいいんですか」

え…はい、まあ…。

司書「上下巻セットのものは、上巻だけ観て下巻は観ない、ということはできないので、一度見始めたら最後まで観て頂くことになりますが、本当にいいんですか」

そ、そんなに!?
なんでそんなに念を押すの!?
それに途中で巻き戻すとテープが傷むから出来ない、というのはまだわかるけど、上下巻に分かれてるなら別に上巻だけでやめてもいいんじゃないの!?どちらも厳密に同じ回数だけ再生して同じくらいの傷み加減に揃えないとだめなの!?

とかなり不安にはなったのですが、でもほら若いから。一度言い出しちゃったことを引っ込めるのが何だか恥ずかしいというか悪いような気がして。なんかこの不穏な空気こわくてますます断りにくいし。

それでつい、了承してしまったのです。

そうしたら、司書のお兄さんがごそごそとテープを探してきて、カウンターの上にパッケージを置いたのです。紙の目録には文字しか載っていなかったので、ここで初めて我々は、選んだ映画のイメージを目の当たりにすることになったのです。

それがこちら。



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なんかこれ絶対スタンドバイミーと違う!!

司書「こちらで本当によろしいんですね」

今にして思えばですね、司書さんは「おまえら絶対間違ってる」と思っていたに違いありません。今なら私たちにもわかります。スタンドバイミーしか知らずにスティーブンキングはみんなあんなかんじのノスタルジックでほっこり良い話だと思ったら全然間違ってる。むしろあれは異色だ。キングといえばホラーなんだ。いいから早くITを選んだことを撤回しろ。ともかく絶対デート向きじゃない。

と、司書さんは再三に渡り警告を発してくれていたんじゃないかと思うのです。
当時の我々にも、さすがにジャケットを観た瞬間「これは違う」とわかったのです。

が、それでも若さの引っ込み事案というか頑なさというか、ここまできても、とうとう「やっぱりやめます」とは言い出せず。
観ました。上下巻。4時間かけて。

あの、見始める前までの出来事はことほどさように克明に覚えているのですが、本編の印象は記憶に薄いです。ピエロがやなかんじだったなと。裏スタンドバイミーっていうか、最近でいうと裏あの花っていうか。子供の頃に友人たちと共有したものは輝かしい思い出ではなく恐ろしい悪夢で、それが大人になった今ふたたび甦り惨劇の幕が開く的な。
子供の頃の(わりと大人になった今でもたまに)「こうだったら嫌だな」という想像力のダークサイドがそのまんま映像化されているといいましょうか。確かそんな話だった気がする。夜中に洗面所で手を洗っていたら蛇口から血がほとばしり出てくるとか…。

まあでもとにかく、IT本編よりも、個人的には今こうして書いてきたような、それを観てしまう事態に陥るまでの前振りのほうがよっぽどインパクトがありました。まさしくスティーブンキング的不気味さと不穏さ。しかもまんまとそこから逃れられなかった我々。
そんなすべてが本編の内容以上の強烈な体験として脳裏に刻みつけられてしまい、あれから15年の歳月が流れた今も鮮明に思い出せるのです。

スティーブン・キングとITの思い出でございました。

ちなみに。
先ほどネタとしてでかでかと貼ったのはDVD版のパッケージでして。VHS版はもっとこう、ピエロが全面に押し出ていてB級感振り切れていたような記憶が。

あった!!これこれ!!

IT イット 2巻組【字幕】●監督:トミー・リー・ウォーレス//リチャード・トーマス  【中古】(ビデオ/VHS)[NC6-05[305-2777]【10P13Jul11】
IT イット 2巻組【字幕】●監督:トミー・リー・ウォーレス//リチャード・トーマス  【中古】(ビデオ/VHS)[NC6-05[305-2777]【10P13Jul11】

この上下巻のジャケットをこう、並べて出されたのです。
こんなふうに。



305-2777-2

無理すぎる。
みなぎるB級臭。
なぜやめなかった。

こうなったら今度また見直してみたいですね。ほとんど忘れてるし。

友人によると、やはりシャイニング同様、ITも原作は怖いだけじゃなくとても引き込まれるらしいです。へえへえ。いやあシャイニング原作はほんと素晴らしかったな。ミザリーもそうだった。原作のほうが、特にラストシーンに明るい余韻があって好きでした。

しかしミザリーもシャイニングも、幻覚描写が流麗すぎて別の意味で怖いですスティーブン。見たことあんのか。なんというか活き活きしている指揮者のように淀みなくて。独壇場ってかんじで。



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ほんと出オチすぎるジャケット。

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2 Replies to “図書館奇譚 ~本当にあったスティーブン・キング”

  1. 映画と小説それぞれの「シャイニング」

    スティーブン・キング作の「シャイニング」。
    映画を最初にみて、
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    その後、小説を手に取りました。
    シャイニング〈上〉 (文春文庫)クチコミを見 …

  2. おおお…よりによってITですか…スティーブンキング好きですけどね。似たような経験あります。キングではないですが。私の場合タダ券で3つの中から選べるってやつで…よりによって選んだのがファイナルデスティネーションでした。まあ何だかんだ続きも見ました。

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