魔法使いの娘 5 (5) (WINGS COMICS) 那州 雪絵 新書館 2007-04-24 by G-Tools |
魔法使いの娘(那州雪絵)、最新5巻が先頃出ました。
帯の「那州雪絵最新作にして最高に面白い」はダテじゃないです。本当にその通りだ。
なぜこんなに面白いのか。
それはぶっちゃけわかりません。
説明するつもりじゃないのかよ!
いやすいません、説明するのが難しいんですものすごく、この人のマンガって。
うーんなんというか。。バランスが絶妙。
まず一面に、絵やストーリー運びは非常に安定しています。長く描いていることを良いほうに作用させた、危なげのない感じ。
20年近く前の、デビュー作にして一番の人気作『ここはグリーンウッド』の時からすでにそうでしたが、キャラクターの立てかた、絡ませかたが実に巧み。
なんというか無理なく、少しずつ人と人との距離が縮まっていく感じを、その人のために動いてしまう気持ちの流れを描き出すのに長けているというか。
それからもう一面、ここがしみじみすごいと思うのですが、絵の表現力が、繊細というか….新鮮さを失っていない。
まだ描き慣れていない作家さんだけが引くことのできる、ハッとするような線をこの人はいまだに出してくるのですよ。
これってすごいことだと思う。すっかり使いこなせているのかそれとも毎回偶然なのか、いずれにせよ才能だと思います。希有な。
ちょっと大げさな言葉を使いすぎたかもしれませんが、平たく言うとふとした表情がすごく良いのです。
この描き慣れた感と描き慣れていない感双方の良いところが見事に融合しているところが、絶妙だなあと思います。
またそれに関連してか、昔からこの人は説明の少ないマンガですね。
登場人物たちがそこで何を思ったのか、その表情が何を物語っているのか、文字では説明しないことが多いです。
なのでけっこう読み手の間で解釈が分かれたりする。そこもまた愉し。
心情だけでなく実際に何が起こったのか、という動向に関しても、絵だけで説明する描写が非常に多いので、ともすれば前後が繋がりにくいかも。
でもよく見るとちゃんと、必要な情報はコマの中にきっちり描かれているんですよ。
何ともミステリ小説の読み解きのような。
特に最近では、人物の心情や行動理由などを逐一セリフやモノローグで語りきってしまうマンガが多いような気がするので、そういう点でも今作の曖昧さは新鮮で貴重です。
自分なりに前後の文脈や話の流れから類推して、パズルのピースがはまるようにその表情の意味をぴかっと掴めた瞬間などはなかなか快感です。
さてそんなハード面(?)に対して、ソフト面であるところのストーリー。
これが何ともいい感じになってきています。
ざっと説明すると、拝み屋というか陰陽師をやっているお父さんの世話をしながら暮らす主人公の女の子が、フツーの生活を夢見ながらも怪奇現象に巻き込まれまくって、彼女自身もそっち方面の才能があるもんだから意に反してうっかり事件を解決しちゃったりするという。
でも私は陰陽師なんかになりたくなーい!という。ドタバタなお話。
なのですが、そのドタバタの中にじわりじわりと、主人公の出生の秘密や、お父さんの陰陽師としての仕事の中で明らかにされていない部分など、深刻な影がひたひたと寄せてきている感じです。
パパの仕事なんか絶対継がないからね!とタンカを切っていた主人公が、自分のことやパパのことをもっと知りたい、と思うようになっていき、最初はなし崩し的にだったものが彼女の意志で少しずつ、そっち方面の能力を磨く方向に動き出している。
というかんじで。
単行本5冊かけてそういう変化がとても丁寧に綴られています。展開はやや遅いともいえますが、その遅さがいい!
そんな『魔法使いの娘』、次の新刊はああいつだろう。。待ち遠しいです。
最後に物語の登場人物たちを、表紙ごとにご紹介。
魔法使いの娘 (1) (Wings comics) 那州 雪絵 新書館 2003-09 by G-Tools |
主人公の初音(はつね)ちゃん。元気で威勢の良いしっかりもの。『フラワーデストロイヤー』の主人公に近いかも。
魔法使いの娘 (2) (Wings comics) 那州 雪絵 新書館 2004-12 by G-Tools |
“魔法使い”(陰陽師)お父さん。鈴の木無山(すずのきむざん)。「鈴木」に「の」を入れただけでこの非日常的かっこよさ。こういう目の付け所も那州っちのすごいとこと思う。
魔法使いの娘 (3) (Wings comics) 那州 雪絵 新書館 2005-10 by G-Tools |
お父さんの友人にして初音にとって唯一の庇護者・理解者、鈴の木無畏(むい)さん。ぜひトヨエツに(違)
魔法使いの娘 (4) (Wings comics) 那州 雪絵 新書館 2006-09-25 by G-Tools |
お父さんの弟子、兵吾くん。モテ男。初音にはキラわれています。いっつもビシバシ命令されてこき使われています。
あと付け加えるなら、まあ陰陽師モノなので怪談話的なコワイ描写とか、いやぁな不気味さとかが多いのですが、それが妙にうまい。。
霊感が強い人がタクシーに乗る時に、「すいませんここまで、こことここは通らないでお願いします」と運転手さんに地図を渡したり。
そんな細かいしかも妙にリアルなことがさらっと小さな1コマで描かれていたりする。
上で描いてきた「説明の少なさ」と「絵の繊細さ」が、ホラーを描くのにものすごく向いていると思います。すんごい怖い。
や、私特に恐がりだから余計に。耐性のある人にとってはそうでもないかもしれませんが。
那州さんは昔から「ものすごくリアルでとんでもなく怖い夢」を延々見続けてきたのだそうで(それをネタに短編を描いたほど)、その夢が役に立っているのかなあと思うとガクガクブルブルだったりします。
実は『魔法使いの娘』て全然興味なかったんですけど、、、
今日を境に読みたくなってしまいました(^_^;)
とりあえず近くのマン喫に行ってきます!
>たくあんさん
えへ、嬉しいお言葉ありがとうです。どうかしら、気に入って頂けるとよいのですが。
この人は短編もなかなか良いんですよね。短編だけでは本になってないけど、長編のあとについてる短編がいちいち良いのでお得感。
『魔法使いの娘』の単行本8巻が待てない人へ、7巻の続きは Wings ’09年2月号と5月号に
那州雪絵『魔法使いの娘』7巻が出たばかりですが、あまりに面白かったためもう8巻のことを考えています。
8巻の発売は2009年冬予定、つまりおそらくあと10ヶ月は後。そこで、もう雑誌で追いかけちゃおうかな。とか思う。タイトルの「単行本が待てない人」、それは私です。
…
今夜おすすめしたマンガ、されたマンガ
今夜、っていうのは飲みの席でってだけで極個人的なお話ですいません。
されたものの筆頭。
バクマン。 1 (1) (ジャンプコミックス)著者:大場 つぐみ販売元:集英社発売日:2009-01-05おすすめ度:クチコミを見る
バクマン。 2 (2) (ジャンプコミックス)著者:大場 ….
那州雪絵『魔法使いの娘』が連載終了するらしい
魔法使いの娘 (7) (WINGS COMICS)著者:那州 雪絵販売元:新書館発売日:2009-02-25おすすめ度:
おおおおう、確かにだいぶ盛り上がっていたから不思議ではないのですが、やはりさみしいなああ。
10/28発売のWings12月号に、『魔法使いの娘』最終回が掲載されるようです。….
魔法使いの娘 最終巻8巻を読んだ(微量ネタバレ)
水曜夜から引いている風邪が全然抜けずにふうふうしているところへ届いたのでわーい、おふとんの中で読みました。
魔法使いの娘 (8) (WINGS COMICS)著者:那州 雪絵販売元:新書館発売日:2010-02-25おすすめ度:
どきどきしながら最後まで読んで、
(以下、微量ネタバ….
那州雪絵さんの作品は、そうあひるさんが言われるように、面白さを説明するのが難しいんですよね!!!>< どの作品も私は大好きなのですが、わかってくれる人が近くに全くいないのであひるさんの記事を読んでちょっとテンションがあがってしまいました(@_@;)
> 坂下葉月さん
そうなんですよ!!!私もわかって頂けて嬉しいです!!
なんというか、絵にものすごく特徴がある、というわけではないかもしれないし(あの絵、表情、ほんと大っ好きですが)、ストーリーもストレートに泣けるとか笑えるとかいうのとは違う気がするし(超泣いたり爆笑したりしますが)、展開が壮大に大盛り上がりするかというとそれも…(超ハラハラドキドキしますが)。
せ、説明しにくいですよね!?こんなに好きだし面白いと思ってるのに!
那州雪絵『超嗅覚探偵NEZ』、新作がちょこちょこ雑誌に掲載されている
マジでか!
一冊で完結しちゃってるみたいだけど続きが読みたいなあと思っていたのですよ!
超嗅覚探偵NEZ (花とゆめCOMICSスペシャル) [コミック]著者:那州雪絵出版:白泉社(2012-03-19)
…