冥王星がなくなるわけではありません。

どのような名で呼ばれようとも、どのような分類をされようとも。
というわけで、一応元天文部としては落ち着いて取り上げておこうかと。
冥王星は惑星ではない、と正式に決定しましたね。

もともと天文学会では、「冥王星が惑星っておかしくね？」という扱いだったそうで、そのスジのかたがたにとっては今回の決議は至極当然のものらしいです。
というよりもむしろ、変に惑星として残す、とかいう決定にならなくて良かった、と一安心といった空気。
こちらの記事が、タイトルも素敵ですし決議の様子などが細かく記されています。
＊惑星から冥王星除外　科学が“政治”押し切る（毎日インタラクティブ）
へええへええ。冥王星ってアメリカ人が発見した唯一の惑星だったんだ。だからアメリカのかたは反対してたらしいですね。
でも結局、「最終的には純粋科学的に決めたいという天文学者が多かったということ。（記事より引用）」ということに。よかったよかった。
んーあと何だか、「知ってるヒトには当然のこと」と言われてみると、報道だけがやけに加熱しているかんじがしてきます。
いくつか並べてみますと。
＊太陽系惑星：冥王星を除外　賛成多数で最終案採択　ＩＡＵ（毎日インタラクティブ）
＊惑星数、一転８個へ　冥王星「格下げ」　ＩＡＵが修正案（朝日コム）
＊冥王星は格下げ・惑星は８個、国際天文学連合が採択（読売オンライン）
毎日以外は「惑星から”格下げ”」と、何だか悪い印象を与えるような言葉遣いなのが気になってきます。
あと面白かったのは、毎日が松本零士先生にご意見を伺ってます。
（以下、引用）
「アニメ「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道９９９」では、冥王星は敵の前線基地が置かれたり、人間の墓地として利用されるなど、太陽系の重要な惑星として描かれた。
原作者である漫画家の松本零士さん（６８）は「冥王星こそが太陽系の果てで、そこを離れることが太陽系から外宇宙に旅立つことだと描いてきた。
今回の決定は、論理的には正しいのだろうが、多くの人が少年のころから抱いていた夢、心情的なものにも配慮してほしかった。心構えができていないうちに突然決まってしまった感じがする」と残念そう。
そのうえで「冥王星はこれからも太陽系の一族だ」と強調し、存在感が低下しないよう何らかの形で配慮してほしいと訴えている。」
なんかやけにウェットです。
なのに記事ではそのすぐ後に、
「観山正見・国立天文台長の話
他の八つの惑星とは形成過程が明らかに違う冥王星が惑星に入らなかったことは、適切な結果だ。
冥王星がなくなったわけではなく、残念に思う話ではない。
今回の議論の内容を国民の皆さんに正確に伝えていきたい。」
クールです。
また、まったく同じことをこちらでは占い師さんが。
「毎日新聞に占いを提供しているマーク・矢崎さんは「今回のことは、冥王星を惑星と呼ばないようにするだけのことで、冥王星が消えてなくなるわけではない。星占いとしては影響はない」と話している。（記事より引用）」
占い師と科学者が同じことを言っておられます。面白い！
朝日にもやはりクールな反応が。
「架空の第１０～１３番惑星が登場するＳＦアニメ映画「トップをねらえ！」を１０月に公開するガイナックスの神村靖宏さんは
「ＳＦはもともと虚構の世界。地球の学会が定義を変えたからといって、我々が勝手につくった１１番惑星がなくなるわけではない」。」（記事より引用）
同じSFに携わるかたでも、松本先生とはだいぶ反応が違いますね。
最後に余談ですが、知人の天文関係者のかたのご意見。
「”好きに呼ばせる”というのが、一番科学的。
いずれにせよ、このネタは真剣に議論するよりも、酒飲み話のレベルと思う方が科学的には健全です。」
だそうです。クールだ。
教科書業界のかたが一番お気の毒…（朝日コムへ）。
でもまあ別に、冥王星がなくなるわけじゃないというのは本当にその通りだし、既存のフィクションが何か損なわれるわけではまったくないと私も思います。ショックを受けてしまったかた、どうぞ気にしないでほしいですー。どっちだっていいではないですか。
宇宙戦艦ヤマト【劇場版】
デスラー総統の故郷、ガミラスとイスカンダルのように、今回冥王星の衛星カロンも惑星ということにして二重惑星にしようという案もあったそうです。

11人いる!（萩尾望都）
続編『東の地平 西の永遠（とわ）』の、王さまと四世（フォース）の故郷も二重惑星ですね。アリトスカ・レとアリトスカ・ラ。私にはこちらのほうが馴染み深い。
うう、四世…(；_；)