『ヨコハマ買い出し紀行』、とうとう最終巻です。
12年もの連載だったと聞いてびっくりですが、確かによく考えてみるともう10年以上の付き合い。
なぜこんなに、12年という歳月に驚いてしまうのでしょう。(ネタバレなし)
温暖化により海の水位が上がり、世界中の陸地がゆっくりと少しずつ、でも確実に海になってゆく。
おそらく現代よりももう何十年か後、この物語はそんな”人類の黄昏”、”夕凪の時間”を舞台に、そこで暮らす人々の日常を描いています。ほのぼのと、てろてろと。
こういうのんびりSFってまあまあよくありますよね。その中で『ヨコ買い』が飛び抜けている点。それはやはり、時間を止めていないというところに尽きると思います。
(以前書いた魅力的な「小学生マンガ」や、『赤毛のアン』のマリラの気持ちにとても近い。私ほんとこういうの好きなんですね)
10年と少し前、何かのきっかけでアフタヌーン本誌を読んだ時、フルカラーの短いマンガを見かけました。海でコーラの瓶を拾う話。拾ってきた若い女の子はコーラの瓶を見たことがない。「海の水の色ですね」と彼女が言って、それを受け取った老婦人は昔のことを知っている様子。(この話は2巻に収録されています)
その海の色が何ともいえない透明なみどりで、こんな短いエピソードの中にそこはかとなく漂う寂しさというか、切なさというか。
何となく気になって、コミックスを探して集め始めたのが『ヨコハマ買い出し紀行』との出会いでした。
『ヨコ買い』はカラーが本当に綺麗です。特にコミックスの裏表紙。
カラーページをそのまま収録してくれているのも素晴らしいですね。
読み始めた当時はまだ、この物語がここまで完成されたものになるとは予想できませんでした。
よくある時間の止まった箱庭の中で、ほのぼのと過ごす人々の毎日を描写して、人気があれば続くし、なければいつでも最終回でオッケー。そういうマンガだろうな、と思っていました。
それが違った。
物語の中で、時間は流れ続けるのです。
大人は普通に慣れた日常を送っていくのですが、近くに住んでいる子供たちが、ふと目を離した隙に成長している。自分の背を追い越している。仕事を見つけて、家を離れていく。
その眩しさ!
全14巻 12年間使って、様々な日常の一コマ一コマを寄せ集めて、その切なさを丁寧に、丁寧に浮かび上がらせた。そういう物語なんだと思います。
そうですね….。
昔の人の暮らした遺跡が埋まっていて、小さな筆で少しずつ砂を払っていくような。そんな作業とその行程、手元に集中していた目線をふと上げた時そこにあるもの。
を、思い浮かべて頂けると近いかと。
ああ、もうそんなに経つんだなあ。
目の前の未来の遺跡に、驚いてしまうのです。
芦奈野ひとし『カブのイサキ』1巻が出てる!
ぎゃあ!!買わないと!!
カブのイサキ 1 (1) (アフタヌーンKC)芦奈野 ひとし講談社 2008-10-23by G-Tools
やっと単行本化。うれしい。