過言ではないのです。
何しろ原作者新井英樹様のお墨付き!です。
トークショーつき先行上映会で、新井様がそう言ってたもの!
ほら!!
本物だよ!?
これについての詳細は後述するとして、まずは映画の感想をネタバレしないように書きます。
オットくんが教えてくれたこのイベント、仕事の都合をつけて早く帰宅してくれたオットくんにうちの子タロー@2歳を預けて行って参りました。ありがとうオットくんタローさん!
そんなふうに家事育児の時間をやりくりして超久しぶりに劇場で見る映画がこんな血しぶきと人が殴り倒される鈍い音ばっかり響き渡ってるバイオレンスもの。だって新井様がくるとあっては!
結果、劇場で観て本当に良かったです。まさかの!まるで『ザ・ワールド・イズ・マイン』が映画化されているかのような作品だったんだもの!
とりあえず『ワールドイズマイン』好きなら一も二もなく飛びついておくべし!こんな機会きっともうないよ!?太鼓判でストロングリコメンドです。
柳楽優弥好きにも控えめにおすすめです。ちょっと…シズってるから覚悟して…(血のりが…)かなり強烈な暴力描写がたびたび…いえ、ずーっと暴力描写ばっかりと言っても差し支えないかも…
でも柳楽優弥くんは恐ろしくも美しかったです。まさに鬼神。
物語中盤あたりから「うわあこれワールドイズマインだ…」と胸が震えるような興奮を覚えたのですが、上映後のトークショーで感想を求められた新井先生も「映画化不可能と言われた『トシモンマリア』だ、と思ってすごく嬉しかった」と。ほんとに!ほんとにほんとに。赤べこのように頷き続けてしまいました。
昨今はマンガの映画化が乱発されていて、その多くが原作をなぞるだけで映画にする意義が乏しかったり名作を半端に改変して残念な出来にしてしまっているというのに、『ザ・ワールド・イズ・マイン』と銘打たなくても、こんなにも『ザ・ワールド・イズ・マイン』を表現できるのか、新井作品に対するリスペクトをかくも雄弁に伝えられるものなのか、と感嘆しました。(いいなーいいなーそれにつけても寄生獣はどうしてあーなっちゃったかなーもーなー)
新井様も(あっすいませんうちでは普通の呼称なのです、漫画家の新井英樹さんに様づけ)トークで言ってらしたのですが、こんなに言い訳も理由もなしに暴力ばっかり描いていいんだ、とびっくりな内容でした。こんなん見たことない。
強いて説明のために既存の作品を挙げるなら、新井英樹の『ザ・ワールド・イズ・マイン』と、コーエン兄弟の『ファーゴ』を足して、西原理恵子の『ぼくんち』をかけあわせたみたいなことになってました、とでも言いましょうか…。愛媛の漁港だし。サイバラは高知ですね。「明日は誰かに殺されるか、誰かを殺すかするんだろう」っていうまんまそのまんまな。
サイバラが『人生一年生』の中で、東京では「ぼくんちのあれって…(生い立ちとか殺伐とした環境とか)フィクションですよね…?すごい想像力で…」的な反応しかされなかったのに対し大阪では「あれまんまうちの生い立ちですやん!」「近所でしょっちゅうありましたわー!」ってめっちゃ瞬時に理解された、みたいなことを書いてましたが、そうか…四国ってああなのか…恐ろしい土地やん…と思いました(映画に対する個人的な感想です)。
面白かった…と言っていいのか正直悩みどころです。もう一回見たいかって言われたらすいません二度は。二度は無理です。
っていうくらいエグかったです。
柳楽くん最初の方とか殴られて腫れぼったくてまともな顔してないし。最後の方の宮本くんみたいに。新井様も当時を振り返って「宮本がずっとまともな顔してない、今ならさすがに途中でどうにかする」と言うほどのあれのような。最近の特殊メイクすごい。すごく自然に不自然な腫れぼったさ。そして殴られたてだとあちこちから血が吹き出て超シズル感。いらない。そのシズル感いらない。
それでいてものすごくモンちゃんでした。キーチというよりモンちゃん。得体が知れなさすぎる。怖すぎる。セリフほとんどなし。目だけがギラギラしてる。ほんっとうにモンちゃんでした。監督さんがトークで「そもそも柳楽優弥くんの『誰も知らない』のメインビジュアルを見た時から『キーチだ!』と思って、ずっと一緒に仕事をしたいとオファーをしていた」とおっしゃってたくらいなので初めから新井作品ありきだったのですね。そんな柳楽くんが満を持してのモンちゃんです。この映画、柳楽優弥くんがいないと成り立たなかっただろうな、と思いました。他の誰にもできないと思う、この役。モンちゃんみたいな、粗野で不気味で得体の知れない怪物なのに、どこか哲学的ですらあって、どうしても抗えない強烈な魅力がある、そんな現実味のないキャラクター、それに説得力を持たせる圧倒的な存在感。柳楽優弥にしかできないな、と思いました。
菅田将暉くんもめっちゃトシでした。女ばっかり襲って小物っぽさ半端ない。小松菜奈さんも、こんなおっさんばっかり殴り合ってる『龍が如く』みたいな映画のせめてもの華としてキャスティングされたんだろうなと思っていたらとんでもない。大丈夫なのか!?それ女優イメージとか大丈夫なのか!?って心配になるほどのご活躍でした。まさしく新井ヒロイン。女の美しさはその生命力の強さと輝きだ。
柳楽くんの弟役も存在感あって印象深かったな、村上虹郎くん。って検索したら村上淳とUAの息子さんか!!そんなに大きくなったのか!!
音楽もすごく格好良かったです。なのでやはり劇場鑑賞して良かったと思いました。サントラ欲しい。
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で、上映終了後です。
劇場を出た裏路地のあたりで…
新井様に会っちゃったー!!サイン書いてもらっちゃったー!
きや~~~~!『なぎさにて』の渚ちゃんばりにジタバタしたい!!
こんなこともあろうかと持って行って良かった!さっサインください!と一番最近の新井様の新刊『なぎさにて』2巻を差し出したら新井様「あっいいんですけどペン持ってないんです。誰か…(きょろきょろ)」もちろん持ってきています!サインペンも一緒に持ってきていますとも!
持ってきて良かった!そしたらいあわせたカップルさんも私と同じ『なぎさにて』2巻を持ってらして「ペン貸してもらってもいいですか!?」もちろんですどうぞどうぞ!
順番にサインしてもらいました!
名前の最後の四角いとこなんですか…?と訊いたら先生「赤があったら赤で書くんだけど、こう(ハンコを押す仕草)銘みたいな」なるほど!
キーチ描いてください、とかモンちゃんの眉毛描いてください、とかいっそ柳楽くん描いてください!とか色々頼みたいのは山々でしたが、監督さんや皆さんと飲みに行く途中って感じでしたのでこれ以上お引き止めするのも憚られ、っていうか握手してもらって「宮本くんからずっと読んでます。今も『スキャッター』も『なぎさにて』も楽しみにしてます。今後もがんばってください!」と伝えられただけでも十分嬉しかったです!
そんな『ディストラクション・ベイビーズ』でした。
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関連リンク。
■「ディストラクション・ベイビーズ」向井秀徳と新井英樹も絶賛、共通項はほとばしり – 映画ナタリー
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柳楽のキャスティングは真利子が熱望したとのことで、その理由を「『誰も知らない』で柳楽優弥のビジュアルを初めて見たとき、新井先生の『キーチ!!』(の主人公・輝一)に似ているなと思ったんです。その頃からいつか柳楽優弥とやれたら、と思ってました」と明かした。
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新井は本作の感想を、「冒頭、泰良が街で喧嘩してのされて、路上をのたうち回るシーンでやけに体温が上がった。映画化不可能と言われている自分のマンガ(『ザ・ワールド・イズ・マイン』)の、トシ、モン、マリアがそのままそこにいるっていう感覚がしてうれしかった」と振り返る。
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また同じシーンについて、「のされてアスファルトの上を転がり回るっていう場面を、マンガでは何ページも描くわけにいかない。でも純粋に暴力が楽しくて、それでしか生きる喜びを感じられないっていう感情をあのシーンで表している。こんな表現が、動く絵面で音も含めてできるのがうらやましかった」と率直に述べた。
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確かに新井様、「音」を執拗に描きますよね。足音とか必ずと言っていいほど「パタパタパタ…」とか「ギシシッ」とかコマの中に描き文字入ってるし、頬や髪を手の甲で触る時なんか「スサ…」って音がするの。そういうとことても好きです。
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自身も新井のマンガに影響を受けているという向井は、「マンガと映画と音楽。それぞれまったく違うものだけど、要はほとばしりを感じるか感じないかだけ。表す側としてほとばしりたいとも思っているし、そういう意味で共感してる」と語る。
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ぼかして書いてありますが、このあと向井さん「ていうかちんぽだよ!」って言っちゃってました。チューハイ片手に。ていうか壇上の全員ビールとかチューハイとか片手でした。楽しそうで何よりです。あと「スキャッターだよ!」とも言ってらして、新井様の連載作品のひとつ『SCATTER スキャッター』読んでらっしゃるんですね、ていうかほんとにフツーにファンなんですね、と微笑ましかったです。向井秀徳さんって面白い方なんですね。ひょうひょうとしてっていうか。
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新井英樹関連あひる。こんなところが大好き。
■January 16, 2006 新井英樹と萌え
■March 10, 2006 ヒデサマのここがたまらん! ~新井英樹『キーチ!!』啓蒙オマケ
■November 28, 2007 ザ・ワールド・イズ・マイン、好きなキャラクター
新井様といえばいやがらせ。
■August 29, 2006 真説ザ・ワールド・イズ・マイン、amazonで表紙発表!
■September 01, 2006 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン、服用上の注意(ネタバレなし)
■February 12, 2009 靖子さんが泣いています(定本 宮本から君へ 2巻の話)
■February 20, 2009 新装版でなおいやがらせを忘れない新井英樹
お好きな方にはたまらない。
■November 28, 2007 ザ・ワールド・イズ・マインの回のBSマンガ夜話、無事放送終了
■キーチVS 5巻、担当編集さんに愛されている気がする最近の新井サマ
■July 19, 2012 新井英樹『キーチVS』、9巻で俄然盛り上がってきた
発禁が心配。
■October 09, 2007 新井英樹は『四月物語』がお好き
■October 09, 2007 新井英樹が有名になることへの危惧
■August 22, 2013 Dモーニングで新井英樹『宮本から君へ』復刻連載開始!!
これもすごく面白かったなあー。原作ものとは思えない新井節。