[シンエヴァネタバレ含む]NHKプロフェッショナル庵野秀明監督エヴァンゲリオン特集が面白かった、安野モヨコの存在感と夫婦愛について



あらっこれこれ!アマプラで見れるじゃないですか!へえへえ!
まず今年3月かな?に放送されたプロフェッショナルを見たんです。いきなりカントクくんが走り出すやつ。すごく面白かった、そして思った以上に安野モヨタンが妻として出ていて、しゃべっていて、夫であるカントクくんのことを語っていてびっくりした。なんとなくこれまで監督不行届や美人画報で読んできた内容とほぼ同じことを、もっと真面目な調子で詳しく語っていて、びっくりしました。

で、BS版の長い方、編集が違うバージョンも放送されたので、ようやく見たらまあ違う番組かってくらい、同じ素材に追加カットを加えつつ、違う雰囲気になっていてこれまた面白かったです。

この後シンエヴァ4作目?最終回?あれは何て呼べばいいの?えーと劇場最新版?のネタバレも含みますのでご注意ください。言いたいことはひとつ。みんな配偶者愛しすぎ。

はい。モヨたんが、すごく優しい声で。こんな声のカミさんほしい!と思いました。佇まいもふんわりと柔らかくて。なんてええ夫婦や。なんてええ夫婦なんだ。カントクくんがモヨのこと愛しすぎなのは知ってた。それも監督不行届DVDのあとがきで知った。愛しすぎ!!衝撃を受けるほど愛しすぎ。自分の人生を振り返って走馬灯を見てしまうほど、彼は妻のことを愛しすぎている人だとは知っていたのですが、妻からも愛されすぎている。いや、なんていうんだろう、愛されてる…いや愛されてはいるんだけれどもちろん、ラブラブチェリッシュというよりは(なにそれ)、的確に、適切に扱われている…というのでしょうか…。

モヨコさんが、「誰か面倒見てあげないとこの人死んじゃうな、と思ったんです」みたいなことを言うんですね。
だとか、ズッキーニの話。「知らないものに対する警戒心がすごく強い人で」という話の時に、(以下、私の記憶で書いているので正確な言葉遣いじゃないですが概ねこんな感じの内容→)

「たとえば(カントクは)ズッキーニを食べなかったんです、なので(ゆっくりとした柔らかな説明口調で)、これはきゅうりとかぼちゃのあいのこみたいなもので、カントクくんきゅうりは食べられるよね、かぼちゃも大丈夫だよね、だから…(言葉を探して)怖くないよ?みたいなかんじで」と。

これは…離乳食の話かな!?ばぶう!!しかもだいぶん忍耐強い離乳食の話かな!!
私にはできませんでした!こんなに優しく柔らかく、勧めてあげられなかったよね!うちの子に。オットにも。
なンで食べないのよォ〜〜〜ッッッ!!???って小池一夫みたいになっちゃうか、ハイ食べませんでしたーとさっと諦めて機会を損失しっぱなしにさせる。どっちかでした。てかどっちかです。今も絶賛継続中。

こういうところに、モヨの愛を感じたのです。愛…というか(なぜ「愛」じゃない何かにしようとするのか。愛ではだめなのか?)いやだめじゃないねんけども。カッコから出てきたカッコの人が。カッコの人って誰。

簡単すぎて。「愛」なんて言っちゃうのが簡単すぎて申し訳なくて。もっとこう、そんなものじゃなく(だから「愛」をそんなもの扱い)、試行錯誤とか、相手の言動の裏を、真意を読む、洞察とか、そういうものがすごい勢いで働いている結果としての、すごくたくさんの似たような場面と、いろんなガッカリやら衝撃やらをくぐり抜けた上でたどりついた末の、「ズッキーニは怖くないよ?」だと思ったのです。すっかり島本須美さんの声です。ね?怯えていただけなんだよね?フフ?って。駿さま、この子私にくださいな、ってくるくる回るモヨ。とっくに指はかじられていたわけです。

その、モヨの忍耐強さが、愛なのかなって。だって私は指かじられてイッテエなにすんだこのやろう!!って怒ってしまうもの。あ、指かじられてはナウシカの話ですよ?お分かりかと思いますが冒頭でテトに最初に会った時のね、怯えて牙を剥くキツネリスに指をかじられても動じず、相手が落ち着くのを待ってあげるナウシカ。それがモヨかなって。私はイッテエなにすんだ系です。

あるいは、イッテエなにすんだって怒ったらますます相手が萎縮するので、もういいやじゃあこないならこないで、とテト放置。それが私。私の肩にテトはいない。モヨはそこで、カントクくんのズッキーニへの警戒心を取り去ってあげようと腐心しているじゃないですか。それがすごいと思ったの。私は別にいんじゃない食べないならそれで。いい大人だし(対オット)、あるいは大人になったら美味しいと思うんじゃない?(対子供)ってかんじで。もう努力がめんどう。努力が報われないことに疲れた。疲れて相手に当たってしまう自分もやめたい。だから投げている。それは愛じゃない気がする。というかこれが私の愛。「努力が報われないことに勝手に疲れて当たってしまって相手を傷つけないようにする」愛。キャパが狭い。ハードルが低い。やらないでいいことをやらないでいるだけのことに多大なる労力を要する燃費の悪いわたくしなりの愛。基準が自分なんですよね。相手を見てないの。

だから、カントクくんのあとがきを見ても「こんなに誰かを愛したことない」と衝撃を受けたんだと思う。カントクくんもすごく相手や事物を観察する人じゃないですか。クリエイターってそういうものかもしらんけど。いやそうでもないか。カントクくんがきっとそういうタイプのクリエイターなんでしょうね。モヨもおそらくそうで、そんな2人が奇跡的に合致して、今の2人の生活と、今の2人のそれぞれの創作物があるんだろうなあと。

そもそもシンエヴァラストもゲンドウが。ゲンドウもユイを愛しすぎ。まああれも私タイプだな(偉そう)。自分しか見てねえでやんの。だからああいうことになっちゃうんだって。まあでも好きだったんだねゲンドウはゲンドウなりに、あれが彼の精一杯の愛し方、愛することの表現だったんやね、わかるで(肩ぽん)(ゲンドウにそんなに共感すんなよ)。
あんなにもゲンドウの内面をゲンドウ自らに語らせると思ってなかったですよね。今回のBS版でもなんと立木文彦さんとカントクくんが語り合っていましたが、息子に弱い弱い言ってたけど自分が一番弱いじゃないか、と。ゲンドウのそういうところを今回一番見せたかったのです、とカントクくんも。

カントクくん、今回の番組でもスタッフに気を遣いすぎ…いや気を遣ってるつもりはないんだろうな、面白い画を撮れるように、ついつい言っちゃうんだろうな的確な助言を。だって密着ドキュメンタリー撮られてる側の人がこんなにもカメラワークとか素材撮りとかのこと気にするって。さすがすぎる。しかも途中でドキュメンタリーとして軸がぶれている的な、製作への口出しまで。それも「これを見て映画面白そうって思ってもらえないと困るから」という非常に商業的な理由、というのがまた面白かったです。プロ!カントクくんはプロの監督さんだ。

片足を無くされたお父様の話も、興味深かった。そんなことまで話して公開する、というのも、「映画面白そう、と思ってもらうため」なのかもしれませんし、それだけ全精力を注ぎ込んでいるということかなと。これまであまりつまびらかにしてこなかった極個人的な人生のエッセンスを公にしてしまうほど。

「欠けている父親を肯定したかったのかもしれない」という言葉が印象的でした。親を肯定したいんだ。他人のミスで足を失って(少なくとも監督はそのように聞かされてきたらしい)世の中を憎み、それを息子である監督にもぶつけることがあった、という父親から自分が肯定されたい、のではなく、そういう父親を自分が肯定したいのか、と。

これも、視点が親側、保護者側になってしまっているような。安野モヨコさんがまるで気難しい乳幼児への離乳食のように繊細な対応を庵野監督にしてあげているのと少し重なる気がします。2人とも優しく、与える心に溢れた人たちなんじゃないだろうか。サービス精神というか。あるいは生育歴としてそのような特性を獲得せざるを得ない状況に置かれていたということだったのかもしれない。モヨコさんもかなり若い頃から家族を経済的に支える役割を負わされて大層過酷な思いをしてきたらしい、というのもカントクくんのインタビューから知り、過去の自伝的作品『黄泉夜間(よみよま)』を読んで唸らされました(画集『ANNORMAL』に全編収録されています)。ひどい。なんて状況だ。団地作品を完結させられなかったのも無理もないと納得しました。団地ね…私も団地で育って良い思い出あんまりないので、あの閉塞感にはすごく共感します。悪い思い出ばかりじゃないんですけどね。だからこそきつい。

シンエヴァ、オットと観に行って第一声が「終わったな」「終わってたねえ!」でした。ちゃんと終わってた。面白かったです。最後の最後、14歳から時が進んで少し大人になったシンジくんの声はやっぱり神木隆之介くんか!少年みを残した青年といえば神木くん!誰もが納得のキャスティングでしたよね。

宇多田ヒカルさんの歌もムービーも素敵だった。カントクくんが編集したり、一部はヒッキーの幼い息子さん!がiPhoneで撮影したりとか。

宇多田ヒカル『One Last Kiss』

いやあ、それにしても本当にカントクくん、庵野監督エヴァ完結おつかれさまでした。面白かったです、ありがとうございました。
それから安野モヨコたんは『オチビサン』完結おつかれさまでした!っていう話もまた書きたい!

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以下、関連あひると関連話。

序だけじゃなく、破もQもリアルタイムに劇場で観たんですけどね、なかなか感想を落ち着いて書けずじまいで。
2007-09-10 ヱヴァンゲリヲン新劇場版にフラグが刺さりまくって(観る前の感想)

2007-10-09 エヴァじょ、みたよ。【リンク追記】

2007-09-10 エヴァンゲリオンTVシリーズのことを私なりに書いてみる

2009-07-11 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破、みたよ

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ヤシマ作戦。
2011-03-12 東京、停電に備えて飲み物を保温しておく【その後、停電無事回避】

2011年、311のあの頃、直接被災はしていなくても個人的には本当に重圧に押し潰されそうだったので、ネット越しにみんなでヤシマ作戦だ!と盛り上がれて励まし合えたことには本当に救われました。カントクくんがモヨの漫画を読んで、読み終わったあと読者が元気になって現実に向き合えるようになる、そこが自分の作品にはなかった素晴らしい部分だ、みたいなことを語っておられましたが、ヤシマ作戦にはこの時確かに元気をもらえました。

新エヴァシリーズは、間に東日本大震災と新型コロナウィルスを挟んでいるのですね。そもそも最初のTVシリーズが1995年10月スタートという、阪神淡路大震災とオウム真理教の地下鉄サリン事件の年というのも今回改めて気づきました。

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2013-06-09 庵野秀明「できっこないよ!こんなの演れるわけないよ!!」その他ジブリ話あれこれ

2017-07-29 安野モヨコ描き下ろし、庵野秀明とカラー10年の歩みを描いた「おおきなカブ(株)」

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2016-08-19 『シン・ゴジラ』安野モヨコと庵野秀明監督クン(ネタバレあり)、モヨコ休業を語る

2016-08-29 監督不行届DVD、庵野秀明監督の安野モヨコへの愛が凄すぎて走馬灯見えた


2019-06-25 イクニ監督『さらざんまい』最終回、山田玲司考察やネットの感想まとめ

217. アニメ好き名無しさん 2019年06月22日 10:29 ID:X8NzeWgD0
>>173
そういやエヴァの庵野監督と仲良いよね?
Qは映画前作とのギャップヤバすぎて監督の精神大丈夫かと思ったが、シン・ゴジラはまだまだ課題は山盛りだけど、みんな全力で協力して爽快なハッピーエンドをもぎ取ったラストだったな。
視聴後の余韻はさらざんまいと近いかも。

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223. アニメ好き名無しさん 2019年06月22日 13:40 ID:ZbbUUCou0
>>217
カヲルくんのモデルは幾原監督だし
同業者としてお互いリスペクトはあるよね
またトークショーしてほしい

カヲルくんのモデルは幾原監督!?
そういえばサネトシ先生とカヲルくんて似てるわ!?
ていうかピングドラムの10周年企画も気になってますよ!?

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
緒方恵美/宮村優子/坂本真綾/立木文彦
2007-09-01





『黄泉夜間(よみよま)』など収録の画集はこちら。

安野モヨコ ANNORMAL (コミックス単行本)
安野 モヨコ
小学館
2020-05-07



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