獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫) [文庫]
著者:上橋 菜穂子
出版: 講談社
(2009-08-12)
他になんかないのかと。
いやありますよもちろん!もう最後のほうは涙でかすんで読めない状態に。家で読んでて良かった。
あまり書いてこなかったのですが実はここ数年で『守り人』シリーズにどハマりしておりまして。寝る間も惜しんで夢中になって貪り読んで参りました。そしたら友人が「守り人もすごく好きだけど私、獣の奏者の方がもっと好き!」なんてのたまうではありませんか。なんですとー。読まいでかー。
いや素ん晴らしかったです。相変わらずバリバリのファンタジーで、闘蛇とか王獣とか特滋水とかカザルムとかアフォン・ノアとかファコとか耳慣れない専門用語がわんさか出てくるのにぐいぐい読まされる。守り人もそうでしたが、これも政治とか国家とか戦争とかの壮大な物語で、複雑で難しい展開がどんどん続くのですがすいすい読まされる。面白すぎました。
そして守り人シリーズの時から思っていたのですが獣の奏者で確信しました。
上橋先生エロい!(*゚Д゚*)
いや先生がエロいわけではなく、描写が。直接的ではなく、間接的に、登場人物の二人がそういう関係であるということをふっと匂わせるそこらへんがもう絶妙にエロい。
例えばですね、ネタバレしない程度に申しますと。
(以下、上橋菜穂子のどこがエロいのか興味がない人はそっとブラウザを閉じてください)
(あ、あとすいません途中から真面目な語りになっちゃうのでびっとブラウザを閉じてください)
主人公の女の子エリンちゃんがですね、子供の頃、流行歌の「鳴くな夜明けの鳥よ そなたの昨夜の声を思い出すから」なんていうフレーズを口ずさんで、養い親であるジョウンおじさんにお前意味わかってるのか?と笑われてキョトンとする、なんていう場面をデスね(待て、もうちょっと理性を保て)、大人になってから久しぶりにこの曲を聴いた時に、とある夜明けの思い出とふと結びつけちゃったりしてるんですよ。「そのときの熱い肌の重みと、匂いも…」ってキャーー!!キャーーー!!どどどどどんな声で!?彼はどんな声で!!??(落ち着け)
はあはあ。
えー、ことほどさようにですね。他にもこんな感じのシーンがちらちらとあってですね。
汗かきながら前のめりな私が残念なだけで(どうもすみません)、描写はあくまでも直接的ではなく、けれどもかなり具体的で肉感的、かつ上品で(あひるちゃんにはできない芸当だな)とても美しい情景が浮かんでくるのですよ。
あ、あれかもしれない、よしながふみのBLみたいに、そうやって肉体的に性的に二人が惹かれ合うことがとても自然なこととして、そこに迷いや葛藤や、高揚や安らぎがある、そういうことが当たり前の人の(生き物の)営みとして大きくうねる物語の中にふっと挟み込まれるんですね。そこがいい。
そんなナチュラル時々エロスな描写がですね、この素朴で真面目なエリンさんともう一人の寡黙ですてきすぎる男性との間や(もうだめ彼好きすぎる。どストライク)、守り人シリーズではバルサとタンダの間にちょいちょい語られるのです。何ともこう、セクシャルなこと、性的なものを隠さない、でも変に注視してこねくりまわすこともしない、自然にすいっと書く、そうすることで、二人の関係性がより緊密で親密なものだと読者に伝わる、なんかちょっとドキドキする高鳴りとともに…(お前は汗をふけ)
っていうところが!
っていうところも!(言い直した)
上橋作品の素晴らしいことであるなあと。
や、あのー真面目に語るとですね、こういう作品が児童文学として広く世に知られているというのも、とても素晴らしいことだと思うのです。女の子ってともすれば性的なものから必要以上に遠ざけられがち、不必要なまでの嫌悪感や罪悪感を植え付けられがちなところがあるし。自分の思春期の頃を考えてもそこにとても深く悩んで傷ついてきたので、ああした心身の性的な動きがこんなふうにごく当たり前かつ温かいこととして物語の中で描写されていたら、きっと大人になることに必要以上に怯えず、もうちょっと楽しみに待てたんじゃないかと。
『獣の奏者』では、それは自然な営みで、人を好きになり、結ばれて子供を授かるということには根源的な幸せと喜びがあって、それを不自然に歪めて奪う権利など誰にもない、人も獣も野にあるように、思うように生きてほしい、と繰り返し語られます。そこを中心に物語が展開していき、様々な出来事や思惑が複雑に交錯していき大きく渦を描いていくさまは圧巻でした。さらに主人公たちは、自由や権利を手にすることを謳うだけでなく、それに伴う責任からも目を逸らさず、背負い果たすことを自ら選択していきます。それも曇りない確信を持ってではなく、その重圧に苦しみ、迷いながらも。
先述の獣の奏者を薦めてくれた友人も言っていて、自分で読んでみても本当にその通りだなと思ったのですが、この物語の中では時に読み進めるのがつらいほど残酷なことが起こります。人生には、どんなに願っても備えても、自分の力ではどうにもならないことが起こってしまう、そうなってほしくない方へなってほしくない方へ物事が運び、抗いようもなく押し流されていってしまう、そういうことが確かにある。けれど、その起きてしまった、与えられた運命の中で、どう動くか、限られた選択肢の中で何を守り、何を捨てるのか、そこに登場人物たちの気高さ、強さ、恐怖や葛藤とそれを乗り越える覚悟、が苛酷に鮮烈に描かれていて、本当に引き込まれました。そんな深く素朴な優しさと力強さは守り人シリーズとも共通しますが、こちらの方が短い分だけ確かに凝縮されているのかもしれません。
ランドリオールの時も思ったけれど、こういう物語に出会うことで、子供の頃の不安や痛さが少しずつ治癒されるのと同時に、大人になった今だからこそより勇気づけられる部分もあって、居住まいを正したい気持ちになるのです。
…下品なだけのつもりだったのになんだか真面目な語りになってしまってすいません。温度差すごいな。いや下品な話もですね、私なりにエロは世界とか救うんじゃないかとわりと本気で思うところもあり、こんなここ3日くらいポストも見に行ってない穴熊のような生活をしている自分にとってそれはほとんど唯一の社会貢献と言えるのではないかと自負しており(負うな)、下品なだけに見えていつもそんな思いが心の中の2%くらいを占めており(少な)。
えー、上橋菜穂子作品はすごいです、というお話でした。
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そうだ。エサル先生なんというマリラ。ジョウンおじさんマシュウ。
■April 05, 2006 春、赤毛のアン 第三章~アン・プライド編
アニメ化されたのは2巻まで、「闘蛇編」「王獣編」までです。
獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫) [文庫]
著者:上橋 菜穂子
出版: 講談社
(2009-08-12)
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著者:上橋 菜穂子
出版: 講談社
(2009-08-12)
後書きで書かれていましたが、アニメ化に際しスタッフさんたちともう一度1,2巻を読み込んでいく中で、この3,4巻の構想が浮かんだのだとか。
獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) [文庫]
著者:上橋 菜穂子
出版: 講談社
(2012-08-10)
獣の奏者 4完結編 (講談社文庫) [文庫]
著者:上橋 菜穂子
出版: 講談社
(2012-08-10)
ぎゃっ二人の同棲新婚時代!読みたい!でもKindle版がまだない!
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著者:上橋 菜穂子
出版: 講談社
(2010-09-04)
Kindle版で読みました。あれっ私が買った時は1,2巻だけハードカバーの表紙だった(値段は文庫価格)。今お試し無料ダウンロードしてみたらやっぱりハードカバー版の表紙が落ちてきた。どういうことなの。
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出版: 講談社
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著者:上橋菜穂子
出版: 講談社
(2006-11-21)
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著者:上橋菜穂子
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著者:上橋菜穂子
出版: 講談社
(2012-08-10)
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これも面白かった。考えさせられました。
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(2010-09-08)
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おお!まだほんとにイメージだけですが、動画が公開されています!
■精霊の守り人|NHK放送90年 大河ファンタジー
今回も日月さんのブログで知りました。
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